貸したものは期限を決めて返してもらう
「あ、ごめん! きのう借りた消しゴム、家に忘れてきちゃった……」
友達にモノを貸したとき、こんな風に言われてモヤモヤしたことはありませんか? 1日くらいなら「いいよ」と言えても、それが3日、1週間とつづくと、なんだか嫌な気持ちになりますよね。「本当は返したくないのかな?」「大切にされていないのかな?」と不安になり、だんだんその友達のことがキライになってしまうこともあります。
でも、安心してください。友達が返してくれないのは、あなたのことが嫌いだからでも、その友達がいじわるだからでもありません。実は、「いつ返すか」という大切なルールを決めていなかったことが原因なのです。
モノの貸し借りトラブルは、学校でいちばん「敵」を作りやすい原因のひとつです。けれど、たったひとつの「魔法のルール」を知っておくだけで、貸し借りのトラブルはゼロになり、それどころかクラスでのあなたへの信頼がグングン高まっていきます。
「いつ返すか」を決めないと、ふたりとも損をする?
ここで少し、大人の学問である「ゲーム理論(ゲームりろん)」のお話をしましょう。ゲーム理論とは、テレビゲームのことではありません。「人と人が関わるとき、お互いがどんな作戦をとると一番ハッピーになれるか」を計算する、とっても賢い学問です。
この学問では、人がトラブルになる理由をこう説明しています。お互いに「あいつはどう思っているんだろう?」と疑い合うと、どちらにとっても一番悪い結果になってしまう、というルールがあるのです。
これを学校の貸し借りに当てはめてみましょう。
あなたが友達に人気アニメのマンガを貸したとします。このとき、「いつ返すか」を決めていないと、ふたりの心の中ではこんなことが起こります。
- 【貸したあなた】:「いつ返してくれるのかな? 早く読みたいけど、しつこく言ったら嫌われるかな……」(イライラ・不安)
- 【借りた友達】:「いつ返せばいいのかな? うっかり返すのを忘れてたけど、今さら返すのも気まずいな……」(ドッキリ・気まずい)
どうでしょうか? 「いつ返すか」を決めていないだけで、貸したあなたも、借りた友達も、ふたりとも損をして嫌な気分になっていますよね。これが、ゲーム理論でいう「お互いに損をする状態」です。
返してくれない友達に「早く返してよ!」と怒ると、友達は「そんなに怒らなくてもいいのに」と反発し、ここに「敵」が生まれてしまいます。
でも、貸すときに「来週の月曜日に学校で返してね」と【期限(きげん)】を決めておくだけで、この問題は魔法のように消えてなくなります。友達は「月曜日までに読めばいいんだな」と安心し、あなたも「月曜日まで待とう」とイライラせずにすむのです。
「信頼の貯金」が増えるしくみ
ゲーム理論には、もうひとつ面白い発見があります。それは、「約束を守るやり取りを何度もくり返すと、お互いの信頼(しんらい)がどんどん強くなる」というルールです。
たとえば、係活動(係のかかり)を思い出してください。
配りものの係で、プリントを配るときに「今日の帰り会までに、後ろの机に集めてね」と時間を決めてお願いしたとします。みんながその時間通りに集めてくれたら、「このクラスってすごいな! みんな協力してくれるな!」と嬉しくなりますよね。
モノの貸し借りもまったく同じです。
「今日の5時間目が終わったら返してね」と貸して、時間通りに「はい、ありがとう!」と返ってくる。この小さな「約束のクリア」がくり返されるたびに、あなたと友達の間には、目に見えない「信頼の貯金」がたまっていきます。
「この人と約束すると、気持ちがいいな」「この人はちゃんとルールを守ってくれる信頼できる人だな」とお互いに思えるようになるのです。信頼の貯金がたくさんある人には、絶対に「敵」はできません。クラス中のみんなが、あなたの味方になっていきます。
敵をつくらない! 貸すときに使える「3つの魔法の言葉」
それでは、明日から学校で使える、具体的にどうやって貸せばいいかのテクニックをお伝えします。どれもカンタンで、すぐに試せるものばかりです!
