遊びのルールをみんなで話し合う
校庭でのドッジボールや、教室でのフルーツバスケット。休み時間になると、みんなでワイワイ遊ぶのはとっても楽しいですよね。でも、こんな経験はありませんか?
「えー、そのルールだとつまらないよ!」
「ぼくのほうが先にボールにさわったもん!」
「そんなのズルい!」
楽しかったはずの遊びが、ルールのことで大ゲンカになってしまい、しまいには「もうこのメンバーでは遊ばない!」となかよしの友達と気まずい空気になってしまう……。とっても悲しい気持ちになりますよね。せっかくの楽しい時間が台無しになってしまいます。
実は、みんなで楽しく、最後まで笑顔で遊ぶためには、「遊びのルールをみんなで話し合うこと」がめちゃくちゃ大切なんです。しかも、ただ話し合うだけではありません。みんなが「このルールで遊んでよかった!」と心から思える、ちょっとした「コツ」があるのです。
今回は、行動経済学(こうどうけいざいがく)という、人間の心理を研究するすごい学問の力を借りて、みんなの人気者になれる「話し合いの神テクニック」を伝授しちゃいます!明日からすぐに学校で使える方法ばかりなので、ぜひマスターしてくださいね。
どうしてルールでケンカになっちゃうの?
まず、なぜみんなで遊んでいるときにケンカが起きるのか、その原因を知ることから始めましょう。
例えば、クラスの係の仕事や、次のレクリエーションの内容を決めるときを思い出してください。リーダーシップがある一人の子が「じゃあ、今回はこのルールでいこう!」とパパッと決めてしまったとします。その子は良かれと思ってやっているのですが、決まったルールを聞いたまわりの子たちは、こんなふうに思っていませんか?
- 「ぼくの意見は全然聞いてくれなかった……」
- 「なんだか、やらされているみたいで楽しくないな」
- 「これじゃあ、あの人だけが得をするルールだよ」
人間には、「自分で決めたことには大賛成したいけれど、人から一方的に決められたことには、心の中で『うーん』と反対したくなる」という、ちょっと頑固な心理が備わっています。行動経済学では、これを「決定への参加(かさん)」や「自己決定(じこけってい)の心理」と呼びます。
つまり、どれだけ完璧ですごいルールだったとしても、それが「誰か一人の意見」で決まったものだと、みんなの心にはモヤモヤが残ってしまうのです。このモヤモヤが大きくなると、小さなことで言い合いになり、大ゲンカへと発展してしまいます。
行動経済学で見つけた!みんなが納得する「魔法のルール作り」
では、どうすればみんなが納得して、最後までニコニコ笑顔で遊べるのでしょうか?
ここで、行動経済学のとても面白い実験をご紹介します。人間の脳は、「みんなで話し合って、自分たちでゼロから作り上げたルール」に対しては、ものすごく強い愛着を持ち、そのルールを守ろうとする習性があります。これを心理学では「保有効果(ほゆうこうか)」や「公正さ(こうせいさ)の原理」と言います。
むずかしい言葉はここまでにしておくとして、要するにこういうことです。
「自分の意見がちゃんとルールの中に反映されていると、その遊びが100倍楽しくなる!」
これを学校の遊びに応用するためのステップを、3つの段階に分けて見ていきましょう。
ステップ1:まずは全員の「やりたいこと」をテーブルに出す
新しい遊びや、新しい特別ルールを作るときは、いきなり「これでいいよね?」と決めてはいけません。必ず、遊ぶメンバー全員にこう聞いてみましょう。
「ねえ、今回のドッジボール、もっと面白くするために何か新しいルールを加えたい?みんなの意見を教えて!」
ここでポイントなのは、どんなに「それ無理だよ!」と思うような意見でも、まずは否定せずにぜんぶ聞き取ることです。ホワイトボードやノートの端っこに、みんなの意見をどんどん書き出していきましょう。
行動経済学では、自分の意見が「無視されずに受け止められた」という感覚(これを「承認欲求が満たされる」と言います)があるだけで、人間の脳は安心感でいっぱいになり、そのグループに対してすごく好意を持つことが分かっています。意見が採用されなくても、「聞いてくれた」という事実がめちゃくちゃ重要なのです。
