みんなの前で注意するのは「一番やってはいけないこと」
学校で、友達がまちがったことをしているのを見つけたとき、あなたならどうしますか?
たとえば、係の活動で友達が仕事を忘れていたり、休み時間に教室で走り回っていたりするとき。「ねえ、それダメだよ!」と、その場で大きな声で注意したくなるかもしれません。正義感が強いあなたなら、なおさらそう思うでしょう。
でも、ちょっと待ってください。その「正義の心」が、実はあなたに「敵」を作ってしまう原因になるかもしれません。
心理学には「公開処刑(こうかいしょけい)」という言葉に近い考え方があります。大勢の人が見ている前で恥をかかされると、人はその相手に対して「注意された内容」よりも「恥をかかされたことへの怒り」を強く感じてしまうのです。これは、誰にとっても同じです。大人だって、みんなの前で怒られたら、素直に「ごめんなさい」と言えなくなってしまいますよね。
相手を注意したいとき、一番大切なルールは「二人きりの時に言う」ことです。これだけで、あなたの周りから「敵」がいなくなり、逆に「信頼できるリーダー」としてみんなに見られるようになります。
なぜ「二人きり」だと素直になれるのか?
なぜ、二人きりで話すと相手は注意を聞き入れてくれるのでしょうか。ここには、人間の心に隠された「防衛本能(ぼうえいほんのう)」という仕組みが関係しています。
人は、大勢の人の前で注意されると、「自分はみんなからダメなやつだと思われたくない!」という気持ちが強く働きます。すると、心の中に「守りのバリア」を作ってしまいます。このバリアが張られると、どんなに正しいことを言われても、耳に入らなくなってしまうのです。それどころか、「この人は自分をバカにしようとしている!」と、あなたを敵だと感じてしまいます。
一方で、二人きりならどうでしょう。周りに誰もいないので、相手は「かっこ悪いところを見られないですむ」と安心します。安心すると、守りのバリアが消えて、あなたの言葉を素直に受け取れるようになります。
「二人きりで話す」ことは、相手を追い詰めるのではなく、「相手のプライドを守ってあげる」という、とても優しい思いやりなのです。
「二人きり」で伝えるための3つの魔法
では、具体的にどうやって二人きりの時間を作ればいいのでしょうか。明日から学校で使える、とっておきの作戦を紹介します。
1. 「ちょっといい?」と耳元でささやく
みんながいる場所で注意したくなったら、一度ぐっとこらえて、相手のところへ歩いていきましょう。そして、相手の耳元で小さく「ねえ、ちょっといい? あとで大事な話があるから、廊下まで来てくれる?」と声をかけます。
これだけで、周りの友達は「何の話だろう?」と気にしなくなりますし、注意された相手も「みんなに聞かれなくてよかった」とホッとするはずです。
2. 相手が一人になるタイミングを待つ
休み時間に友達と遊んでいるときや、給食の準備中など、相手が一人になった瞬間を狙うのもいい方法です。「さっきのことだけどさ…」と静かに話しかけてみてください。急いで注意しなくても、大抵のことは5分後でも大丈夫です。
3. 「二人きり」だからこそ言える「やさしい言葉」
二人きりになれたら、相手を責めるのではなく、あなたの気持ちを伝えてみましょう。ここが一番のポイントです。
- ×の言い方:「なんで係の仕事をしないの? みんなに迷惑だよ!」
- ○の言い方:「さっき係の仕事がまだ終わってないみたいだったから、ちょっと心配になっちゃって。何か手伝うことある?」
どうですか? 下の言い方なら、相手も「ごめん、忘れてた! ありがとう」と素直に言ってくれるはずです。同じ内容でも、伝え方一つで相手の反応は180度変わります。
「敵」を作らない人は、相手の「味方」になる
クラスには、いろんな考えを持った友達がいます。自分と違うことをしている人を見ると、つい正したくなることもあるでしょう。でも、本当に賢い人は、相手を言い負かす人ではありません。「相手が自分から変われるように、手助けをしてあげられる人」です。
二人きりで注意をすることは、相手を尊重するということです。あなたが相手を尊重すれば、相手も必ずあなたを尊重してくれるようになります。これが、人間関係のルールです。
明日、もし誰かが間違いをしていたら、大声を出したい気持ちをグッとこらえてみてください。そして、そっと相手の隣に行って、二人きりの時間を作ってみましょう。
「みんなの前では言わずに、自分だけのためにわざわざ時間をとってくれた」
その事実は、相手の心に深く残ります。そんなあなたの姿を見た周りの友達も、「この人は、誰に対してもやさしい人なんだな」と気づき、あなたを信頼するようになります。
「敵を作らない」ということは、誰にでもいい顔をすることではありません。「誰に対しても、その人のプライドを大切にしながら、正しい方向へ導いてあげられる人になる」ということなのです。
さあ、明日の学校では、どんな「二人きりの会話」をしてみますか? 小さな工夫が、あなたのクラスを、もっともっと居心地のいい場所に変えていくはずです。