廊下ですれ違う時は道を半分空ける
やすみ時間、次の授業の準備のために走って教室に向かっている時や、図書室で借りた本を両手いっぱいに抱えて歩いている時、むかい側から友達や先生が歩いてきたら、あなたはどうしていますか?
「あ、誰か来たな」と思っても、そのまま真ん中を歩き続けたり、ぶつかるギリギリまでよけなかったりしていませんか? もしかしたら、「相手がよけてくれるだろう」と、うっかり思ってしまうこともあるかもしれませんね。
でも、ここに「クラスでダントツに感じがいい人」になれる、とっておきの魔法があります。それは、「廊下ですれ違う時は、自分のからだ半分だけ、道をすっと空ける」ということなんです。
「えっ、たったそれだけ?」と思うかもしれません。でも、この小さないい行動には、人の心とあたま(脳)をぐっと引き寄せる、すごい科学の秘密が隠されているのです。
心には「見えないバリア」がある(心理学のひみつ)
心理学の世界では、人間にはだれでも「パーソナルスペース」と呼ばれるものがあることがわかっています。これは、分かりやすく言うと「こころの見えないバリア(なわばり)」のことです。
あなたも、知らない人や、ちょっと苦手な人が急に顔の近くまでやってくると、「うわっ、ちかいな……」とドキドキしたり、いやな気持ちになったりしたことがありませんか? それは、あなたを守るための「見えないバリア」の中に、ほかの人が入ってきたからです。
このバリアは、だいたい自分の手を広げた分くらいの大きさで、だれでも持っています。そして、廊下ですれ違う時、相手が道をゆずってくれないと、このバリアの中に相手がズカズカと入ってくることになります。すると、人の心はこう感じてしまうのです。
- 「ぶつかりそうで怖いな」(不安な気持ち)
- 「自分のことしか考えていないのかな」(少しガッカリする気持ち)
- 「なんだかイライラするな」(嫌な気持ち)
たとえわざとじゃなくても、道を空けないだけで、相手の心に「いやな予感」をプレゼントしてしまうことになります。
反対に、あなたが遠くから相手に気づいて、すっと道を半分空けてあげるとどうでしょう? 相手の「見えないバリア」を大切にしてあげたことになるので、相手の心は「ほっ」と安心します。この「安心感」こそが、「あの人といると、なんだか心地いいな」「感じがいいな」と思われる一番の理由なのです。
あたま(脳)の中の「危険センサー」と「まねっこ細胞」(脳科学のひみつ)
脳科学の視点から見ても、道を空ける行動にはおもしろい仕組みがあります。人間のあたまの中には、危険をいち早く見つける「危険センサー(扁桃体:へんとうたい)」という部分があります。
廊下で相手がまっすぐ自分に向かって歩いてくると、この危険センサーが「アタッチ! ぶつかるかもしれないぞ! 警戒せよ!」と警報を鳴らします。すると、相手の脳はあなたに対して「警戒モード」になってしまいます。これが、人に悪印象を与えてしまう原因です。
しかし、あなたが道を半分空けると、相手の危険センサーは「あ、ぶつからないぞ。安全だ!」と判断して、警報を止めます。脳が安心すると、緊張がほぐれて、相手はリラックスできるのです。
さらに、脳には「まねっこ細胞(ミラーニューロン)」という、とっても不思議な細胞もあります。これは、「人の行動や気持ちを、自分の脳の中でも真似してしまう」という細胞です。
あなたが「どうぞ」という気持ちで優しく道を空けると、相手の脳の中にある「まねっこ細胞」がはたらきます。すると、相手も無意識に「ありがとう」「優しくしよう」というあたたかい気持ちになってしまうのです。
つまり、あなたが先に道を半分空けるだけで、相手の脳をリラックスさせ、相手の心まで優しく変えてしまうことができるのです! これこそが、本物の「魔法」だと思いませんか?
学校生活のこんな場面で使ってみよう!
