休み時間のチャイムが鳴ったとき、きみの心はどんなふうに弾むだろう?
「やったー!ドッジボールだ!」
「今日は絶対に校庭のブランコをゲットするぞ!」
待ちにまった休み時間。チャイムが鳴った瞬間に、カバンから飛び出して運動場に走っていく。あのワクワクする時間は、学校生活のなかでも最高のひとときですよね。
でも、ここでちょっとだけ想像してみてください。
もしも、クラスの全員が「自分がやりたい遊びだけを、絶対にゆずらない!」と言ってしまったら、どうなるでしょうか?
ある子は「サッカーがしたい!」とゴールを陣取り、別の子は「今日は絶対にドッジボール!」とボールを抱え込み、また別の子は「教室でみんなでカードゲームをするんだ」と机をくっつける。みんなが自分の意見ばかりを押し通そうとしたら、運動場は大混乱。せっかくの楽しい休み時間が、ケンカや気まずい空気で台無しになってしまいます。
「みんなで楽しく遊びたいだけなのに、どうしてうまくいかないんだろう?」
そんなふうに悩んだことはありませんか?
実は、クラスみんなが笑顔になれる休み時間を作るためには、ちょっとした「心のテクニック」があるのです。それが、今回のテーマである「集団の中で『譲る』心を持つ」ということです。
「えっ、ゆずるの?それって、自分がガマンしなきゃいけないってこと?」
いいえ、まったく違います!行動経済学という学問の力を借りると、「上手にゆずる人」は、まわりから好かれるだけでなく、結果的に自分がいちばん楽しい時間を過ごせるということが、科学的に証明されているのです。
さあ、明日からの休み時間がもっと待ち遠しくなる「みんなで遊ぶための魔法のルール」を一緒に見ていきましょう!
行動経済学の秘密!「お互いさま」の心理作戦
ここで少し、賢い大人たちが研究している「行動経済学(こうどうけいざいがく)」という面白いお話をします。
「経済学」なんて聞くと難しそうですが、要するに「人間の心と行動のクセを研究する学問」です。この行動経済学の中に、人間には「恩返し(おんがえし)のバトンをまわしたくなる生き物である」という面白い法則があります。
人間の心には、誰かに親切にされたり、自分の意見をゆずってもらったりすると、「自分も何かお返しをしなくちゃ!」とムズムズする強力なパワーが備わっています。これを専門用語で「返報性(へんぽうせい)の原理」と呼びます。
たとえば、給食の時間に、ともだちが「これ、半分こしよう!」と自分の好きなデザートをわけてくれたとします。すると、きみは「今度、ぼくの消しゴム貸してあげようかな」「次の掃除、あの人のぶんもほうきをかけようかな」と思いますよね。これこそが返報性のパワーです。
これを休み時間の遊びに当てはめてみましょう。
「ゆずる人」は、まわりから愛される
クラスのリーダー的な存在の子や、みんなから「感じがいいな」と好かれている子は、実は無意識にこの行動経済学のパワーを使っています。
例えば、こんな場面を想像してください。
- 月曜日の休み時間:Aくんが「今日はみんなのやりたい鬼ごっこに合わせるよ」と、自分のやりたかったゲームをグッとこらえてゆずりました。
- 火曜日の休み時間:それを見た周りの友達は、「昨日はAくんが合わせてくれたから、今日はAくんがやりたいドッジボールをやろうよ!」と声をかけました。
Aくんは「ゆずった損」をするどころか、みんなから「次はAくんの好きなことやろう!」と声をかけてもらえる、最高のポジションを手に入れました。これが、集団の中でゆずる心を持つことの最大の魔法です。
逆に、「絶対にオレの言うとおりにする!」と自分の意見ばかりを通そうとする子は、そのときは自分のやりたいことができるかもしれませんが、周りの友達は「あの人とは遊ぶと疲れるな……」と感じてしまい、だんだん誘われなくなってしまいます。
「ゆずる」ということは、自分を引っ込めてガマンすることではありません。「みんなと一緒に、もっと大きな楽しい未来を作るための作戦」なのです。
クラスの遊びを決める日の「3つのステップ」
では、具体的にどうすれば、休み時間の遊びをみんなで楽しくスムーズに決められるのでしょうか? 明日からすぐに使える「3つのステップ」を紹介します。
ステップ1:最初の5分は「聞き上手」に徹する
チャイムが鳴って、みんながワイワイと集まったとき。まずは、自分の「これがやりたい!」という気持ちを少しだけお休みさせて、まわりの声に耳を傾けてみましょう。
「今日は何して遊ぶ?」
そう聞かれたら、まずは友達がどんなことを言っているか、よく聞いてみます。「ドッジボールがいい」「いや、今日は図書館に行きたいな」「中庭で日向ぼっこしたい」など、いろいろな意見が出てきますよね。
ここで大切なのは、最初に否定しないことです。「えー、それつまんない」と言った瞬間に、相手の心は閉ざされてしまいます。まずは「みんな、いろんなやりたいことがあるんだな」と受け止めることが、感じのいい人への第一歩です。
ステップ2:「多数決」を優しく使いこなす
みんなの意見が分かれてしまったとき、よく「じゃあ、多数決で決めよう!」となりますよね。でも、多数決にはちょっとした落とし穴があります。
それは、「負けた側のグループが、面白くない気持ちになってしまうこと」です。
ここで「ゆずる心」を発揮します。もし自分の意見が多数決で負けてしまったとき、こんなふうに言えたらどうでしょう?
