「でも」「だって」が、友達とのあいだに「見えないカベ」を作っている?
学校の休み時間、こんな会話をしたことはありませんか?
「今日の昼休みは、みんなでドッジボールをしようよ!」
「でも、今日はグラウンドがすこしぬれているから、おにごっこのほうがよくない?」
あるいは、クラスの係活動のとき、こんなやり取りはどうでしょう。
「次の学級新聞、イラストをたくさん描いてカラフルにしようよ!」
「ちがうよ、イラストが多いと、文字を書くスペースがなくなっちゃうじゃん」
どうでしょうか。言った人に悪気(わるぎ)はまったくありませんよね。むしろ、「グラウンドがぬれていてあぶないから」「新聞を読みやすくするため」という、みんなのことを考えた、とても正しい意見です。
けれど、最初に「ドッジボールをしよう!」「イラストを描こう!」と提案(ていあん)した友達は、どんな気持ちになったでしょうか。ほんのすこしだけ、胸が「チクッ」としたり、「なんだか、自分の意見を否定(ひてい)されたな……」と、さびしい気持ちになったりしたかもしれません。
じつは、私たちの使う言葉には、「ただしい意味」とは別に、「相手の心に届くときの、目に見えないトーン」があります。どんなに正しい意見であっても、言葉の最初に「でも」「だって」「ちがうよ」という言葉がつくだけで、相手の心には「あなたの意見はダメです」というメッセージとして届いてしまうのです。これが、友達とのあいだにいつの間にかできてしまう「見えないカベ」の正体です。
言葉の「うら側」にある気持ち(語用論のやさしいルール)
ここで、すこしだけ「言葉の科学」のお話をしましょう。大学などで研究されている学問に、「語用論(ごようろん)」や「社会言語学(しゃかいげんごがく)」というものがあります。むずかしい名前に聞こえますが、中身はとってもワクワクするものです。
これは、「人は言葉を使って、どのように心を通わせているのだろう?」ということを研究する学問です。この研究によると、人間にはだれしも「自分の存在や意見を、そのまま認めてほしい!」という強い願いがあることがわかっています。これを専門用語で「ポジティブ・フェイス(認められたい心)」と呼びます。
友達があなたに「〜しようよ!」と話しかけてくるとき、友達はただアイデアを伝えているだけではありません。言葉のうら側で、「ねえ、私のアイデア、いいと思わない?」「僕の話を聞いて、受け止めてほしいな」という、大切な気持ちをあなたに送っているのです。
それなのに、いきなり「でも」「ちがうよ」と言ってしまうと、相手の「認められたい心」をペシャンコにつぶしてしまうことになります。これが何度もくり返されると、友達は「あの人と話していると、なんだかつまらないな」「いつも否定されるから、話しかけるのをやめよう」と思うようになってしまいます。悪気がないのに友達がはなれていってしまうのは、とても悲しいことですよね。
魔法の言葉「なるほどね!」で、みんなの心がひらく理由
では、どうすれば相手の心を傷つけずに、自分の意見を伝えることができるのでしょうか? その答えこそが、今回紹介する魔法の言葉、「なるほどね!」です。
先ほどのドッジボールの会話を、「なるほどね!」を使って言い換えてみましょう。
「今日の昼休みは、みんなでドッジボールをしようよ!」
「なるほどね! ドッジボール、すごく楽しそうだね。あ、でも、今日はグラウンドがすこしぬれているから、おにごっこのほうがすべらなくて安全かもしれないよ。どうかな?」
どうでしょうか。言っている内容は「おにごっこにしよう」という提案で、さっきとまったく同じです。それなのに、受ける印象がガラリと変わりませんか?
「なるほどね!」という5つの文字が入るだけで、会話がとてもあたたかく、やさしい雰囲気に包まれます。言われた友達も、「自分のドッジボールをしたいという気持ちを、まずは受け止めてもらえた!」と大満足します。そのあとに「グラウンドがぬれているから」という理由を聞けば、「そっか、じゃあ今日はおにごっこにしよう!」と、すんなり納得(なっとく)できるのです。
「なるほどね!」は、相手の意見に100パーセント賛成(さんせい)するときだけに使う言葉ではありません。「あなたの意見を、私はしっかりと受け止めたよ」「あなたの言いたいこと、よくわかるよ」という、心のクッションの役割を果たしてくれる言葉なのです。
学校生活で使える!「なるほどね!」の3ステップ実践法
この魔法の言葉を、明日から学校で自然に使うための「3つのステップ」を紹介します。この順番を意識するだけで、あなたの「感じのよさ」はクラスでナンバーワンになりますよ!
