「でも」と言いそうになったら「そうだね」と言い換える
休み時間に友達と話しているとき、係の仕事で話し合っているとき、こんな経験はありませんか?
友達が「今日の放課後、ドッジボールしようよ!」と言ったとき、あなたは心の中で「えー、今日は鬼ごっこがしたいな」と思ったとします。そのとき、ついついこんな風に言っていませんか?
「でも、今日は鬼ごっこの気分なんだよね」
実は、この「でも」という、たった2文字の言葉。これが、自分では気づかないうちに友達との間に小さな壁をつくり、ときには相手を「敵」に変えてしまう「キケンな言葉のトラップ」なのです。
今日は、この「でも」を「そうだね」に変えるだけで、クラスのみんなから「この人と話すと楽しい!」「また一緒に話し合いたい!」と思われるようになる、とっておきの魔法をお教えします。
どうして「でも」と言うと、友達の心がはなれてしまうの?
「えっ? ただ自分の意見を言っただけなのに、どうしてダメなの?」と思うかもしれませんね。ここで、ことばの専門家たちが研究している「語用論(ごようろん)」という、とてもおもしろい考え方を紹介しましょう。
「語用論」というのは、むずかしい名前がついていますが、要するに「そのことばを使ったとき、相手がどんな気持ちになるか」を研究する学問です。
ことばには、辞書に書いてある「意味」のほかに、相手の心に届く「気もちの矢印」があります。
たとえば、「でも」という言葉。辞書で見ると「前のことばと反対のことを言うときにつかう」と書いてあります。しかし、「語用論」の目線で見てみると、「でも」という言葉が出た瞬間に、相手の脳にはこんな合図がとどいてしまうのです。
『あなたの言ったことは、まちがいです! ブブーッ!』
恐ろしいことに、あなたがどれだけやさしい声で「でもね…」と言ったとしても、相手の心は「攻撃された!」と感じて、ガードを固めてしまいます。自分を否定されたと感じた友達は、悲しい気持ちになったり、いじわるな気持ちになったりして、あなたと壁を作ってしまうのです。
これが、学校で知らないうちに「敵」ができてしまう大きな原因の一つなのです。
言葉の専門家が教える「心のガード」をさげる魔法
では、どうすれば自分の意見を伝えつつ、友達と仲良しでいられるのでしょうか?
ここで登場するのが、魔法の言葉「そうだね」です。
語用論の世界では、会話をするときに「まず相手の言葉を受けとめること」が、お互いの信頼関係をつくる一番の近道だと言われています。
「そうだね」と言うことは、「あなたの意見に100%さんせいします!」という意味ではありません。「あなたがそう思ったことを、私はちゃんと受けとめたよ」という『合格サイン』を相手にあげることなのです。
相手は「合格サイン」をもらうと、心がほっとして、ガードをふっと下げます。心のガードが下がったあとなら、あなたが何を言っても、素直に耳を傾けてくれるようになるのです。
クラスのよくある場面で大実験!ビフォー&アフター
学校生活のいろいろな場面で、「でも」を「そうだね」に変えるとどうなるか、比べてみましょう!
場面1:係の仕事(給食係の話し合い)
給食の配膳の順番について、友達のたかし君が意見を言いました。
たかし君:「今日から、パンを配る人とスープを配る人を交代しない?」
【×「でも」を使ったざんねんなパターン】
あなた:「でも、昨日の話し合いで今週はこのままで行こうって決めたじゃん。」
たかし君:「(ムッとして)……なんだよ、ちょっと提案しただけなのにさ。」
→たかし君は自分の提案をバッサリ斬られた気がして、不機嫌になってしまいました。
【〇「そうだね」を使った魔法のパターン】
あなた:「そうだね! 順番を交代したら、みんなが色んな仕事を経験できて楽しそうだね。そしてね、昨日の話し合いで今週はこのまま行こうって決めたから、来週から交代してみるのはどうかな?」
たかし君:「あ、なるほど! 来週からにしようか!」
→たかし君は自分の意見を「いいアイデアだね」と認めてもらえたので、あなたの意見もすんなり受け入れてくれました!
