「おはよう」に隠された、すごい魔法の力
朝、学校のげた箱についたとき。教室のドアをガラガラとあけたとき。あなたは、となりにいるお友だちに、どんなふうにあいさつをしていますか?
「おはよう」
うん、とってもすてきなあいさつですね。元気にあいさつができるだけで、100点満点です。でも、もしもその「おはよう」のあとに、たった一言プラスするだけで、クラスのみんなから「あの人と話すと、なんだか心がポカポカするな」「もっといっしょにいたいな」と思われる「感じがいい人」になれるとしたら……やってみたいと思いませんか?
その魔法の言葉とは、ずばり、「相手の名前」です。
「おはよう、かけるくん!」
「おはよう、さくらちゃん!」
このように、あいさつのあとに相手の名前を呼ぶ。たったこれだけのことで、あなたとお友だちのあいだにある空気は、一瞬で温かいものに変わります。今回は、なぜ名前を呼ぶだけでそんなに仲良くなれるのか、その秘密を、言葉の不思議な力を研究する学問といっしょに、やさしく解き明かしていきましょう!
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どうして名前を呼ぶと、うれしくなるの?
言葉のルールや、人と人が言葉を使ってどうやって仲良くなっていくかを研究する学問に、「語用論(ごようろん)」や「社会言語学(しゃかいげんごがく)」というものがあります。ちょっと難しい名前に聞こえるかもしれませんが、内容はとってもワクワクするものです。
この学問では、「言葉は、ただの情報を伝えるための道具ではない。人と人をつなぐ、心の接着剤(せっちゃくざい)である」と考えます。
たとえば、あなたが朝、お友だちに「おはよう」と言ったとします。このとき、伝わっている情報は「朝ですね」ということだけでしょうか? いいえ、違いますよね。そこには「今日もよろしくね」「元気に学校に来られてよかったね」という、たくさんの温かい気持ちが含まれています。
そして、ここに「〇〇ちゃん」「〇〇くん」と名前をつけると、言葉のエネルギーが何倍にもふくらむのです。なぜなら、名前を呼ぶということは、相手に対してこのようなメッセージを送ることになるからです。
「私は、たくさんの人がいる教室の中で、他のだれでもない『あなた』に話しかけているんだよ」
人間はだれしも、「自分のことを一人の大切な人として見てほしい」という気持ちを持っています。名前を呼ばれたお友だちは、頭の中で「あ、この人は私をちゃんと見てくれているんだな」と、無意識のうちに感じとります。これが、名前を呼ばれたときに、胸の奥がじんわりと温かくなる理由なのです。
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言葉の「裏メニュー」を読み解こう
レストランのメニューにはのっていないけれど、実は用意されている特別な料理のことを「裏メニュー」と言ったりしますよね。実は、私たちが使う言葉にも、この「裏メニュー」のようなものが存在します。
言葉の学問(語用論)では、言葉の「表の意味」と「裏の意味」を分けて考えます。
- 表の意味(言葉通りの意味):「おはよう」=「朝のあいさつ」
- 裏の意味(伝わるメッセージ):「おはよう、〇〇さん」=「朝、あなたに会えてうれしいよ。今日も仲良くしようね」
ただ「おはよう」とだけ言うと、それはクラス全体に向けた、少し遠いあいさつに聞こえてしまうことがあります。でも、名前をつけることで、そのあいさつは「あなただけのためにラッピングされた、特別なプレゼント」に変身するのです。プレゼントをもらって、うれしくない人はいませんよね。
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クラスで大人気になる!名前つきあいさつの「3つのステップ」
それでは、明日からすぐに使える、名前つきあいさつの具体的なやり方を紹介します。ただ名前を呼ぶだけでも効果はありますが、この3つのステップを意識すると、魔法の力はさらに強力になりますよ!
