相手の表情に合わせて反応を変える
学校で、ともだちと話しているとき、「あれ? いま、わたし何か変なこと言っちゃったかな……」と、不安になったことはありませんか?
「うんうん、うなずいて聞いてくれてる!」と思って安心して話していたのに、ともだちの眉間にしわがよっていたり、目が合わなくなったりすると、急にドキッとして声が小さくなってしまいますよね。
実は、だれからも好かれる「神コミュニケーション」ができる人は、この「相手の表情の変化」をすごくよく見ています。
そして、相手の表情に合わせて、自分の話し方や反応を上手に変えているのです。
「えっ、人の顔色ばかり気にするの?」と思うかもしれません。でも、それは気弱になっているのとはちがいます。相手が今どんな気持ちでいるのかをキャッチして、「あなたを大切に思っていますよ」というサインを送る、とってもやさしくて知的なテクニックなんです。
明日からの学校生活がもっと楽しくなる、表情を使ったコミュニケーションの秘密を一緒に見ていきましょう!
脳の「ミラーニューロン」って知ってる?
なぜ、相手の表情に合わせると、一気に仲良くなれるのでしょうか?
そのヒミツは、私たちの脳の中にあります。神経科学(しんけいかがく:脳や神経のしくみを研究する学問です)の世界では、人間の脳には「ミラーニューロン」という特別な細胞があることが分かっています。
「ミラー」というのは、鏡のことです。ニューロンは脳の細胞の名前です。つまり、「鏡の脳細胞」という意味ですね。
このミラーニューロンは、「ほかの人の姿を見ると、まるで自分も同じことをしているかのように感じる」というすごい働きを持っています。
「うつりやすい」脳のしくみ
- テレビでスポーツ選手がすごいゴールを決めたとき、思わず自分も「やったー!」とガッツポーズをしてしまう
- 目の前でレモンをすっぱそうに食べている人を見ると、なぜか自分の口の中もじゅわっとつばが出てくる
- 大あくびをしている人を見ると、自分までうつってあくびをしてしまう
これらはぜんぶ、あなたの脳にあるミラーニューロンが働いているからです。人間は、目で見ためを、自分のことのように感じてしまう天才なんですね。
だからこそ、あなたが話している相手の脳も、あなたの表情や態度を鏡のように映し出しています。
あなたがニコニコしていれば相手の脳も「楽しい気分」になり、あなたが不機嫌そうな顔をしていれば相手の脳も「ピリピリした気分」になってしまうのです。
学校生活で使える!「表情キャッチ&チェンジ」の3ステップ
脳のしくみがわかったところで、さっそく明日から学校でできる具体的な方法をお伝えします。
その名も「表情キャッチ&チェンジ術」です!
やり方はとてもカンタン。3つのステップで進めてみましょう。
ステップ1:相手の「目もと」と「口もと」をみる
まずは、お話しているともだちの顔をよく見ることからはじめます。
ポイントは、「目もと」と「口もと」のふたつを見るこです。
- 目もと:楽しそうにパッチリ開いているかな? それとも、すこし下がっていて「むずかしいな」と考えているかな?
- 口もと:ニッコリ上がっているかな? それとも、キュッと結ばれていて、言いたいことがあるのに我慢しているのかな?
