悲しいときは素直に伝える
キミは学校で、こんなふうに思ったことはありませんか?
「本当は手伝ってほしかったのに、友達に『じゃま!』って言われてショックだった……」
「ドッジボールで自分が外野になったとき、誰もパスをくれなくて、なんだか悲しくなった……」
そんなとき、心の中でどんなふうに思っていますか?
「いばるなよ!」と怒ったり、「どうせ私なんて……」とふてくされたりしていませんか? もしかしたら、悲しい気持ちをギュッとガマンして、何事もなかったようにニコニコ笑っている人もいるかもしれません。
でもね、ちょっと待ってください。その「悲しい気持ち」、心のなかに閉じ込めたままだと、どんどん大きくなってモンスターになってしまうんです。そして、相手にチクッと意地悪な言葉を言ってしまったり、大ゲンカになってしまったりします。
実は、心理学の世界では、「自分の本当の気持ち(特に悲しさや弱さ)を素直に言葉にすると、相手との心の距離がギュッと縮まる」ということがわかっています。今日は、悲しい気持ちを上手に相手に伝えて、もっと仲良しになるための「神」コミュニケーション術を教えちゃいます!明日からすぐに学校で試せる方法ばかりですよ。
どうして「悲しい」と言えないの?私たちの頭のなかで起きていること
まず、「どうして私たちは悲しいときに、素直に悲しいと言えないんだろう?」という謎を解いてみましょう。ここには、心理学の面白い仕組みがかかわっています。
「怒り」の仮面をかぶる心理
心理学に「防衛機制(ぼうえいきぜい)」という言葉があります。むずかしい名前ですが、要するに「傷つきやすい自分を守るための、心のバリア」のことです。
人は、心のなかで「悲しい」「寂しい」「ショックだ」と感じたとき、そのままの姿を見せるのがとても怖くなります。「弱い人間だと思われるかもしれない」「笑われるかもしれない」と本能的に感じてしまうからです。
そこで、脳は一瞬で考えます。「そうだ!悲しい顔を見せる代わりに、強いフリをしよう!」と。その結果、本当は悲しいのに、顔を赤くして「なんだよ!」「ふざけないでよ!」と、怒りの仮面をかぶってしまうのです。
怒ると、事態はもっと悪くなる!
友達に冷たくされて悲しかったのに、「何すんだよ!」と怒ってしまったとします。すると、言われた友達はこう思います。
「なんだよ、あいつ! 急に怒り出してこわいな!」
本当は「私のこと大切にしてよ」「悲しかったよ」と伝えたかったのに、怒ったせいで相手はびっくりして離れていってしまいます。これって、とってももったいないし、悲しいですよね。自分の本当の気持ちは、相手には伝わっていないのです。
心理学が証明した!「アイ・メッセージ」の魔法
では、どうすれば自分の悲しい気持ちを、相手を怒らせずに伝えられるのでしょうか?
