給食の配膳で先に譲る
「やったー!今日の給食は大すきなから揚げだ!」
チャイムが鳴って、待ちに待った給食の時間。みんなはワクワクしながら、自分の食器をもって配膳台(はいぜんだい)にむかいます。でも、ここで問題です。お目当てのから揚げの前に、クラスのたくさんの人が一斉に集まりました。
「ぼくが先にならんだのに!」
「ちょっと、おさないでよ!」
こんなふうに、自分が一番に食べたい気持ちが強すぎて、ついギスギスしてしまったことはありませんか?せっかくの楽しい給食の時間なのに、これでは少しさみしい気持ちになってしまいますよね。
でも、ここで「どうぞ」と、一歩だけゆずることができるとしたらどうでしょう?実は、この「ゆずる」という小さな行動こそが、クラスでみんなから愛される「感じがいい人」になるための、とっておきの魔法なのです。
「ゆずる」と、なぜかみんなから好かれる理由
「でもさ、ゆずったら、自分が損をしちゃうんじゃないの?」
そんなふうに思うかもしれません。大すきなおかずがなくなったらどうしよう、って心配になりますよね。だけど、行動経済学(こうどうけいざいがく)という、人間の心を科学する学問をのぞいてみると、実は「ゆずる人」のほうが、長い目で見るとずっと得をしていることがわかるのです。
行動経済学でわかる「お返しの心理」
行動経済学の中には、人間のもっている面白いクセを研究する分野があります。その中に「互酬性(ごしゅうせい)」という、ちょっとむずかしい名前のルールがあります。
これは一言でいうと、「人に何かをしてもらうと、『自分もお返しをしなきゃ!』と自然に思ってしまう人間の心グセ」のことです。
たとえば、あなたが友達に消しゴムを貸してあげたとします。そうすると、その友達は「今度はぼくも、何かしてあげたいな」と思いますよね。これと同じことが、給食の配膳台の前でも起きるのです。
- あなたが「先にどうぞ」と順番をゆずる
- ゆずってもらった友達は、「うれしいな」「ありがとう!」と思う
- その友達は、心の中で「今度何かあったら、この人にお返しをしよう」「こんどはこっちが手伝ってあげよう」と思う
- 結果として、クラスのみんながあなたに優しくしてくれるようになる
つまり、その瞬間のから揚げを一つゆずることで、あなたはクラス全体から「優しい人だな」「信頼できる人だな」という、目に見えない大きなプレゼントをもらっているようなものなのです。これが、行動経済学の力を使った「好かれる仕組み」です。
明日からできる!「配膳のときの一歩ゆずり」実践テクニック
「よし、じゃあ明日からやってみよう!」と思っても、いざ給食の時間が始まると、おなかがすいていて忘れちゃうかもしれません。そこで、明日からすぐにできる具体的な3つのステップを紹介します。
ステップ1:あえて「一番うしろ」に並んでみる余裕をもつ
いつもは「急いで並ばなきゃ!」と走っているところを、今日は一呼吸(いっこきゅう)おいてみましょう。班(はん)のメンバーがみんな並び終わるのを待ってから、一番うしろにスーッと並んでみるのです。
これだけで、あなたのまわりには「落ち着いていて、大人っぽい雰囲気」がただよいます。あせっていない姿そのものが、まわりの人にかっこいい印象をあたえるのです。
ステップ2:「どうぞ」の笑顔とセットで声をかける
もし、自分と友達が同時に配膳台の前に着いて、お皿を置くタイミングが重なったらどうしますか?そこで「あ、どうぞ」と、相手に道をあけてみましょう。
このときのポイントは、少しだけニコッと笑うことです。ただ「どうぞ」と言うだけでなく、笑顔をプラスすることで、あなたの優しさが何倍にもなって相手に伝わります。言われた相手は、思わず胸がキュンとするくらいうれしくなりますよ。
ステップ3:係の人の大変さに気づいてあげる
給食の配膳では、給食係の人が一生けんめいお盆(おぼん)を配っていますよね。「重いのに、いつもありがとう」「スープ、こぼさないですごいね」そんなふうに、係の人が動きやすいようにスペースをあけてあげるのも、立派な「ゆずる心」です。
自分以外の人のことを考えられる人は、クラスの中で自然と光って見えます。
ゆずったあとに待っている、ステキな未来
給食の配膳台の前で、友達に順番をゆずる。たったそれだけの、ほんの数秒の出来事です。
でも、その小さな行動を続けるうちに、あなたのまわりの空気が少しずつ変わり始めます。あなたが困ったときには、前に順番をゆずってあげた友達が、「今度はぼくが手伝うよ!」と真っ先にかけつけてくれるようになるからです。
「感じがいい人」とは、決してがんばって目立っている人ではありません。まわりの人が気持ちよく過ごせるように、そっと心を配れる人のことです。
明日の給食の時間、チャイムが鳴ったら、まずは深呼吸。そして、大すきなおかずの前にいる友達に、心の中で「どうぞ」とつぶやきながら、優しく微笑んでみましょう。
その一歩から、あなたの学校生活はもっともっと楽しく、あたたかいものに変わっていくはずです。