ステップ2:みんなで「公平さ」を話し合う
意見が出そろったら、次はどれを採用するかを話し合います。ここで意識してほしいのが「公平さ」です。
例えば、「足の速いAくんだけが有利になるルール」や「いつも特定のペアばかりが得をするルール」になっていないかをみんなで見チェックします。
「それだと、足の遅い子はつまらなくなっちゃうから、ハンデをつけようよ!」
「それ、いいね!そうすればみんながチャンスあるね」
こんなふうに、「全員が平等に楽しめるか」をみんなで考えるプロセスそのものが、実は遊びの楽しさの一部なんです。話し合いの最中に、友達のやさしい一面や、まわりのことをよく見ている気づかいに気づくこともたくさんあります。クラスの絆がぐっと深まる瞬間ですね。
ステップ3:決まったルールを「みんなの合意」にする
最後に、話し合って決まったルールをみんなで確認します。
「よし、今回のルールは『外野は2人まで、キャッチしたら1回復活できる』に決定!みんな、このルールでオッケーかな?」
ここで全員が「オッケー!」と声をそろえたり、うなずき合ったりすることが大切です。この「みんなで合意した」という儀式を行うことで、脳の中に「ぼくたち・わたしたちは一つのチームだ!」という強い連帯感が生まれます。
明日から学校でやってみよう!神コミュニケーション術の実践
理論がわかったところで、明日から学校でどうやってこの「神コミュニケーション術」を使えばいいのか、具体的な場面をイメージしてみましょう。
ケース1:ドッジボールのチーム分けと特別ルール
昼休みにみんなでドッジボールをすることになりました。でも、いつもメンバーが偏ってしまったり、強い子がボールを独占してしまったりして、ちょっと空気がピリピリしています。
そんなとき、あなたがこう言ってみてください。
「ねえ、今日はもっとみんなが活躍できるように、何か特別ルール作らない?例えば『女子が投げたら2点』とか『全員が1回はボールにさわれる作戦タイム』とかどうかな?」
あなたのこの一言で、みんなは「おっ、それ面白そう!」「それならぼくも活躍できるかも!」とワクワクし始めます。あなたがみんなの意見を引き出す「まとめ役」になることで、クラスみんなから「あの人といると楽しい!」と信頼されるようになります。
ケース2:係の仕事のやり方を変えるとき
クラスの係で、ポスター作りや黒板消しなどを担当しているとき、「もっと効率よくできないかな」と思うことはありませんか?
そんなとき、自分の意見を一方的に押し付けるのではなく、こう提案してみましょう。
「みんな、この係の仕事をもっとラクで楽しくするために、みんなのアイデアを出し合って新しいルールを作ってみない?ノートに書いていこう!」
みんなでワイワイ話し合って決めた「新しい係のルール」は、驚くほどスムーズに進みます。なぜなら、全員が「自分が決めたルールだから、責任を持ってやり遂げよう」という気持ち(行動経済学でいう自己決定のパワー)を持っているからです。
ルール作りは「もっと仲良くなるための最高のイベント」
ルールや決まり事というと、「なんだか堅苦しいな」「窮屈だな」と感じる人もいるかもしれません。先生や親に怒られないためのもの、というイメージがあるかもしれませんね。
でも、本当はまったく違います。
遊びのルールをみんなで話し合うことは、「どうすれば全員が最高にハッピーになれるか」を一緒に考える、最高にワクワクするクリエイティブな時間なのです。
友達の意見に耳を傾け、「それいいね!」と笑顔でうなずき、みんなで納得したルールを作って思いっきり遊ぶ。その経験を重ねていくうちに、あなたはまわりの人から「一緒にいて居心地がいい人」「みんなの意見をまとめてくれる頼りになる人」として、自然と好意を持たれるようになります。
明日の休み時間、教室や校庭で、さっそく「ねえ、新しいルールで遊んでみない?」と声をかけてみてください。あなたの周りに、きっとたくさんの笑顔と素晴らしいチームワークが生まれるはずです。