授業中、先生が「ここ、分かる人?」と言ったとき、クラスのみんなの顔を思い浮かべてみてください。自信満々に手を挙げている子の顔と、当たらないでほしいな……と机を見つめている子の顔は、ぜんぜんちがいますよね。それを普段から観察するくせをつけるのです。
ステップ2:相手の気持ちを「心の中で翻訳」する
表情をキャッチしたら、次は心の中で「いま、この子はどんな気持ちかな?」と翻訳(ほんやく)します。
- 「ぼくの話しが長すぎて、ちょっとあきてきちゃったかな?」
- 「この問題、難しすぎて困っている顔だな」
- 「私がノートを貸してあげたら、すごくほっとした顔をしたぞ」
言葉にしなくても、「あ、今こういう気持ちなんだな」と気づくだけで、相手との心のきょりはぐっと縮まります。
ステップ3:自分の反応を「チェンジ」する
ここが一番たいせつなポイントです! 相手の表情に合わせて、自分の態度や言葉をパッと変えてみましょう。
具体的なシチュエーションごとに見ていきましょう。
シチュエーション①:ともだちが「うーん」と難しい顔をしているとき
係のポスターの色ぬりをしているとき、となりの子が筆を止めて、眉間にしわをよせています。
そんなとき、「どうしたの?早くしてよ」と言ってしまうのはNGです。
神経科学的にも、相手が困っているときにピリピリした態度をとると、相手の脳はさらにストレスを感じてフリーズしてしまいます。
ここでは、あなたの表情を「やさしく、おだやかな顔」にチェンジしましょう。
そして、「ここの色、すごく悩むよね。水色と青、どっちがいいと思う?」と、相手のペースに合わせて声をかけてあげます。
すると、相手の脳は「あ、味方をしてくれた!」と安心し、ミラーニューロンの働きで、相手の表情にも自然と笑顔がもどってきます。
シチュエーション②:ともだちが自分の話に「ぽかん」としているとき
休み時間に、自分が大好きなアニメやゲームの話を熱く語っているとき、ふとともだちの顔を見ると、目がうつろで、口がポカンと開いています。
これは、あなたの話についていけなくなっているサインです。
「え、聞いてる!?」と怒るのではなく、ここで反応を「クエスチョン(質問)モード」にチェンジしましょう。
「ここまで一気に話しちゃったけど、〇〇ちゃんは、このキャラクター知ってる?」と、相手にボールを投げ返します。
相手が話しやすいように、自分のトーンを少しゆっくりにして、笑顔で問いかけるのです。
すると、相手は「よかった、私のペースに戻してくれた」とホッとして、楽しく会話を続けることができます。
シチュエーション③:ともだちがとっても嬉しそうな顔をしているとき
テストで100点を取ったときや、ドッジボールで大活躍したとき、ともだちがキラキラした笑顔であなたに話しかけてきました。
このときは、あなたのミラーニューロンをフル回転させるチャンスです!
相手の何倍も目を大きくして、「すごいじゃん!やったね!」と、同じようにテンションを上げて喜びましょう。
人間は、自分の喜びを自分以上に喜んでくれる人のことを、「自分にとって一番大切な人だ」と強く感じるようにできています。これを心理学や脳科学では「共感(きょうかん)の報酬(ほうしゅう)」と呼びます。
おうちでもやってみよう!家族でできる表情トレーニング
学校でいきなりやるのは、はじめはちょっとドキドキするかもしれませんね。
だからこそ、まずは一番安心できる「おうち」で練習してみましょう!
- お母さんやパパがお仕事から帰ってきたとき:「お疲れ様」の顔を観察する。疲れていそうなら、いつもより静かにやさしく話しかけてみる。
- きょうだいやペットと遊んでいるとき:相手がどんな表情のときに喜んで、どんな表情のときにイヤがるかをよく見て、自分の反応を変えてみる。
- テレビのニュースやアニメを見ているとき:登場人物の表情が変わった瞬間、「あ、今この人困った顔になったね」と口に出してみる。
こうした小さな練習の積み重ねが、あなたの脳のネットワークをどんどんきたえてくれます。
相手の表情に合わせて反応を変えることは、決してむずかしいことではありません。「あなたのことを見ていますよ」「あなたの気持ちを大切にしたいな」という、目に見えない思いやりのプレゼントです。
明日、学校に行ったら、まずは仲良しのあの子の「目もと」と「口もと」を見ることから始めてみませんか?
あなたが相手の表情に気づいてニコッと微笑み返したとき、教室の空気がパッと明るくなり、これまでよりもっと深い絆で結ばれるはずです。さあ、ワクワクした気持ちで、明日の一歩を踏み出してみましょう!