この「道を半分空ける魔法」は、学校のいろいろな場面で大活躍します。具体的にどんな時に使えるか、いくつか例を見てみましょう。
① 給食当番で、重い食缶やバケツを運んでいる時
給食の時間は、みんなお腹がすいていて、少し急いでいます。大きなお鍋や牛乳の箱、スープのバケツを持っている友達と廊下ですれ違う時は、大チャンスです。
重いものを持っている人は、急に立ち止まったり、曲がったりするのがとても大変です。あなたがサッと壁側に寄って道を半分空けてあげると、相手はぶつかる心配をせずにスーッと通ることができます。すれ違いざまに「ありがとう!」と言われることも増えますよ。
② 新聞係や図書係で、プリントや本をたくさん持っている時
係活動で、クラス全員分のプリントや重い本を抱えて歩いている友達がいたら、すっと道をゆずりましょう。「重そうだな」と気づいて道を空けてくれるあなたの姿を見て、周りの友達や先生は「〇〇さんは、よく周りが見えている親切な人だな」と感動します。
③ 休み時間、友達とおしゃべりしながら廊下を歩く時
友達と楽しく話している時は、ついつい横に並んで廊下をふさいでしまいがちです。むかい側から誰かが歩いてきたら、「ごめんね」と言いながらサッと縦一列になって、廊下の半分をあけましょう。自分たちだけの世界に入り込まず、周りへの思いやりを見せることで、学年全体からも「あの子は大人だな」と一目置かれるようになります。
④ お家でのお手伝い(洗濯物やごはんの準備)
この魔法は、学校だけでなくお家でも使えます。狭い廊下やキッチンで、お父さんやお母さん、きょうだいとすれ違う時、すっとからだをよけて道を空けてみましょう。家族から「最近、なんだかしっかりしてきたね」「思いやりがあるね」と、きっとほめられるはずです。
明日からすぐできる! 3つの「ゆずりテクニック」
「よし、明日やってみよう!」と思ったあなたへ、もっと上手に道を空けるための3つのポイントを教えますね。
テクニック1:「3歩前」で見つけて、からだをななめにする
すれ違うギリギリでよけると、相手は「ぶつかる!」とドキッとしてしまいます。あたまの中の危険センサーを鳴らさないコツは、「相手とすれ違う3歩手前」で、あらかじめ壁側に寄っておくことです。そして、からだを少し斜めにすると、「あなたに道をゆずっていますよ」というサインが相手にはっきりと伝わります。
テクニック2:「どうぞ」の笑顔と、一瞬のアイコンタクト
道を空ける時に、下を向いたままだともったいないです! 道を空けながら、一瞬だけ相手の目を見て、ニッコリ微笑んでみましょう。言葉に出さなくても、「どうぞ!」という気持ちが伝わり、相手の脳の「まねっこ細胞」が働いて、相手もニッコリ笑顔になります。
テクニック3:狭い場所では「立ち止まる」が最強のルール
階段や、掃除用具入れのまえなど、廊下が狭くなっている場所では、道を空けるだけでなく「ピタッと立ち止まる」のが一番安全で、最高に感じがいい行動です。あなたが止まってくれたら、相手は「ありがとう!」と安心して通り抜けることができます。
自分から譲る人は、クラスで一番強い人
もしかしたら、「いつも自分ばかり道をゆずっていたら、なんだか損している気がする……」と思う人がいるかもしれません。でも、決してそんなことはありません。
自分から道をゆずることができる人は、「周りがしっかり見えていて、自分の心にゆとりがある人」です。いばって廊下の真ん中を歩いている人よりも、ずっと大人で、心強い存在なのです。
あなたが今日から廊下の半分を空け始めると、周りの友達もあなたの真似をして、どんどん道をゆずるようになっていきます。すると、あなたのクラスや学年全体が、事故のない、笑顔あふれる安心な場所に変わっていくのです。
明日の朝、学校の玄関を通って廊下に一歩ふみ出したら、さっそく「道を半分空ける魔法」を使ってみてください。すれ違う友達や先生の表情が、パッと明るくなる瞬間を楽しみにしてくださいね!