ここで、心理学で一番おすすめのテクニックを紹介します。それは、「アイ・メッセージ」という方法です。
「アイ」とは、英語の「I」、つまり「私」のことです。
反対に、「あなた」を主語にして話すことを「ユー・メッセージ」と言います。まずは、この2つの違いを見てみましょう。
- ユー・メッセージ(あなた主語):「あなたが意地悪なこと言うから、ぼくは怒ってるんだよ!」
- アイ・メッセージ(私主語):「そんなふうに言われると、ぼくは悲しいな……」
- ユー・メッセージ:「なんで係の仕事を手伝ってくれないの? あなたのせいで終わらないよ!」
- アイ・メッセージ:「一人だと仕事が終わらなくて、ちょっと困って悲しいな……」
どうですか? ユー・メッセージだと、相手は「責められている!」と感じて、カッとなったり言い訳をしたくなったりします。でも、アイ・メッセージだと、相手は「あ、この人、今そんなふうに傷ついているんだな」と、スッと素直に受け止めることができるのです。
学校生活で実践!「悲しい」を伝える3つのステップ
理論がわかったところで、さっそく学校の生活でどう使うか、具体的なステップを見ていきましょう。
ステップ1:自分の心のなかに「名前」をつける
まずは、胸がモヤモヤしたり、いやな気持ちになったりしたときに、立ち止まってみてください。
「あ、今、ぼくの心は怒ってるんじゃないな。本当は『悲しかった』んだな」と、自分の心に本当の気持ちのラベルを貼ってあげます。これだけでも、モヤモヤのエネルギーが半分くらいに減ります。
ステップ2:「わたし」を主語にして、声に出す
友達に伝えるときは、深呼吸をひとつして、落ち着いた声で話します。
「あのね、さっきそう言われたとき、ちょっと悲しかったんだ」
ポイントは、少し小さな声で、優しく話すことです。大きな声で言うと、それだけで「怒っている」と勘違いされてしまいます。自分の大切なお人形をそっと扱うように、自分の悲しい気持ちも、優しく扱ってあげてください。
ステップ3:してほしいことを一つだけお願いする
悲しい気持ちを伝えたあとに、「だから次はこうしてほしいな」とお願いを付け加えると、さらにコミュニケーションが上手になります。
「今度から、あんなふうに言わないでもらえると嬉しいな」
「もしよかったら、一緒に手伝ってくれると助かるな」
ここまで言えると、相手も「ごめんね、次から気をつけるね」と言いやすくなります。
【ケーススタディ】こんなとき、どう言う?
実際に学校でよくある場面を想像してみましょう。キミならどう言いますか?
ケース1:おにごっこで仲間はずれにされたとき
よくある失敗:「なんだよ!入れてくれないなんてずるい!もう絶交だから!」(怒りの仮面)
神コミュニケーション:「みんなで楽しそうに遊んでるのに、入れてもらえなくて、ちょっと寂しかったな。次からは仲間に入れてほしいな」
ケース2:掃除のときに、おしゃべりしていて手伝ってもらえなかったとき
よくある失敗:「サボってないで早く手伝いなよ!いつも自分ばっかり損してる!」(攻撃モード)
神コミュニケーション:「一人でこのゴミを全部片づけるのは、終わらなくてちょっと悲しいな。一緒にやってくれたら嬉しいな」
どちらの「神コミュニケーション」も、言われたほうは「あ、そんなふうに思わせていたんだな。ごめんね」と反省しやすいですし、あなたのことを「ずるいやつだな」ではなく「素直ですてきだな」と感じるようになります。
家でも使える!家族とのコミュニケーション
この「悲しいときは素直に伝える」技術は、学校だけでなく、お家の中でも大活躍します。家族は一番身近な人だからこそ、つい甘えて強い言葉を言ってしまいがちですよね。
例えば、お母さんに宿題を早くしなさいと言われて、本当は自分でもやろうと思っていたのに「うるさいな!」と怒ってしまったとき。
そんなときは、あとからこう言ってみましょう。
「さっきは怒鳴っちゃってごめんね。本当は、自分でやろうと思って準備していたから、そう言われてちょっと悲しかったんだ」
お母さんはきっとびっくりするけれど、「そうだったんだね、気づかなくてごめんね」と優しく頭をなでてくれるはずです。自分の弱さや悲しさを素直に見せられる人は、家族からも愛され、信頼されるようになります。
まとめにかえて:素直な心は、最強の武器
「悲しい」と言うのは、なんだか恥ずかしいことのように思うかもしれません。「強い子でいなきゃいけない」と思っている人ほど、涙や悲しみを隠そうとします。
でも、心理学的に見ても、そして人間関係のルールとしても、「自分の気持ちを素直に認めて、相手に伝えること」は、一番カッコよくて、一番強い生き方です。
悲しいときは、「悲しかった」と言ってもいいんです。それは負けではなく、相手ともっと仲良くなるための、すてきなチャンスなのです。
さあ、明日の学校ではどんなことが待っているでしょうか?
もし、ちょっとショックなことや悲しいことがあったら、ぐっと怒りを飲み込んで、深呼吸をしてみてください。
そして、こう言ってみましょう。
「そのとき、ちょっと悲しかったな」
その一言から、キミのまわりの世界が、もっと優しく、もっと温かい場所に変わっていきますよ。