悪口を言いたくなったら深呼吸する
学校で、友だちにイライラさせられたり、「なんだよそれ!」とムッとしたりすること、ありませんか?
たとえば、給食当番のときに、自分の係の仕事を友だちが忘れていて、自分がぜんぶやらなきゃいけなくなったとき。あるいは、ドッジボールでわざとじゃないのに強くボールを当てられて、「痛いな、下手くそだな!」と文句を言いたくなるとき。
そんなとき、心の中にモヤモヤした黒い雲が広がって、思わずきつい言葉や悪口が、のどまで出かかってしまうことってありますよね。「もう、お前となんか遊ばない!」とか「最悪!」とか。
でも、ちょっと待ってください。その言葉をそのまま口から出してしまったあと、どんな気持ちになりますか? すっきりするのはほんのひとしゅんかんで、あとから「あんなこと言わなきゃよかったな……」と、胸がチクチク痛むことはありませんか?
実は、口から出す言葉を変えるだけで、あなたのまわりの空気はガラリと変わり、クラスのみんなから「一緒にいるとなぜかホッとする、感じがいい人」になれるのです。
今日は、カッとなったときに使える、とっておきの魔法のルールをお伝えします。それは「悪口を言いたくなったら深呼吸する」というシンプルな方法です。
言葉には「見えない力」がある
「言葉はただの音でしょ? すぐに消えちゃうんだから、なにを言っても同じだよ」と思っていませんか?
実は、言葉にはとても強い力があります。言葉の専門家たちは、言葉を研究する学問の中で、「言葉は、ただ情報を伝えるだけじゃなくて、人間関係をつくる道具である」ということを発見しました。むずかしい言葉で「語用論(ごようろん)」と言ったりしますが、かんたんに言うと、「その言葉を使ったときに、まわりの人がどう感じるか、どんな空気になるか」ということです。
たとえば、友だちが新しいノートを学校に持ってきたとします。
- 「なんだそのダサいノート!」と言うと、その場の空気が一気に凍りついて、友だちは悲しい気持ちになりますよね。あなたを見る目も、すこし怖くなってしまうかもしれません。
- でも、「わあ、そのノート、かっこいいね! どこで買ったの?」と言うと、その場の空気がパッと明るくなって、友だちはニコニコ笑顔になります。
言葉は、まるで魔法のステッキのようです。使い方をまちがえると、まわりの人を傷つけて、自分もきらわれてしまいます。でも、使い方を工夫すると、みんなを笑顔にして、自分も大人気者になれるのです。
ネガティブな言葉、つまり悪口や文句は、自分にとっても相手にとっても、まったくいいことがありません。でも、人間ですから、イライラしてしまうことはありますよね。そんなとき、どうすればいいのでしょうか?
カッとしたときの「3秒ルール」
イライラしたときや、悪口を言いたくなったとき、脳の中では何が起きているでしょうか?
実は、頭に血がのぼっているとき、あなたの脳は「早く攻撃しなさい!」「文句を言い返しなさい!」と、動物の本能のままで命令を出しています。この状態のときに口を開くと、ろくな言葉が出てきません。
ここで登場するのが、今回の主役である「深呼吸」です。
むかっ! ときたら、その瞬間に言葉を出すのをぐっとガマンして、心の中で大きく息を吸い込みます。そして、ゆっくりと息をはき出します。これを3回やってみてください。
深呼吸がもたらす奇跡のメカニズム
深呼吸をすると、体にたくさんの酸素が入ってきます。すると、興奮していた脳が「あ、落ち着こう」と冷静さを取り戻します。この「すきま時間」を作ることで、カッとなって飛び出しそうになった悪口を、心の中でストップさせることができるのです。
これを学校の生活でどう使うのか、具体的な場面で見てみましょう。
学校生活で実践!ネガティブをポジティブに変える魔法
では、明日から学校で使える具体的なテクニックを練習してみましょう。イライラをポジティブな言葉に変えるには、ちょっとしたコツが必要です。
ケース1:掃除の時間、さぼっている班員を見たとき
ネガティブな言葉(言いたいこと):「サボるなよ! ちゃんとやれよ!」(←命令口調で、相手はカッとなってケンカになってしまいます)
深呼吸ステップ:むかっ!ときたら、まず鼻から息を大きく吸って、口からふーっとはき出します(心の中で3つ数えます)。
ポジティブな変換:「ねえ、ここまだホコリが残ってるから、一緒にきれいにていねいにやらない?」
結果:相手も「あ、ごめん、手伝うね」と素直になり、掃除の時間が気持ちよく終わります。
ケース2:グループ学習で、意見が合わなくてイライラしたとき
ネガティブな言葉(言いたいこと):「そんなの絶対ダメに決まってるじゃん! センスないよ!」(←相手の心を深く傷つけてしまいます)
深呼吸ステップ:心の中で「すー、はー」と深呼吸をして、一度落ち着きます。
ポジティブな変換:「その意見も面白いね! ちなみに、こっちのやり方だとこういう良いところもあるんだけど、どう思う?」
結果:自分の意見を否定されなかったので、相手もあなたの意見を聞き入れやすくなります。クラスの話し合いがスムーズに進みます。
ケース3:廊下でぶつかられて、教科書を落としてしまったとき
ネガティブな言葉(言いたいこと):「前見て歩けよ! なんなんだよ!」(←相手も「なんだと!」と言い返してきて、トラブルが大きくなります)
深呼吸ステップ:深呼吸をして、あふれ出そうな怒りのエネルギーをしずめます。
ポジティブな変換:「っとと……。あ、大丈夫? お互い気をつけようね」
結果:ぶつかってきた相手は「ごめんね、わざとじゃないんだ……」と申し訳なさを感じると同時に、あなたの大人な対応に心の中で「この人、かっこいいな」と尊敬するようになります。
ポジティブな言葉が自分をかえる
言葉の専門家の研究によると、私たちが発した言葉は、実は一番近くで聞いています。それは、ほかならぬ「自分自身の耳」です。
いつも悪口や文句ばかり言っている人は、自分の耳で毎日ネガティブな言葉を聞き続けることになります。そうすると、脳が「自分は不機嫌な人間だ」「世界は嫌なことばかりだ」と思い込んでしまい、どんどん心がすさんでいってしまいます。
逆に、深呼吸をはさんで、優しく思いやりのある言葉や、前向きな言葉を選ぶようにしていると、自分の耳もそのポジティブな言葉を聞きます。
「自分は、周りの人を笑顔にできる優しい人間なんだ」
そう脳が思い込むことで、表情が明るくなり、姿勢がシャンとして、自然と「感じがいい人」のオーラがまとうようになっていくのです。
最初は、ムッとしたときに深呼吸を忘れてしまうこともあるかもしれません。「あ、また言いそうになっちゃった!」と気づくだけでも、大きな一歩です。気づいたら、その場ですぐに深呼吸をすればいいのです。
明日、学校でちょっぴりイライラすることがあったら、ぜひ思い出してください。
「まずは、深呼吸。そして、空気を明るくする言葉を選ぼう」
その小さなひと呼吸が、あなたのクラスを、そしてあなた自身の毎日を、キラキラと輝く楽しいものに変えてくれる最高の魔法なのです。