第7章:自分の機嫌を自分でとる
好きな音楽を聴いて気分を切り替える
朝、起きたときから、なんだか気分がモヤモヤすることってありませんか?
「今日は登校班の集合時間に遅れそうになって焦った……」
「昨日の夜、お母さんに宿題を早くやりなさいって怒られて、まだちょっとムッとしている……」
そんなふうに、心がスッキリしないまま学校に行くと、どうなるでしょう。友達が何気なく言った「おはよう」のトーンがきつく聞こえてしまったり、給当番のときに「そこ、お肉の量が多いよ」と注意されただけで、「なんだよ、文句言わないでよ!」とカッとなって言い返してしまったり……。
本当はそんなこと言いたくなかったのに、自分の機嫌が悪いせいで、まわりの人までイヤな気持ちにさせてしまう。そして、家に帰ってきてから「あぁ、今日のぼく(わたし)、感じ悪かったな……」と一人で落ち込む。これって、とってももったいないし、悲しいことですよね。
でも、安心してください。人間の脳の仕組みを知って、ちょっとした「コツ」をつかむだけで、このモヤモヤした機嫌をパッと明るく変えることができるのです。その秘密が、今回のテーマである「音楽の魔法」です。
どうして音楽を聴くと、一瞬で元気になるの?
「好きな歌を聴くと、なんだかワクワクする!」
「アップテンポな曲を聴くと、体が勝手に動き出しちゃう!」
みなさんも、そんな経験がありませんか? これは気のせいでも、ただの思い込みでもありません。実は、脳科学(のうかがく:脳の働きを研究する科学)の視点から見ると、音楽には人間の心を強制的にスイッチしちゃうすごいパワーがあることが証明されているのです。
わたしたちの頭の中にある「脳」は、まわりの環境や、自分が考えていることにすごく影響されやすいというクセを持っています。イヤなことがあったときは、脳の中で「不安ホルモン」や「ストレスホルモン」という、気持ちをピリピリさせる物質がたくさん出てしまっています。この状態のとき、脳はまるで嵐の海のように大荒れしています。
ここで登場するのが、音楽の魔法です。
お気に入りの曲や、リズムが楽しい曲を耳から聴くと、その音の振動が脳の奥にある「感情をつかさどるエリア」に一瞬で届きます。すると、脳の中で「ドーパミン」という、うれしい気持ちや楽しい気持ちを作ってくれる特別な物質がフワッと分泌されるのです。ドーパミンが出ると、イライラやモヤモヤは小さくなり、脳の嵐がスーッと静まっていきます。
つまり音楽は、ボタンを1回ポチッと押すだけで、自分の脳のスイッチを「イヤなモード」から「ハッピーモード」に切り替えてくれる最強のリモコンなのです。
学校生活ですぐ使える!「音楽切り替え法」の具体例
「音楽がすごいのはわかったけど、学校にスマホや音楽プレイヤーは持って行けないよ?」
そう思った人も多いはずです。確かに、授業中に音楽を聴くことはできませんよね。でも、小学生のみなさんが「学校の限られた時間」でこの脳の仕組みを上手に使う方法はたくさんあります。具体的な場面を見ていきましょう。
パターン1:登校中の「脳内リピート再生」でクラスの主役になる朝をつくる
学校へ行くまでの道のりや、登校班で歩いている時間は、最高のチャンスです。
- やること: 家を出る前や靴を履くときに、自分が一番元気になる曲をスマホやテレビ、お父さん・お母さんのオーディオで1曲だけフルで聴く。
- さらに上級編: 音楽が聴けない通学路では、自分の頭の中(脳内)で、そのお気に入りの曲を大音量で流す!