場面2:休み時間のあそび決め
友達のハナちゃんが走ってきました。
ハナちゃん:「ねえねえ! 体育館でバドミントンしようよ!」
【×「でも」を使ったざんねんなパターン】
あなた:「でも、今日は体育館、高学年の優先日だから使えないよ。」
ハナちゃん:「……あ、そう。じゃあいいや。」
→ハナちゃんは「間違えたこと」を注意された気分になり、少し恥ずかしくなって会話が終わってしまいました。
【〇「そうだね」を使った魔法のパターン】
あなた:「そうだね! バドミントン、すごく楽しそうだね! ただね、今日は体育館が高学年の日みたいだから、運動場でドッジボールにする? バドミントンは明日やろうよ!」
ハナちゃん:「いいね! じゃあ明日の休み時間に体育館いこう!」
いかがですか? 言っている「事実(体育館が使えないこと)」はまったく同じなのに、最初に「そうだね」をつけるだけで、会話のあたたかさが全然違いますよね!
明日からすぐできる!「そうだね」チェンジの3ステップ
「でも、ついついクセで『でも』って言っちゃうんだよな…」と思ったあなた。大丈夫です! 明日から学校でできる、かんたんな練習方法を紹介します。
- ステップ1:心の中で「ペタッ」とスタンプを押す
友達が何か言ったら、頭の中で「いいね!」のスタンプを押すイメージを持ちましょう。「あなたの声が聞こえたよ」という目印です。 - ステップ2:口から出す最初の言葉を「そうだね」に固定する
友達の意見と自分の意見が違っていても、まずは「そうだね」「なるほどね」「いいね」と口に出してみます。これは「あなたの気持ちを受け止めたよ」のポーズです。 - ステップ3:「そして」「いっしょに」で自分の意見をつなぐ
「そうだね」と言ったあとに、「でも」とつなぐと魔法がとけてしまいます。「そうだね、そしてね…」「そうだね、だったら…」という言葉を使って、自分のアイデアを上に乗せるように話してみましょう。
家のお手伝いでも魔法を試してみよう!
この魔法は、学校だけでなく、おうちの人と話すときにも絶大な効果があります。
おうちの人:「もうすぐご飯だから、部屋のおもちゃを片付けちゃいなさい。」
ここで「でも、今いいところなんだよ!」と言うと、おうちの人は「言い訳しないで片付けなさい!」と怒ってしまいますよね。
ここで魔法を使ってみましょう。
あなた:「そうだね! もうすぐご飯だもんね。あともう5分だけキリがいいところまでやったら、すぐに片付けるね!」
どうでしょう? おうちの人も「あら、分かっているなら5分待つわね」と、やさしい気持ちになってくれるはずです。
「そうだね」が、あなたをクラスの人気者にする
語用論の研究でもわかっている通り、人は「自分の存在や意見を否定しない人」のまわりに集まってきます。
あなたが「そうだね」を口ぐせにすると、クラスのみんなはこう思い始めます。
「〇〇さんと話していると、自分の考えを安心して話せるな」
「〇〇さんは、いつでも僕の味方になってくれるな」
こう思われたら、もう大成功。あなたのまわりには、自然とあたたかい笑顔が集まり、嫌な「敵」なんて一人もいなくなります。
相手の意見を丸ごと飲み込む必要はありません。「あなたはそう思うんだね」と、まずはニッコリ笑って「そうだね」と受けとめる。
たったこれだけで、あなたはクラスで一番「話しやすい」素敵な人になれるのです。
さあ、明日の朝、友達に会ったら、最初にどんな「そうだね!」をプレゼントしてみますか? ワクワクしながら学校へ向かいましょう!