「私はこう思う」と自分の考えを話す
国語の時間、先生に「このお話の主人公は、どうして泣いたと思いますか?」と聞かれたときのことです。みんなは手を挙げて「悲しかったから」「お母さんに怒られたから」と答えています。本当は、あなたの中では「いや、これって悔し涙なんじゃないかな…」という別の考えが浮かんでいたとします。
そんなとき、あなたはなんと答えますか?
「みんなが『悲しい』って言っているから、ぼくもそう言っておこう」
そうやって、自分の本当の気持ちや考えを飲み込んでしまったことはありませんか? クラスの雰囲気をこわしたくなくて、自分の意見を引っ込めてしまうのは、とっても優しい心の持ち主だからこそです。相手の気持ちを考えることができるのは、素晴らしいことです。
でもね、心理学の研究では、「自分の考えを自分の言葉でハッキリ伝えること」ができる人は、まわりの人から信頼されやすく、深い友情を築けることが分かっています。何でも「みんなと同じ」でいるよりも、「私はこう思うんだ!」と教えてくれる人の方が、一緒にいておもしろいし、もっとその人のことを知りたくなるからです。
今日は、自分の気持ちや考えを、相手をいやな気持ちにさせずに上手に伝える「魔法の伝え方」をマスターしましょう。明日からの学校生活が、もっと楽しく、もっと自分らしくなりますよ!
「みんな」という言葉のワナに気をつけて
クラスで係の仕事を決めたり、休み時間に何をして遊ぶか相談したりするとき、「みんなはこうしたいって言ってるよ」「普通はこうするもんだよ」という言葉を聞いたことはありませんか?
心理学には「同調圧力(どうちょうあつりょく)」という難しい名前の現象があります。これは、「まわりの人と同じようにしなきゃいけない気がする」というプレッシャーのことです。人間は、みんなの意見から外れると「仲間はずれにされるかもしれない」と不安になる生き物なので、つい「みんな」という言葉に流されてしまいます。
でも、よく考えてみてください。「みんな」って、いったい誰のことでしょう? クラスの全員が、全く同じことを考えているなんてことは絶対にありません。
「本当はドッジボールじゃなくて、中あてがやりたいな」
「このポスターの絵、もっと別の色にした方がカッコいいと思うんだけどな」
そう心の中で思っているのに、「みんながドッジボールって言うからいいや…」とガマンしていると、だんだん学校に行くのがちょっぴりゆううつになってしまいます。なぜなら、本当の自分をかくしているからです。
自分の考えを話す第一歩は、「みんな」という見えない大きな敵に勝つことではなく、「自分の中にある小さな声」を大切に聞いてあげることからはじまります。
心理学で証明されている「アイ・メッセージ」のすごい効果
「でもさ、自分の意見ばかり言うと、『わがまくだ』って思われそう…」
そんな心配をしたあなたに、とっておきの心理学のテクニックを教えます。それが「アイ・メッセージ」です。
アメリカの心理学者であるトマス・ゴードンという人が考え出した方法で、大人の世界でもビジネスでも、すごく大切にされているコミュニケーションの基本です。
アイ(I)とは、英語の「私」のことです。「私」を主語にして気持ちを伝える方法を「アイ・メッセージ」と言います。これに対して、「あなた」を主語にする方法を「ユー・メッセージ」と言います。
言葉のちがいを、おうちのお手伝いの場面で比べてみましょう。
- ユー・メッセージ(あなたを主語にする場合):「あなたはどうしていつも、リビングにランドティをっぱなしにするの!」
- アイ・メッセージ(私を主語にする場合):「私は、リビングにランドセルが置いてあると、通るときにぶつかっちゃうから困るな」
どうですか? どちらが言われたときに「直そう!」という素直な気持ちになれるでしょうか。
ユー・メッセージは、相手を「攻撃(こうげき)」しているように聞こえてしまいます。言われた相手は「怒られた!」と感じて、カッとなって言い返したくなってしまいます。これを心理学では「防衛反応(ぼうえいはんのう)」と呼び、自分を守ろうとしてケンカになってしまうのです。
一方で、アイ・メッセージは「私はこう感じている」「私はこう思う」と、自分の気持ちを自分の責任で相手に分けてあげる方法です。相手を責めていないので、聞いた人は「あ、そうだったんだ、ごめんね」と自然に受け入れることができます。
学校で使える!「私はこう思う」を伝える3つのステップ
それでは、明日からすぐに使える「アイ・メッセージ」を使った伝え方のコツを、3つのステップで紹介します。クラスの友達や先生、おうちの人と話すときに使ってみてください。
ステップ1:事実をそのまま受け止める
まずは、何が起きているのかの「事実」を見ます。自分の思いこみや、怒りの感情を混ぜないのがコツです。
(例:「給当番の時間が遅れている」など)
ステップ2:「私は〜と感じる」と言う
ここが一番大切です。「〜すべきだ!」と命令するのではなく、「私はこう思うよ」と自分の主観(しゅかん)を伝えます。
(例:「私は、このままだとみんなの給食の時間が短くなっちゃうから、ちょっと心配だな」)
ステップ3:どうしてほしいかのお願いを付け加える
ただ文句を言うのではなく、「こうしてくれたらうれしいな」という前向きな提案でしめくくります。
(例:「だから、みんなで協力して手早く配膳(はいぜん)しない?」)
この3つのステップを使うと、あら不思議。自分の意見をハッキリ言っているのに、まわりの人は「この人の意見を聞くと、なんだか納得できるな」「みんなのことをちゃんと考えてくれているんだな」と好感を持ってくれるようになります。
「みんなとちがう」は、あなたの素敵な才能
クラスのみんなと同じ意見じゃなくても、まったく問題ありません。むしろ、誰ともちがう視点を持っているということは、それだけで「大はっけん」なのです。
たとえば、図工の時間にみんなが青や赤の絵の具を使っている中で、「私は夕方の光みたいな、オレンジと紫のまざった空を描きたいな」と思ってそれを実行したらどうでしょう?教室に新しい風が吹いて、先生や友達から「わあ、きれいだね!その色どうやって作ったの?」と話しかけられるきっかけになります。
自分の考えを言葉にして伝えることは、はじめは少しだけ勇気がいります。心臓がドキドキするかもしれません。そんなときは、心の中で「私はこう思う!」と小さくつぶやいてから、深呼吸をひとつしてみてください。
あなたの考えは、あなただけの宝物です。その大切な宝物を、恥ずかしがらずに、そっとお友達に分けてあげてください。「私はこう思う」と笑顔で話せるあなたを、まわりの人はきっと大好きになりますよ。