相手のプライバシーに関わることは聞かない
ねえねえ、昨日なんで学校をお休みしたの?
算数のテスト、何点だった?
その新しい筆箱、いくらしたの?
クラスのお友達と話しているとき、こんなふうに「ちょっと気になること」を聞きたくなったことはありませんか?相手のことをもっと知りたい、仲良くなりたいという気持ちから、ついつい質問したくなってしまいますよね。でも、実はここに、クラスで「あの人といると、なんだかホッとするな」と思われる人と、「うーん、あの人と話すと、ちょっと疲れちゃうな」と思われてしまう人の、大きな分かれ道が隠されているのです。
今回は、お友達の心の中に優しく寄り添い、クラスで一番「一緒にいて安心できる人」になれる魔法のルールをお話しします。それは、「相手のプライバシーに関わることは、自分から進んで聞かない」というルールです。これをマスターすると、あなたとお友達の間のキズナは、今よりももっと強くなりますよ!
「もっと知りたい!」が、お友達を困らせてしまう理由
お友達のことを知りたいと思うのは、あなたがとても優しくて、お友達に興味がある証拠です。それは素晴らしいことです。でも、お友達の立場になって考えてみると、どうでしょうか。
例えば、係の仕事でいっしょになったお友達が、昨日学校を休んでいたとします。「風邪だったのかな?」「どこかお出かけしていたのかな?」と気になりますよね。そこで、朝会ったときに「昨日、なんで休んだの?」と大きな声で聞いてしまいました。すると、お友達は少し困ったような顔をして、下を向いてしまいました。実は、お友達はおなかが痛くて病院に行っていただけで、それをみんなの前で言うのが恥ずかしかったのかもしれません。
また、こんなこともあります。テストが返ってきたとき、うれしくて「何点だった?」とお友達に聞きに行くことです。もしお友達が、一生懸命勉強したのに思うような点数が取れなくて、悔しい気持ちでいっぱいだったらどうでしょう。「何点?」と聞かれるだけで、胸がチクッと痛くなってしまいますよね。
このように、あなたにとっては「ただの質問」でも、相手にとっては「心の中に土足で入られた」ように感じてしまうことがあるのです。この、人にはそれぞれある「これ以上は入ってほしくない、自分だけの特別な場所」のことを、「プライバシー」と呼びます。
脳と心の中にある「心のバリア(なわばり)」のひみつ
なぜ、プライバシーに触れられると、人は嫌な気持ちになったり、ドキドキしたりしてしまうのでしょうか。これには、私たちの「脳」と「心」の仕組みが深く関係しています。心理学や脳科学の研究で、とても面白いことが分かっているのです。
私たちの心には、目に見えない「心のバリア(パーソナルスペース)」という、自分だけのなわばりがあります。これは、動物たちが自分のなわばりを作るのと同じです。このなわばりの中に、心の準備ができていないのに誰かが急に入ってくると、脳の奥にある「扁桃体(へんとうたい)」という部分が、ピンチを知らせるアラームを鳴らします。扁桃体は、不安や怖さを感じる「心の警報装置」のようなものです。
お友達から「昨日、なんで休んだの?」「テスト何点だった?」と、プライバシーに関わることを急に聞かれると、この脳のアラームが「キケン!心のなわばりに誰かが入ってきたぞ!」と大音量で鳴り響きます。すると、お友達の頭の中は以下のような状態になってしまいます。
- ドキドキして、言葉がうまく出てこなくなる
- 「言いたくないな」という強いストレスを感じる
- 目の前にいるあなたに対して、「ちょっと怖いな」「離れたいな」と警戒してしまう
つまり、あなたが悪気なく聞いた質問が、相手の脳をピンチに陥らせて、あなたを「苦手な人」だと感じさせてしまう原因になっていたのです。逆に、この「心のバリア」を大切に守ってくれる人のことを、脳は「この人は安全な人だ!」「いっしょにいるとリラックスできる!」と判断します。これが、クラスで好かれる「感じがいい人」の正体なのです。
こんなときどうする?ついつい聞いてしまいそうな3つの場面
学校生活の中には、ついついお友達のプライバシーについて聞きたくなってしまう場面がたくさんあります。そんなとき、どのように行動すれば「感じのいい人」になれるのか、3つの具体例で見てみましょう。
場面1:テストの点数や成績
テストが返ってきた瞬間は、クラス中がザワザワしますよね。「おれ、85点だった!」「私、ここ間違えちゃった」という声が聞こえてきます。そんなとき、静かにテストを筆箱の下に隠しているお友達がいたら、どうしますか?
