感謝の気持ちをその日のうちに伝える
きょうの放課後、こんなことありませんでしたか?
黒板消しをはたいているとき、近くの席の友達が「手伝おうか?」と言って、一緒に窓のサンをふいてくれたこと。あるいは、給食当番のときに、重いスープの缶を「よいしょ」と運んでいたら、後ろの人がドアをそっと開けておいてくれたこと。
そんなとき、みなさんはどうしていますか?
「あ、ありがとう」と、その場では言えたかもしれません。でも、家に帰るころには、すっかり忘れてしまっていませんか?
実は、人に好かれる「感じがいい人」は、その場だけの「ありがとう」で終わりません。「その日のうち」にもう一度、感謝の気持ちを相手に届けているのです。
「えっ、一度言ったのに、もう一回言うの? なんか恥ずかしいな……」と思ったそこのあなた。大丈夫です。この小さなひと手間で、あなたのクラスでの印象は劇的に変わり、まわりの人から「一緒にいると温かい気持ちになれる素敵な人だな」と思われるようになります。
なぜ、「その日のうち」だと魔法の効果が跳ね上がるのか?
ここで少し、ふしぎな話をします。実は、世界中のいろいろな国や地域の文化を研究する「文化人類学(ぶんかじんるいがく)」という学問があるのですが、そこではこんなことが分かっています。
人間は昔から、グループで助け合って生きる生き物です。誰かに親切にされたら、「お返しをしなければいけない」という強い気持ち(これを専門用語で「返報性(へんぽうせい)」と言います)が、人間の心には生まれつき備わっています。
例えば、道ですれ違った人に「おはよう!」と元気よくあいさつされたら、なんとなく自分も「おはよう!」と言い返したくなりますよね。あれと同じです。
「お返しのバトン」を今日のうちにつなごう
文化人類学では、人と人とのつながりは「贈り物(プレゼント)」のやり取りでできていると考えます。ここでいう「贈り物」は、物だけではありません。「親切にしてもらった」「助けてもらった」という行動も、目に見えない立派な贈り物です。
人から贈り物をもらったとき、その日のうちに「あれ、すごくうれしかったよ。ありがとう!」と再び気持ちを伝えると、相手はどう思うでしょうか?
- 「あ、ぼくが手伝ったこと、ちゃんと覚えていてくれたんだ!」
- 「そんなふうに喜んでくれるなんて、親切にして本当によかったな」
このように、相手の心の中に「あたたかい気持ちのキャッチボール」が完成します。時間がたてばたつほど、その記憶はうすれてしまいます。だからこそ、その日のうちに、太陽が沈む前にもう一度「ありがとう」を伝えることが大切なのです。
明日からすぐできる!「感謝をその日につなぐ」3つのテクニック
「でも、どうやってその日のうちにもう一度言えばいいの?」と迷うあなたのために、学校生活ですぐに使える具体的な方法を3つ紹介します。どれもむずかしいことではありません。明日からさっそく試してみましょう。
1. 帰りの会の直前、「あのときはね」作戦
学校が終わり、帰りの会が始まる前のちょっとしたスキマ時間がありますよね。荷物をランドセルにつめ終わったあと、今日親切にしてくれた友達のところへ、ちょっとだけ歩いていってみましょう。
【こんなふうに言ってみよう】
「ねえ、今日のそうじのとき、手伝ってくれて本当に助かったよ。ありがとう!」
朝や昼休みではなく、「今日という一日の終わり」に言われるのがポイントです。一日のしめくくりに「ありがとう」と言われると、相手の心には「今日はいい日だったな」というハッピーな気持ちが強く残ります。
2. ノートの端っこや付箋(ふせん)の「ひそやかメモ」作戦
直接口に出して言うのは、どうしても恥ずかしい……というシャイな人のための作戦です。学校で使う連絡帳や、ちょっとしたメモ用紙、あるいは大人気の可愛い付箋を使ってみましょう。
【こんなふうに書いてみよう】
「今日のこくごの音読、いっしょに練習してくれてありがとう!すごく心強かったよ」と書いて、教科書の間にはさんであげたり、机の上にそっと置いておいたりします。
言葉だけではなく、文字として形に残るものは、もらった相手にとって一生の宝物になることもあります。机の引き出しからこのメモが出てきたとき、相手はきっと笑顔になります。
3. 家のお手伝いバージョン!「夜のありがとう」作戦
学校だけではなく、お家の中でもこの魔法は使えます。今日はお母さんやお父さん、おじいちゃんやおばあちゃんに、学校とは違う「その日のうちのありがとう」を伝えてみましょう。
【こんなふうに言ってみよう】
夜、テレビを見ているときや、寝る前のお布団に入る前に、「お母さん、今日ぼくの好きなハンバーグを作ってくれてありがとう。すごくおいしかったよ」と伝えます。
おうちの人も、毎日ごはんを作ったり、洗濯をしたりするのに大忙しです。子供からの「その日のうちのありがとう」を聞くだけで、「あぁ、今日もがんばってよかったな」と、一日の疲れが吹き飛んでしまうのです。
「ありがとう」の連鎖が、クラスの空気を変える
感謝の気持ちをその日のうちに伝える習慣が身につくと、あなたのまわりの空気がフワッと明るくなります。
あなたが誰かに「あのときはありがとう」と伝えると、言われた相手はとてもうれしい気持ちになります。すると、その人はまた別の誰かに優しくしたくなります。文化人類学の世界では、これを「恩送り(おんおくり)」と呼びます。自分がもらった親切や感謝を、次の人にバトンタッチしていくことです。
クラスのなかで、この「ありがとうのバトン」がどんどん回っていくとどうなるでしょうか?
意地悪をする人が減り、みんなが安心して過ごせる、笑顔のあふれる最高のクラスができあがります。その中心にいるのは、特別な才能を持った人ではありません。今日から「その日のうちに感謝を伝える」ことを始めた、あなた自身です。
さあ、今日の放課後、あるいは今日のお家で、誰に「あのときのありがとう」を伝えますか?
小さな一言が、あなたとまわりの人を笑顔にする最高の魔法です。明日から、さっそくやってみましょう!