「今回はドッジボールに負けちゃったけど、みんなが決めたならそれに乗るよ!そのかわり、キーパーがんばるね!」
この一言言えるだけで、クラス全体の空気がパッと明るくなります。「負けたのに、そんなふうに言ってくれるなんてカッコいいな!」と、周りの友達はあなたに絶大な信頼を寄せるようになります。
そして、次に自分の意見を通したいときが来たとき、みんなは真っ先にあなたの味方になってくれるはずです。
ステップ3:「次のお楽しみ」を約束する
どうしても今日は自分のやりたい遊びをゆずれない!という日もあるでしょう。人間ですから、どうしても譲れないこだわりがある日だってあります。
そんなときは、強引に押し通すのではなく、「タイムスケジュール(時間割)の工夫」を提案してみましょう。
- 「今日の前半の10分はみんなのやりたい鬼ごっこをして、後半の10分だけぼくのやりたいカードゲームに付き合ってくれない?」
- 「今日はみんなの意見にするから、明日の長休みはぼくのやりたい遊びでスタートしよう!」
このように、「今のゆずり」と「未来の楽しみ」をセットにして提案することで、誰もが納得できる「ウィン・ウィン(みんなが得をする)の関係」を作ることができます。これは、大人顔負けの素晴らしい交渉術です。
家やお手伝いでも使える!「ゆずる心」の応用編
この「集団の中でゆずる心」は、学校の休み時間だけでなく、家の中や家族との生活でも大活躍します。学校でできるようになったら、ぜひお家でも試してみましょう。
テレビのチャンネル権争いをスマートに解決する
夕方、リビングのテレビを見る時間。「どうしてもアニメが見たい!」と、「ニュースが見たいお父さん」や「ドラマが見たいお母さん(お兄ちゃん、お姉ちゃん)」の間で、リモコンの取り合いになることはありませんか?
そんなとき、「絶対にぼくが見るんだ!」と怒ったり泣いたりするのではなく、行動経済学の作戦を使ってみましょう。
「最初の20分はお父さんのニュースを見るから、そのあとのお気に入りのアニメの時間だけ、チャンネルをゆずってくれない?」
または、
「今日はみんなが見たい番組に合わせるよ。代わりにおやつのケーキは一番大きいのをもらっちゃおうかな!」と笑顔で言ってみる。
家族という小さな集団の中でも、「ゆずる余裕」を見せる子供は、お父さんやお母さんから「うちの子、いつの間にかすごくお兄ちゃん(お姉ちゃん)になったな」と感心されます。家族みんなの笑顔が増えると、家の中の空気もぐっと心地よくなります。
明日からできる!きみのための「感じがいい人」チェックリスト
最後に、明日からの学校生活で「ゆずる心」をピカピカに光らせるためのチェックリストをプレゼントします。ノートの切れはしに書いて、筆箱に入れておいてもいいですね。
- 休み時間の初めの一言:「今日は何して遊ぶ?」と、まず友達の意見を聞いてみたかな?
- 意見が分かれたとき:「今回はあっちに合わせようかな」と、笑顔でゆずる選択ができたかな?
- ゆずったあとの行動:負けた遊びでも、途中でくさらずに全力で楽しめたかな?
- 未来の約束:「次はこれをしようね」と、みんながワクワクする次の楽しみを提案できたかな?
「ゆずる」ということは、負けることでも、我慢して損をすることでもありません。
それは、「クラスの中で一番信頼されて、みんなの中心でニコニコ笑っていられる魔法の切符」を手に入れることです。
明日、学校のチャイムが鳴ったとき。グラウンドや教室の真ん中で、まずは深呼吸をして、周りの友達を見渡してみてください。
「今日は、どんなふうにみんなと楽しい時間を作ろうか?」
その優しい笑顔とゆずる心があれば、きみの周りには自然とたくさんの友達が集まり、最高の笑顔があふれる最高の休み時間が待っているはずです。さあ、明日も学校で、素敵な魔法をたくさん使ってみましょう!