×やってしまいがちな行動:「ねえ、何点だった?見せて!」とのぞき込む。
◎感じのいい人の行動:点数については何も聞かず、「今回の算数、難しかったよね」「テスト終わってスッキリしたね!」と、テストが終わったこと自体をいっしょに喜びます。相手から「実はさ……」と話してくれたときだけ、「うん、うん」と優しく話を聞いてあげましょう。
場面2:お休みした理由や、早退した理由
昨日まで元気に遊んでいたお友達が、急にお休みしたり、5時間目の途中で早退したりすることがあります。次の日、元気に登校してきたお友達を見て、うれしくなったとき、どう声をかけますか?
×やってしまいがちな行動:「昨日、なんで休んだの?」「どこか悪かったの?」と理由を詳しく聞く。
◎感じのいい人の行動:休んだ理由は一切聞かずに、ただ笑顔で「おはよう!今日会えてうれしいよ!」と伝えます。これだけで、お友達は「学校に来てよかったな」と、とても安心した気持ちになります。もし、おうちのお手伝いや、少し話しづらい理由でお休みしていたとしても、これならお友達を困らせることはありません。
場面3:おうちのことや、家族のこと
お友達の家にお邪魔したときや、クラスで家族の話題になったとき、お友達の「おうちの事情」が気になることがあります。「お父さんはどんな仕事をしているの?」「どうしてお姉ちゃんと部屋が別々なの?」といった質問です。
×やってしまいがちな行動:「なんで?」「どうして?」と、おうちのルールや家族のことを掘り下げて聞く。
◎感じのいい人の行動:おうちのことは、相手が自分から話してくれたこと以外は、こちらから質問しません。その代わりに、「このゲーム、おもしろいね!」「このお部屋、かっこいいね!」と、今目の前にある楽しいことに注目して、いっしょに盛り上がります。
「感じのいい人」がやっている、3つの魔法のルール
お友達に安心感をプレゼントして、クラスで一番の「聞き上手」になるために、今日から使える3つの魔法のルールを紹介します。どれも簡単なことばかりですので、ぜひ頭に入れておいてくださいね。
ルール1:自分から話してくれるのを待つ「おすそわけの心」
お友達のプライバシーについては、自分から無理やり聞き出すのではなく、相手が「話したいな」と思って話してくれるのを、のんびり待つのが基本です。これを「おすそわけの心」と呼びます。
お友達が「実はね、昨日お母さんとケンカしちゃって……」と、自分の秘密を「おすそわけ」してくれたときだけ、「そうだったんだね。話してくれてありがとう」と、大切に受け取りましょう。相手が話してくれないということは、まだそのタイミングではないということ。あたたかい目で見守ってあげるのが、本当の優しさです。
ルール2:もし聞いてしまったら、すぐに「パス」をあげる
気をつけていても、ついつい「昨日、何してたの?」などと聞いてしまい、お友達が「あ、ええと……」と言葉に詰まってしまうことがあります。そんなときは、すぐにあなたが「パス」を出して、質問をキャンセルしてあげましょう!
「あ、言いたくないことなら、言わなくて全然大丈夫!」「あ、ごめんごめん!それより、今日の給食のカレー、楽しみだね!」というように、明るく話題を変えてあげるのです。これだけで、お友達の脳のアラームはピタッと止まり、「ふう、助かった!」と、あなたに深く感謝することでしょう。
ルール3:相手の「言いたくない気持ち」を全力で守るヒーローになる
もし、他のお友達が、特定の子に対して「ねえ、なんで休んだの?」「テスト何点だったの?」としつこく聞いているのを見かけたら、あなたは「安心を守るヒーロー」になるチャンスです。
相手を怒るのではなく、「まあまあ、テストのことは忘れて、みんなでドッジボールしようよ!」「それより、今日の宿題って何だっけ?」と、間に入って優しく話題を変えてあげてください。しつこく聞かれて困っていたお友達は、あなたのそのさりげない優しさに、心から救われるはずです。
明日からできる!「安心のバリア」をプレゼントしよう
お友達のプライバシーを守るということは、お友達の心に「安心のバリア」をプレゼントするということです。「この人といると、変なことを聞かれないから、のびのびとおしゃべりができるな」とお友達に思ってもらえたら、大成功です。
明日、学校に行ったら、まずは次のことを心がけてみてください。
- お友達が少しでも言いにくそうにしたら、すぐに質問をやめて、別の楽しい話をすること。
- お休み明けのお友達には、理由を聞く代わりに「会えてうれしい!」と笑顔で挨拶すること。
この2つを意識するだけで、あなたの周りには、いつも笑顔でリラックスしたお友達が集まるようになります。相手の心を大切にできるあなたこそが、クラスで一番「感じがいい人」になれるのです。さあ、明日の学校生活が、もっともっと楽しみになってきませんか?