ステップ1:相手の顔(目)をしっかりと見る
下駄箱でうつむいたまま、あるいは自分のランドセルを整理しながら「おはよう、〇〇くん」と言っても、魔法の力は半分になってしまいます。名前を呼ぶときは、まず相手の顔をしっかり見ましょう。目が合ったら、それが魔法をかける合図です。
ステップ2:名前を「先」に呼ぶか、「あと」に呼ぶか選ぶ
名前を呼ぶタイミングには、2つのパターンがあります。どちらを使っても大じょうぶですが、少しだけ雰囲気が変わります。
- パターンA(名前が先):『〇〇くん、おはよう!』
相手が少し遠くにいるときや、こちらに気づいていないときにおすすめです。名前を先に呼ぶことで、相手が「おや?」とこちらを振り向いてくれます。 - パターンB(名前があと):『おはよう、〇〇ちゃん!』
すれ違うときや、席がとなりの人と目が合ったときなど、すでに距離が近いときにおすすめです。とても自然で、優しい印象を与えることができます。
ステップ3:笑顔を「トッピング」する
最後の仕上げは、あなたの笑顔です。名前を呼びながら、口角(こうかく)を少しだけ上げて、にこっと微笑んでみてください。これだけで、相手の心の中にある「あなたに対する安心感」が、一気にマックスになります。
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こんなときどうする?学校生活のシチュエーション別・魔法の使い方
朝のあいさつ以外でも、この「名前を呼ぶ魔法」は、学校生活のいろいろな場面で大活躍します。具体的な例を見てみましょう。
① 係の仕事や、プリントを配るとき
配り係のとき、だまってプリントを机の上に置くよりも、こう言ってみてください。
「はい、これ、つむぎちゃんの分ね」
これだけで、ただのプリント配りが、楽しいおしゃべりのきっかけに変わります。つむぎちゃんも、きっと「ありがとう!」と笑顔で受け取ってくれるはずです。
② 授業で「ペアワーク」をするとき
先生から「近くの人と2人で話し合ってください」と言われたとき。あまり話したことがないお友だちがとなりだと、少し緊張(きんちょう)してしまいますよね。そんなときこそ、魔法の出番です。
「よろしくね、りくとくん」
最初に名前を呼ぶだけで、お互いの緊張のバリアがすーっと溶けていきます。そのあとの話し合いも、びっくりするくらいスムーズに進むようになりますよ。
③ お手伝いをお願いするとき
「これ、運ぶの手伝って!」と言うよりも、名前を呼んでみましょう。
「ゆうとくん、これ運ぶの手伝ってくれる?」
名前を呼ばれると、人は「あ、自分が必要とされているんだな」と感じるため、「いいよ!」と気持ちよく手伝いたくなるのです。
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名前を呼ぶだけで、クラスの「空気」が変わっていく
社会言語学の研究では、「一人の言葉づかいが変わると、まわりの人の言葉づかいも、ドミノ倒しのように変わっていく」ということが分かっています。これを「言語的同調(げんごてきどうちょう)」と呼びます。
あなたが毎日、いろいろな人の名前を呼んであいさつをしていると、不思議なことが起こり始めます。名前を呼ばれたお友だちは、あなたに対して親しみを感じるようになり、今度はそのお友だちが、あなたの名前を呼んでくれるようになるのです。
「おはよう、ひなたさん!」
「あ、おはよう、れんくん!」
こんな会話がクラスのあちこちで聞こえるようになったら、どうでしょう。トゲトゲした空気はなくなり、クラス全体が、だれにとっても居心地(いごこち)のいい、温かい場所に変わっていきます。あなたが始める小さないっぽが、クラス全体の雰囲気をハッピーにするキセキを起こすのです。
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明日の朝、げた箱でやってみよう!
この魔法の素晴らしいところは、「今すぐ、だれにでもできて、お金が1円もかからない」ということです。必要なのは、あなたの少しの勇気だけ。
明日の朝、学校に着いたら、最初に出会うお友だちの顔を思い浮かべてみてください。そして、げた箱や教室でその姿を見つけたら、心の中で3、2、1とカウントダウンをして、こう呼びかけてみましょう。
「おはよう、〇〇さん!」
呼ばれたお友だちの目がキラリと輝き、パッと笑顔が咲く瞬間を、ぜひあなたの目で確かめてみてください。明日学校に行くのが、なんだかとても楽しみになってきませんか?