質問されたらまずは「はい」と返事をする
クラスのみんなと話しているとき、ふとこんな場面はありませんか?
「ねえ、今日の休み時間、ドッジボールしない?」と友達にさそわれたとき、とっさに「えー、でも宿題が終わってないからやだ」と答えてしまうこと。あるいは、係の仕事について先生から「このプリント、配っておいてくれる?」と頼まれて、「でも、今から掃除の時間だから無理です」と言い返してしまうこと。
もしあなたがそう答えているなら、少しだけ気をつけてみてください。その「でも」という言葉が、実は知らないうちにあなたの周りに「敵」を作っているかもしれません。
「でも」は心のシャッターを下ろす合図
言葉には、相手の心をひらく力と、反対に閉ざしてしまう力があります。「でも」や「いや」という言葉は、相手からすると「あなたの言ったことは受け入れません」という拒絶のサインに聞こえてしまうのです。
社会言語学という、言葉と社会のつながりを研究する学問では、これを「フェイス(顔)」という考え方で説明します。ここでいうフェイスとは、みんなが持っている「大切にされたい」「認められたい」というプライドのことです。相手の提案をいきなり「でも」で否定することは、相手のフェイスを傷つけることと同じ。だから、言われたほうは「なんだか冷たいな」「この人は自分と合わないな」と感じてしまうのです。
魔法の言葉「はい」で受け止める
では、どうすればいいのでしょうか。答えはとてもシンプルです。どんなときでも、まずは「はい」と返事をすること。これだけで、あなたの印象は劇的に変わります。
「はい」は、相手の言葉を一度「受け入れましたよ」と伝えるサインです。たとえそのあとで自分の意見を言うとしても、頭に「はい」があるだけで、相手の受け取り方はまったく変わります。
- × ダメな例:「えー、そんなの無理だよ!」
- ◎ 魔法の例:「はい、分かりました。でも、今はちょっと宿題を終わらせたいから、あとで合流してもいいかな?」
この二つ、どちらが「一緒に遊びたい」と思えるでしょうか? 後者であれば、相手も「それなら待ってるね」と気持ちよく返事をしてくれるはずです。
「はい」は相手の心を開くカギ
語用論という学問では、言葉の「意味」だけでなく「どういう状況でどう使われるか」をとても大切にします。相手の言葉を一度「はい」で受け止めることは、「あなたの意見を尊重していますよ」というメッセージを送ることになります。これを「協調のルール」と呼びます。会話をスムーズに進めるための、一番大切なルールです。
明日、学校でこんな場面があったら試してみてください。
- 友達に「この問題、教えて!」と言われたら、「はい、いいよ!」とまずは言ってみる。
- 先生に「掃除当番、交代できる?」と聞かれたら、「はい」と一度受け止めてから、「今は重い荷物を持っているから、教室に置いてきてからでもいいですか?」と相談してみる。
- お母さんに「お手伝いして!」と言われたら、「はい!」と元気よく返事をしてから、「あと5分だけゲームを終わらせていい?」と聞いてみる。
「はい」のあとに続く言葉が、あなたの本当の気持ち
「はい」と言うことは、相手の言いなりになることではありません。自分の意見を言ってもいいのです。大切なのは、「まずは相手を認めること」です。
「はい」という言葉は、相手とのあいだにある心の壁を壊すハンマーのようなものです。壁が壊れれば、そこには道ができます。その道を通って、あなたの本当の気持ちを相手に届ければいいのです。
「はい」と言われて嫌な気分になる人はいません。むしろ、「この人は自分の話をちゃんと聞いてくれる」と安心します。安心できる相手には、誰も敵意を持ちません。そうやって、一人、また一人と味方を増やしていくことこそが、クラスで楽しく過ごすための「論理的な作戦」なのです。
明日、誰かに何かを言われたら、まずは深呼吸をして、心の中で「はい」とつぶやいてみてください。そして、口に出して「はい!」と明るく言ってみましょう。その一言が、あなたの学校生活を魔法のように変えてくれるはずです。