困っている友達に「大丈夫?」と声をかける
クラスの係の仕事で、教科書をくばっているときのことです。Aくんが、プリントをいれるファイルボックスを床にひっくり返してしまいました。まわりのみんなは自分のことでいそがしくて、見て見ぬふりをしているように見えます。Aくんは、はずかしそうにしながら、ひとりでバラバラになったプリントをあわててひろい集めています。
こんなとき、あなたならどうしますか?
「どうしよう、声をかけて変に思われたらいやだな」
「ぼくが手伝ったら、かえってじゃまになるかもしれない」
そんなふうに考えて、足がすくんでしまったことはありませんか?
実は、困っている人に声をかけて手伝うことは、ただの「やさしさ」ではありません。クラスのみんながもっと仲良くなって、チームワークが抜群によくなる、すごい科学的な秘密がかくされているのです。
組織社会学(そしきしゃかいがく)という、人々の集まりやチームのきずなを研究する学問があります。この学問では、**「ひとりの小さな行動が、グループ全体の空気をガラリと変える力を持つ」**ということが分かっています。これを、きょうは学校生活ですぐに使える「神コミュニケーション術」としてマスターしていきましょう!
組織社会学が教える「助け合い」のパワー
組織社会学のむずかしい言葉はさておき、学校というクラスを一つの「小さなチーム」だと考えてみましょう。
チームがうまくいくためには、全員がバラバラにがんばるだけでは足りません。「誰かが困っていたら、自然とカバーし合える空気感」があるかどうかが、いちばん大切です。
社会学の研究では、これを**「互酬性(ごしゅうせい)」**や**「集合行動(しゅうごうこうどう)」**という言葉で説明することがあります。
むずかしく聞こえますが、かんたんに言うとこういうことです。
- 「困っている人を助けると、助けられた人は『自分も誰かを助けよう』という気持ちになる」
- 「そのやさしい連鎖が、クラス全体の雰囲気を明るく、安全な場所にする」
クラスの中に、「ここは失敗しても、誰かが『大丈夫?』と言ってくれる安心できる場所だ」という空気が生まれると、みんなのびのびと自分の力を発揮できるようになります。その最初のスイッチを入れるのが、まさに「大丈夫?」の一言なのです。
「大丈夫?」が言えないのはなぜ?
「困っていたら助けたい」と思っているのに、いざその場になると声が出せない。それは、あなたが冷たい人間だからではありません。人間には、まわりの目を気にしすぎてしまう自然なブレーキが心にかかるからです。
これを心理学や社会学では「傍観者効果(ぼうかんしゃこうか)」と呼ぶことがあります。「自分以外にも人がいるから、誰かが助けるだろう」と思えば思うほど、誰も動けなくなってしまう現象です。
たとえば、掃除の時間にホウキを大量に落としてしまった友達がいたとします。「あ、落としたな」と気づいている人はたくさんいるのに、みんな「自分が拾わなくてもいいか」と思って、誰も動かない。その結果、落とした人がぽつんと一人で悲しい気持ちになってしまう……。
このブレーキをはずす魔法の合言葉が、「まず自分が最初のワンステップを踏み出す」ということです。
明日からできる!「神」声かけの3ステップ
では、具体的にどうやって声をかければいいのでしょうか?
スマートで、相手も自分もはずかしくない「神声かけ」の3つのステップを紹介します。
ステップ1:まずは目を見て「大丈夫?」と近づく
遠くから大声で「どうしたの!?」と叫ぶと、まわりの注目を集めてしまって、本人はよけいにはずかしくなってしまうことがあります。
すっと近くに寄っていって、相手の目を見ながら、やさしいトーンで「大丈夫?」と声をかけましょう。これだけで、相手は「自分を見てくれている人がいたんだ」とホッとします。
ステップ2:相手のペースをじゃましない手伝い方をする
声をかけたあとのポイントです。いきなり相手の荷物を全部奪うように片付けはじめると、「私のやり方があるのに……」と思われてしまうこともあります。
そんなときは、こんなふうに聞いてみましょう。
- 「ここ、集めるの手伝おうか?」
- 「先生にほうき借りてこようか?」
「手伝ってもいい?」と相手に選ばせてあげることで、相手のプライドも守ることができます。
ステップ3:さりげなく元の状態にもどす
手伝いが終わったあとも大切です。「おつかれさま!」と笑顔で自分の席にもどるか、もしなごやかな雰囲気なら「大変だったね、お互い気をつけようね」と笑い飛ばしてあげると、相手の心のモヤモヤが一気に吹き飛びます。
学校生活のこんな場面で使ってみよう
この「神声かけ」は、プリントを落としたときだけではありません。学校生活のいろいろな場面で使えます。
- 班の活動で、発表のポスター作りが行き詰まっているとき:
「ここのイラスト、こう描くのどうかな?」と、そっとアイデアをたすけ舟として出す。 - 給食当番のとき、お皿をうっかり落として割ってしまった人がいるとき:
「怪我なかった?」と声をかけつつ、先生を呼びに行く係をさっと引き受ける。 - 休み時間に、ひとりでポツンと本を読んでいる友達や、何をしていいか迷っている子を見かけたとき:
「ねえ、いま何読んでるの?」と話しかけてみる。
どれも、むずかしいことではありませんよね。ほんの少しの勇気と、ほんの少しの「思いやり」を形にするだけです。
まとめの代わりに:あなたの声がクラスの空気を変える
組織社会学の考え方で見ると、学校というクラスは、あなたを含めた一人ひとりの行動の積み重ねでできています。
「クラスの雰囲気を変えたいな」と思ったら、学級会で長いスピーチをする必要はありません。先生に相談しなくてもいいのです。
明日、学校で困っている友達を見つけたら、ぜひ思い出してください。
あなたが勇気を出して「大丈夫?」と声をかけた瞬間、その友達の不安は半分になります。そして、その様子を見ていたまわりの友達も、「自分も困っている人がいたら声をかけよう」と感じてくれます。
あなたの小さな一言が、クラス全体をあたたかく、だれにとっても居心地のいい「最高のチーム」に変える魔法のスイッチになります。
さあ、明日はどんな「大丈夫?」を届けに行きますか?