- ステップ1:相手の話を「最後まで」しっかり聞く
友達が話している途中で、「それはムリだよ」とさえぎりたくなっても、グッとがまんします。まずは相手が話し終わるまで、しっかり耳を傾けましょう。 - ステップ2:笑顔で「なるほどね!」と、うなずく
相手が話し終わったら、すぐに自分の意見を言うのではなく、一拍(いっぱく)おいて「なるほどね!」と言いながら、コクンとうなずきます。この「うなずき」があるだけで、言葉の説得力が何倍にもアップします。 - ステップ3:自分の意見を「〜という方法もあるよ」とつなげる
相手を受け止めたあとに、「こういう考え方もあるよね」「私はこう思うな」と、自分の意見をそっととなりに置くように伝えます。相手の意見を「おしのける」のではなく、「となりに並べる」イメージです。
この3ステップを使うと、不思議なことに、話し合いがケンカにならず、いつもおだやかに進むようになります。クラスの話し合いや、係の仕事の計画を立てるときに、ぜひ使ってみてください。
こんなときどうする?クラスの「あるある」言い換え大作戦
学校生活では、毎日いろいろな場面で意見がぶつかります。よくある3つのシチュエーションで、具体的な言い換えの練習をしてみましょう。頭の中で、友達の顔を思い浮かべながら読んでみてくださいね。
場面①:休み時間の遊びを決めるとき
友達が、あなたがやりたくない遊びを提案してきたとき、どう言えばいいでしょうか。
- これまでの言い方(バツ):
「えー、トランプ? だってトランプって、時間かかるし、なんか地味(じみ)じゃん。タブレットでゲームしようよ」 - これからの言い方(ハナマル):
「トランプか、なるほどね! みんなでじっくり遊べて楽しそうだね。あ、でも、次の授業の準備もあるから、短い時間ですぐできるタブレットのゲームにするのはどうかな?」
トランプというアイデアを一度「なるほどね!」で受け止めているため、友達は「地味」とバカにされたように感じず、気持ちよく次の提案に乗ることができます。
場面②:係の仕事のやり方で、意見が分かれたとき
配り係の仕事で、友達が「もっと早く配るために、後ろの席の人にプリントをまとめて渡して、後ろに回してもらおうよ」と言いました。でも、あなたは「それだと、プリントがくしゃくしゃになるかもしれない」と心配しています。
- これまでの言い方(バツ):
「ちがうよ、それだと後ろに回すときに破けたり、机から落ちたりして汚くなっちゃうからダメだよ」 - これからの言い方(ハナマル):
「なるほどね! 後ろに回してもらえば、たしかに早く配り終わるね! 素晴らしいアイデア! でも、急いで回すとプリントが折れちゃうかもしれないから、一列ずつていねいに渡していくのはどうかな?」
「素晴らしいアイデア!」と、相手の「早く配りたい」という前向きな気持ちをまずほめています。これなら、友達も「自分の工夫を認めてもらえた」と嬉しくなり、あなたの心配事にも耳を傾けてくれます。
場面③:友達がちょっと変わったアイデアを出したとき
図工の時間、友達が「画用紙に、本物の落ち葉をたくさん貼り付けて、森の絵を描くんだ!」と言いました。あなたは「のりで貼っても、すぐにはがれちゃうんじゃないかな」と思いました。
- これまでの言い方(バツ):
「でも、落ち葉ってのりじゃくっつかないよ。ボロボロ落ちてきて、教室が汚れちゃうよ」 - これからの言い方(ハナマル):
「落ち葉を貼るの? なるほどね! 本物の葉っぱを使ったら、すごくかっこいい絵になりそうだね! のりだと落ちちゃうかもしれないから、ボンドを使うか、テープでしっかり止める工夫をしたらいいかもね!」
友達の「落ち葉を貼りたい」というクリエイティブな気持ちを「なるほどね!」と受け止めた上で、どうすればそれが成功するかを一緒に考えています。これこそが、クラスで「この人と一緒にいると、ワクワクする!」と思われる人の話し方です。
「なるほどね」を使うと、あなたのまわりに人が集まる
社会言語学の研究では、「親切で、相手を受け入れる言葉づかいをする人のまわりには、自然と人が集まり、グループの中心になりやすい」ということが証明されています。言葉は、ただの「情報を伝える道具」ではありません。あなたと友達のあいだをつなぐ「架け橋(かけはし)」なのです。
あなたが「なるほどね!」という言葉を口にするたびに、友達は「あ、この人は私の味方なんだな」「僕のことを大切にしてくれているんだな」と感じます。その安心感が、あなたへの信頼(しんらい)へと変わっていきます。
最初は、ちょっぴり照れくさいかもしれません。でも、勇気を出して一回使ってみてください。あなたが「なるほどね!」と言った瞬間、友達の表情がフワッとやわらかくなるのがわかるはずです。
さあ、明日の朝、学校のげた箱で、教室で、友達が話しかけてきたら、最高の笑顔でこの魔法の言葉を使ってみましょう!
「なるほどね!」
この5文字が、あなたの学校生活をキラキラと輝かせる、最高の魔法になりますように。