相手が話しているときは最後まで聞く
「ねえねえ、昨日テレビでね……」
あなたが一生懸命にお話をしようとしたとき、となりの友達が「あ、それ知ってる! ぼくも見たよ。それでさ、ぼくの場合はね……」と、あなたの言葉をさえぎって自分の話を始めてしまったら、どんな気持ちになりますか?
「まだ最後まで話していないのに!」「ぼくの話、つまらなかったのかな?」と、なんだかモヤモヤしたり、悲しくなったりしませんか。実は、この「話をさえぎる」という何気ない行動が、クラスの中に「見えない敵」を作ってしまう大きな原因なのです。
第2章では、あなたがクラスの誰からも信頼され、「この人と話すと安心するな」と思われる「聞き上手のヒーロー」になるための魔法を伝授します。その第一歩が、「相手の話を最後まで、一文字も残さず聞き切る」という魔法です。
「最後まで聞く」ことが、なぜ魔法になるの?
心理学の世界には、「自己肯定感(じここうていかん)」という言葉があります。これは簡単に言うと、「自分はここにいていいんだ」「自分のことを大切に思ってもらえているんだ」と感じる心のエネルギーのことです。
誰かが自分の話を最後までじっくり聞いてくれるとき、私たちの心の中では、このエネルギーがムクムクとわいてきます。「自分の話に価値があるんだ」「この人は自分を認めてくれているんだ」と、脳が幸せを感じるのです。これを心理学では「承認欲求(しょうにんよっきゅう)が満たされる」と言います。
反対に、話を途中で取られてしまうと、相手は「自分は大切にされていない」と心のどこかで感じてしまいます。これが積み重なると、相手はあなたに対して「この人は自分のことばかりで、ぼくのことを考えてくれない」という苦手意識を持ち始めます。これが「敵」が生まれる瞬間です。
つまり、話を最後まで聞くということは、相手の心の風船に、あたたかい空気を送り続けてあげることと同じなのです。最後まで聞き切るだけで、相手はあなたのことを「最高の味方」だと認めてくれるようになります。
「話したい!」という自分の中の怪獣をなだめよう
でも、相手の話を聞くのって、実はとっても難しいことですよね。相手が自分の好きなゲームの話をしていたら、「あ、その裏技知ってる! 言いたい!」とウズウズしてしまいます。面白い話を聞けば、「もっと面白い話を知ってるよ!」と割り込みたくなります。
あなたの心の中には、「ぼくの話を聞いて! 怪獣」が住んでいます。この怪獣は、相手の話を聞いている途中でも、隙(すき)あらば飛び出そうと暴れます。この怪獣をなだめるのが、聞き上手の修行です。
コツは、相手が話し始めたら、心の中でこうつぶやくことです。
「今は、この子の宝箱を開けている時間だ」
友達の話は、その子の心の中にある「宝物」です。途中で口をはさむのは、友達が宝箱から宝物を取り出している最中に、横から手をつっこんでかき回すようなもの。最後まで宝物を見せてもらうまで、じっと待ってみましょう。全部出し切ったあとの友達の顔は、きっと満足感でキラキラしているはずですよ。
明日から使える!「最後まで聞き切る」3つのテクニック
「最後まで聞く」といっても、ただ黙っていればいいわけではありません。相手が「ああ、しっかり聞いてもらえているな」と安心できる、具体的な方法を紹介します。
- 「3秒待つ」の術
相手の話が終わったかな? と思っても、すぐに口を開いてはいけません。心の中で「1、2、3」と数えてみましょう。相手は、一度言葉が止まっても、実はそのあとに「……それでね、本当はこう思ったんだ」と、一番大切な本音を話し始めることが多いからです。この3秒が、相手の深い信頼を勝ち取るカギになります。 - 「うなずき」の魔法
話を聞いている間、首を縦に小さく振ってみましょう。「うん、うん」「へえー!」「そうなんだ」と、声に出してもいいですね。心理学ではこれを「バックチャネル」と呼びます。これがあるだけで、話し手は「この人はぼくの味方だ!」と確信し、安心して最後まで話すことができます。 - 「おウム返し」の術
相手が「昨日、公園でカエルを見つけたんだ」と言ったら、「カエルを見つけたんだね!」と同じ言葉を返してあげましょう。これを心理学で「ミラーリング」と言います。鏡のように相手の言葉を返すことで、「あなたの言葉をちゃんと受け取ったよ」というサインになります。
こんな場面でやってみよう!学校生活の具体例
学校では、毎日たくさんの「話すチャンス」があります。そこでこの魔法を使ってみると、驚くほど友達関係がスムーズになりますよ。
① 係の仕事やグループ学習で
「ポスターの色、何色にする?」と相談しているとき。誰かが「青がいいと思うな、理由はね……」と言いかけたとき、「えー、赤がいいよ!」とさえぎっていませんか?
まずは「青がいいんだね。理由は?」と最後まで聞いてみましょう。そのあとに「青もいいね。赤も目立つと思うんだけど、どうかな?」とつなげれば、意見が違ってもケンカにはなりません。「一度受け入れてもらった」という安心感が、話し合いを平和にするのです。
② 休み時間の自由帳やゲームの話
友達が書いた絵や、クリアしたステージの話をしているとき。「それ、ぼくもできるよ」と言いたくなるのをグッとこらえて、「へえ、ここはどんな工夫をしたの?」と質問してみましょう。自分のこだわりを最後まで話せた友達は、あなたを「一番の理解者」だと感じるようになります。
③ お家でのお手伝いや報告
お母さんやお父さんに学校の出来事を話すときも同じです。大人が忙しそうにしているときこそ、「あのね、今日ね……」と話し始めたら、相手が「へえ、そうなんだ」と反応してくれるまで、ゆっくり待ってみる。逆に、お母さんが「今日は仕事で大変だったの」とお話を始めたら、最後まで聞いて「大変だったんだね」と言ってみてください。家族の間でも、この魔法は最強の効果を発揮します。
「聞き上手」は、クラスのリーダーになれる
想像してみてください。クラスの中で、誰かが話し始めるといつも最後までニコニコして聞いてくれる人。自分の意見を押し付けず、まずはみんなの考えを「うんうん」と受け止めてくれる人。
そんな人が困っていたら、みんな「助けてあげたい!」と思いませんか?
「敵を作らない」ということは、周りを「味方ばかりにする」ということです。最後まで話を聞いてくれるあなたの周りには、自然と人が集まってきます。あなたが何かを言いたいとき、今度はみんなが「あの人の話なら聞こう」と耳を傾けてくれるようになります。これを心理学では「返報性(へんぽうせい)の法則」と言います。自分がしたことは、相手からも返ってくるという法則です。
明日、学校に行ったら、まずは誰か一人の話を「一文字も漏らさず、最後まで聞くこと」を目標にしてみてください。友達が話し終わったあとに見せる、ホッとしたような、うれしそうな笑顔。それが、あなたが魔法を成功させた証拠です。
相手の話を最後まで聞く。たったそれだけのことで、あなたの学校生活は、今日よりもずっとキラキラしたものに変わっていくはずですよ。