小さな声でもハキハキと答える
学校で先生に名前をよばれたとき、あるいは係の活動で友達に「これ、手伝ってくれる?」と声をかけられたとき、あなたはどんなふうに返事をしていますか?
もしかして、「……はい」と、自分でも聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、下を向いて答えてはいませんか? もしそうなら、それはとてももったいないこと。実は、返事のしかたひとつで、まわりの人があなたに対して持つ「イメージ」は、ガラリと変わってしまうのです。
「敵を作らない」という魔法のスキルを身につけるための第一歩は、この「最初のひとこと」を大切にすることから始まります。
声の大きさよりも「はっきり」が大切です
「ハキハキと答える」というと、大きな声を出さなきゃいけないと考える人がいます。でも、ちがうんです。大きな声で叫ぶ必要はありません。教室のうしろまで響くような声でなくてもいいのです。
ここで大事なのは、「相手に届くように、言葉の形をしっかり作ること」です。
言葉の形を作るというのは、口をちゃんと動かして、ひとつひとつの音をはっきり発音するということです。「はい」と言うとき、口を少しだけ横にひろげて「ハ・イ」と音を分けるイメージを持つだけで、相手にはあなたの言葉が「届く」ようになります。
社会言語学という、言葉と人とのかかわりを研究する学問では、これを「コミュニケーションの協調(きょうちょう)」と呼びます。これは、相手が「今の言葉、なんだろう?」と悩まなくてすむように、相手のことを考えて言葉を投げるルールのようなものです。
なぜ「ハキハキ」が魔法になるのか
なぜ、ハキハキと答えるだけで「敵を作らない」ことができるのでしょうか。それには、相手の頭の中でおきている「心理的な仕組み」が関係しています。
言葉を投げかけるとき、相手はあなたの言葉を聞いて、一瞬で「この人は自分に対してどんな気持ちでいるのかな?」と判断しています。これを「語用論(ごようろん)」という分野では、「相手の意図を推測する」といいます。
もし、あなたがモゴモゴと小さな声で答えたら、相手はどう思うでしょうか?
- 「何か不満があるのかな?」
- 「自分と話すのが嫌なのかな?」
- 「自信がなさそうだな」
相手はこうやって、勝手に悪い想像をしてしまうかもしれません。本当はそんなつもりはなくても、伝わり方が悪いだけで、相手との間に「見えない壁」ができてしまうのです。
逆に、ハキハキと答えると、相手は「この人は自分に対してオープンな気持ちでいるんだな」と安心します。安心した相手は、あなたに対して「この人とは話しやすいな」「また話しかけてみよう」という気持ちになります。これが、敵を作らず、味方をふやすための最初の魔法なのです。
明日からできる「ハキハキ」の練習法
では、どうすれば自然とハキハキした返事ができるようになるのでしょうか。今日からすぐにできる、とっておきの練習法を教えますね。
1. 最初の「一音目」だけ、少しだけ強く
「はい」という言葉なら、「ハ」の音をほんの少しだけ、強く意識してみてください。「ハ」と口を開くときに、おへそのあたりに少し力を入れるイメージです。たったこれだけで、声にハリが生まれて、相手に「おっ、しっかりしているな」という印象をあたえることができます。
2. 目を「0.5秒」だけ合わせる
返事をするときに、相手の目や顔をチラッと見るだけで、言葉のパワーは倍になります。ずっと見つめ続ける必要はありません。返事をするその瞬間に、相手のほうを向くだけでいいのです。これだけで、あなたの言葉は「あなたから相手へ」まっすぐに届くようになります。
3. 「語尾」を飲み込まない
「はい……」と、言葉の終わりを消してしまう人が多いのですが、これはもったいない! 「はいっ!」と、最後をキリッと止めるように意識してみましょう。語尾をはっきりさせるだけで、あなたの言葉は相手の心にしっかりと届く「プレゼント」になります。
「敵を作らない」は「相手への思いやり」
ハキハキと答えることは、自分をよく見せるためのテクニックではありません。「あなたの言葉を、しっかり受け取りましたよ」という、相手へのやさしいメッセージなのです。
クラスの係活動で、だれかが「これやってくれる?」と聞いてきたとき、「はい!」とハキハキ答えてみてください。その瞬間、相手の表情がパッと明るくなるはずです。あなたがハキハキと答えることで、相手は「この人と協力すれば、楽しい活動ができそうだな」とワクワクするからです。
最初は少しはずかしいかもしれません。でも、だいじょうぶ。小さな声でもいいのです。口をしっかり動かして、言葉をていねいに届けること。それだけで、あなたのまわりには自然と「味方」が集まってくるようになります。
明日、学校に行ったら、先生に名前をよばれたとき、あるいは友達に話しかけられたとき、ぜひ試してみてください。いつもより少しだけ口を動かして、「はい!」と答える。その小さな勇気が、あなたの学校生活を、もっともっと楽しく、キラキラしたものに変えてくれるはずです。