1. 「〜までに返してね」魔法のタイムリミット
モノを貸すときは、必ず「具体的な時間や日」をセットにして言いましょう。
- 授業で使う文房具なら:「今日の5時間目が終わったら返してね」
- 中休みで使うボールなら:「チャイムが鳴ったら体育館の入口で返してね」
- 本やマンガなら:「来週の月曜日の朝、読んだら持ってきてね」
ポイントは、「あとで」や「今度」というあやふやな言葉を使わないことです。「いつ」をハッキリさせるだけで、友達はうっかり忘れることがなくなります。
2. 「わすれそうだからメモしちゃおう!」魔法のリマインダー
大事なノートや本を貸すときは、相手を責めずにリマインド(思い出させる)するテクニックが有効です。
「忘れないでね!」と強く言うと、相手は「疑われているのかな」と感じてしまうことがあります。そんなときは、お茶目にこう言ってみましょう。
「忘れちゃうと困るから、連絡帳(れんらくちょう)に『◯◯くんに本をかえす』ってメモしておこうか!」と言ったり、メモ用紙に「月曜日にかえすよ」と書いて本にはさんで渡したりするのです。
これなら、友達も「親切だな!」と感じますし、忘れずに返すことができます。
3. 「返してくれてありがとう!」魔法の感謝返し
借りていたものが返ってきたとき、あなたはどう言っていますか? 無言で受け取ったり、「あ、うん」と言ってポケットにしまったりしていませんか?
実は、返してもらったときのあなたの言葉が、次の信頼を作ります。
期限通りに返ってきたら、笑顔で「約束通り返してくれてありがとう! 大助かりだよ」と言ってみてください。貸した側なのに「ありがとう」と言うのがポイントです。
感謝された友達は、「約束を守ってよかったな! またこの人と貸し借りをしたいな」と最高の気分になります。これで、あなたと友達の「信頼の貯金」は一気にドカンと増えます。
もしも期限を過ぎて返してくれなかったら?
「でも、期限を決めていたのに、友達が返すのを忘れちゃったらどうするの?」と思うかもしれませんね。
ここでもゲーム理論の教えが役に立ちます。ゲーム理論では、相手が約束を破ったとき、「すぐに怒るのではなく、優しく合図(サイン)を出す」のが一番頭のいい戦い方だとされています。
約束の時間を過ぎてしまったら、敵を作る下手な聞き方と、味方を増やす上手な聞き方があります。
- 【敵を作る聞き方】:「なんで返してくれないの? 約束したじゃん!」(責める言葉)
- 【味方を増やす聞き方】:「きのう貸した消しゴム、どこかに行っちゃったかな? 探すのお手伝いしようか?」(心配する言葉)
相手を責めるのではなく、「忘れているのかも」「失くして困っているのかも」と心配する言い方をしてみましょう。友達は「あ! ごめん、うっかり忘れてた! すぐ返すね!」と素直に謝ることができます。
友達のプライドを傷つけずに、優しく思い出させてあげること。これができる人は、クラスで圧倒的に好かれる「かっこいい存在」になれます。
信頼の魔法をつかって、明日から「貸し借りマスター」になろう!
家でおうちの人とお手伝いの約束をするときも、この魔法は使えます。「部屋のお掃除(そうじ)をしてね」と言われたら、「うん、今日の夜ごはんの5分前までに終わらせるね!」と自分で期限を決めてみてください。おうちの人は、あなたの成長に驚いて、きっとすごく感心するはずです。
モノの貸し借りは、友達とケンカするための種ではありません。お互いの「信頼」を深めるための、最高のチャンスです。
明日、学校で友達に赤鉛筆や定規を「貸して!」と言われたら、チャンス到来です。
ニッコリ笑って、こう言ってみましょう。
「いいよ! 帰りの会が始まるまでに返してね!」
このたった数秒のやり取りが、あなたから「敵」をなくし、クラス全員をあなたの味方に変えていく最初の魔法になります。