「心の中で歌うなんて意味あるの?」と思うかもしれませんが、実は脳は、頭の中で音楽を再生するだけでも、実際に耳で聴いているときと同じようにドーパミンを出してくれることがわかっています。
お気に入りのメロディを頭の中でノリノリで流しながら登校してみてください。学校の門をくぐるころには、さっきまで家のなかで感じていたお母さんへのイライラもどこかへ消え去り、「今日も友達と楽しく遊ぶぞ!」というキラキラした笑顔で教室に入ることができます。その「感じのいい笑顔」で挨拶されたクラスメイトは、あなたに好印象を抱くこと間違いなしです。
パターン2:大なわとびや持久走の前、「緊張する脳」を音楽でほぐす
体育の時間に、大なわとびの連続跳びの順番が回ってきたときや、マラソン大会のスタート直前。「ドキドキして足が震える……」「失敗してクラスのみんなに迷惑をかけたらどうしよう……」と、胸がギュッと締めつけられるような緊張をすることはありませんか?
この「緊張している脳」も、音楽の力でやわらげることができます。
- やること: 体育の授業が始まる前の着替えの時間や、準備運動のすきま時間に、自分の心の中だけで「ここぞ!」という勝負曲を小さく口ずさむ、または頭の中でサビの部分を流します。
運動会の応援歌や、テレビで観たかっこいいヒーローのテーマソングなどがおすすめです。リズムに合わせて心臓のドキドキが「恐怖のドキドキ」から「ワクワクするドキドキ」に変わり、体がフッと軽くなります。リラックスした状態で本番に挑めるので、実力が思いっきり発揮できるようになります。
パターン3:帰りの会のモヤモヤをリセットして、おうちへ帰る
学校生活の終わり、帰りの会の時間です。今日の係の仕事でちょっと失敗して先生に注意されたり、仲良しの友達と休み時間に意見が合わなくて気まずい雰囲気になったり……。「なんだか今日は疲れたな……」と、どっと重い荷物を背負ったような気分で下校することってありませんか?
そのモヤモヤをそのまま家に持ち帰ると、お家の人に「ただいま!」と言われても、ついボソッと不機嫌な返事をしてしまい、家の中までギスギスしてしまいます。
- やること: 家に帰って玄関のドアを開ける前に、あるいは自分の部屋に入った瞬間に、大好きな音楽を1曲だけ思いっきり聴く時間を作ります。
もしおうちで音楽をかけるのが難しいときは、お風呂に入っているときに今日の気分にぴったりの歌を口ずさんでみてください。お湯の温かさと音楽のダブルの効果で、脳の疲れがドロドロと溶けていきます。「学校でのイヤなことは、学校の門の中に置いてきた!」と頭の中でスパッと切り替えて、笑顔でおうちの人に「ただいま!」と言えるようになります。
今日からできる!「マイ・パワーソング」を決めよう
音楽の魔法を使いこなすために、まずは準備をしましょう。今日、お家に帰ったらノートを開いて、次の3つの曲を選んでみてください。
- ① 朝、元気をチャージするための「目覚まし曲」(ノリがよくて、体が動き出すような曲)
- ② テストの前や緊張するときに心を落ち着かせる「勇気が出る曲」(背中を押してやさしく包み込んでくれるような曲)
- ③ イライラやモヤモヤを吹き飛ばす「スッキリ爽快曲」(思いっきりテンションが上がる曲)
この3曲を、あなたの「マイ・パワーソング(お守りの歌)」に認定するのです。
人間は、自分で自分の機嫌を直す方法を知っている人と、知らない人の間で、まわりの人からの見え方が大きく変わります。いつも不機嫌そうにしている人は、どんなに勉強ができても、運動ができても、まわりは「ちょっと話しかけにくいな……」と感じてしまいます。
反対に、たとえイヤなことがあっても、音楽の力を借りて上手に気持ちを切り替え、いつニコニコしている人は、教室のなかにいるだけで周りを明るくします。「あの子といるとなんだか楽しいな」「クラスがパッと華やかになるな」と、みんなから自然と好かれる「感じのいい人」になれるのです。
自分の機嫌をとるプロフェッショナルになることは、自分で自分の心を守る最強のスキルです。
さあ、今日の放課後は、どの曲を聴いてモヤモヤを吹き飛ばしますか? 明日からの学校生活がもっと楽しくなる音楽の魔法、ぜひあなたの日常にとり入れてみてくださいね。