「すごいね」と褒める回数を増やす
学校の帰り道、ランドセルを背負いながら、ふとこんなことを思ったことはありませんか?
「もっとクラスのみんなと仲良くなりたいな」
「あのグループみたいに、いつも楽しくおしゃべりできたらいいのに」
新しい友達を作りたいとき、大好きな人ともっともっと仲良くなりたいとき、わたしたちはどうしても「何か面白いことを話さなきゃ!」とか「かっこいいところを見せなきゃ!」と、自分が話すことばかりを考えてしまいがちです。
でも、ちょっと待ってください。じつは、もっと簡単で、もっとすごい魔法があるのです。
それが、この章のテーマである「うれしい言葉をプレゼントする」こと。中でも一番シンプルで、だれでも今日からできる最強の魔法が、「すごいね」と褒める回数を増やすことです。
「えっ、そんなことで好かれるの?」と思いましたか?
はい、本当です。国語の勉強で、言葉の意味を研究する「ごようろん(語用論)」というかっこいい言葉があります。このお勉強の考え方を使うと、なぜ「すごいね」の一言でみんなが笑顔になり、あなたを大好きになるのかが、よおく分かるのです。さあ、言葉の魔法のせかいへ出発しましょう!
言葉には「空気を変えるパワー」がある
まずは、ちょっぴり学校の教室を思い浮かべてみてください。
こんな経験、ありませんか?
- テストでいつもより良い点数がとれて、心の中で「やったー!」とガッツポーズをしたとき。
- 図工の時間に、何時間もかけてかっこいいロボットの絵を完成させたとき。
- 給食当番のとき、こぼさずに上手にスープをつぎわけられたとき。
そんなとき、もしも近くにいた友達が、あなたの顔をのぞきこんでこう言ってくれたらどうでしょう?
「うわあ、このロボットの目、すごくかっこいい!細かいところまで丁寧に描いてるね!」
どうですか? 胸のあたりがポッとあたたかくなって、なんだかその友達のことが急に大好きになりませんか? 「この人は、ぼく(わたし)のがんばりを見ていてくれたんだ!」とうれしくなりますよね。
これが、言葉の研究である「語用論」の大切なポイントです。
語用論では、「言葉は、ただの記号(文字や音)ではなく、相手の気持ちやその場の空気を動かす『道具』である」と考えます。つまり、あなたが発する「すごいね」という言葉は、友達の心をポカポカ温める「カイロ」のようなものなのです。
なぜ「すごいね」を言うと好かれるの?
では、どうして「すごいね」と褒める回数を増やすと、みんなから好かれる「神コミュニケーション」になるのでしょうか。その秘密は、人間の心にあります。
人はだれでも、心の中に「自分を認めてほしい」「自分のがんばりを見てほしい」という大きな引き出しを持っています。これを心理学では「承認欲求(しょうにんよっきゅう)」と呼ぶのですが、むずかしい名前は忘れても大丈夫です。
要するに、みんな「自分をわかってほしい生き物」なのです。
「すごいね」が持つ3つの魔法
- 魔法①:相手の「がんばり」にスポットライトを当てる
クラスには、足が速い子、絵が上手な子、お笑い係でみんなを笑わせるのが好きな子など、いろいろな個性の持ち主がいます。あなたが「すごいね」と言うことで、その子の素敵なところがクラスのみんなに光って見えます。 - 魔法②:「味方だよ」というサインになる
意地悪なことを言う人とは仲良くなりたいと思いませんよね。でも、自分の良いところを見つけてくれる人には、「この人は自分の味方だ!」と安心します。安心できる人といると、人は自然とその人のそばにいたくなるのです。 - 魔法③:自分もハッピーな気持ちになれる
不思議なことに、人を褒めると、褒められた相手だけでなく、言ったあなた自身の脳も「うれしい!」と勘違いして、幸せホルモンを出してくれます。つまり、自分が得をする魔法なのです。
明日からできる!「すごいね」を増やす3つのステップ
「でも、なんだか急に『すごいね』って言うのは恥ずかしいな……」
「『そんなことないよ』って言われたらどうしよう」
そんなふうに心配しているあなたのために、明日から学校でこっそり、でも確実にできる「すごいね」のテクニックを3つ伝授します!
ステップ1:小さな「ちがい」を見つける名人にハックする
最初から大きなことを褒めようとしなくて大丈夫です。まずは、クラスメートの「小さな変化」を見つけてみましょう。
- 「あ、今日、新しいノートの表紙だね!宇宙の絵、かっこいい!」
- 「ねえ、その消しゴム、いい匂いがする!使わせてくれてありがとう」
- 「係のポスター、字がていねいで読みやすいね」
「すごいね」の前に、「かっこいい」「きれい」「ていねい」といった言葉をプラスすると、さらに気持ちが伝わります。語用論の視点から言えば、「具体的にどこがすごいと思ったか」をセットで伝えることが、相手の心を動かすコツです。
ステップ2:おうちのお手伝いで「予行練習」をする
学校でいきなり友達に言うのがドキドキするなら、まずはおうちのひとを褒めてみましょう!これが最高の練習になります。
- お母さんが作ってくれた夕飯を食べたとき:「今日のハンバーグ、お店みたいにジューシーですごいおいしい!」
- お父さんがお風呂掃除をしてくれたとき:「お風呂の床がピカピカ!さすがだね!」
- 弟や妹がおもちゃを片付けたとき:「じょうずに全部箱に入れたね、すごい!」
家族はあなたのいちばんの応援団です。おうちで「すごいね」と言う回数を増やすと、自然と学校でもスラスラと言葉が出てくるようになりますよ。
ステップ3:「結果」だけでなく「がんばる姿」を褒める
テストで100点を取ったときに「すごいね」と言うのは、誰でもできます。もちろんそれも素敵ですが、もっと心に響くのは「そこに至るまでの過程(プロセス)」を褒めることです。
例えば、ドッジボールの練習で、なかなかキャッチできなかったボールを、何度も転びながら必死に追いかけている友達がいたとします。
試合に負けて落ち込んでいるその子に、こう声をかけてあげてください。
「さっき、あきらめずにボールに向かって走っていった姿、めちゃくちゃかっこよかったよ!」
結果がどうであれ、自分の「がんばり」を一番近くで見ていてくれた人がいた。その事実は、その子の一生の宝物になります。そんな素敵な言葉をかけてくれるあなたのことを、その友達は絶対に忘れません。
「すごいね」の輪をクラス中に広げよう
ここまで読んでくれてありがとうございます。
言葉は、使えば使うほど、あなたの周りにあたたかい空気を広げてくれる不思議な力を持っています。あなたが「すごいね」と友達を褒めると、その友達も「〇〇ちゃんも、さっきノート貸してくれてすごいうれしかったよ」と、素敵な言葉を返してくれるようになります。
これを、語用論の世界では「言語のキャッチボール」と呼びます。優しさを投げれば、優しさが返ってくるのです。
明日、学校の門をくぐったら、まずはクラスの誰か一人に、心からの「すごいね」をプレゼントしてみましょう。席が隣の子でも、いつもはあまり話さない係の子でもかまいません。
あなたのその小さな一言から、クラスみんなが笑顔になる「神コミュニケーション」の物語が始まります。準備はいいですか? 明日の学校が、もっともっと楽しみになりますように!