「ありがとう」と「ごめんね」は、まいにち使う魔法の合言葉
クラスでいつもみんなに囲まれていて、なぜか誰からも好かれている子っていますよね。そんな「愛されっ子」たちの行動をよく観察してみると、ある大きな共通点があることに気づきます。
それは、「ありがとう」と「ごめんね」を、まるで息をするみたいに、毎日たくさん使っているということです。
「えっ、そんなこと? たいていの人は言ってるよ」と思った人もいるかもしれません。でも、胸に手を当てて思い出してみてください。友達に消しゴムを借りたとき、小さく「サンキュ」とつぶやくだけになっていませんか? あるいは、掃除の班でうっかり雑巾を洗いに行くのを忘れてしまったとき、「だって、○○ちゃんが話しかけてきたから…」なんて、心の中で言い訳を探して素直に「ごめんね」が言えなかったことはありませんか?
実は、大人の偉い研究者たちが食べ物やお買い物の行動を調べる「行動経済学(こうどうけいざいがく)」や「行動学(こうどうがく)」という学問でも、「ありがとう」と「ごめんね」を素直に言える人が、どれだけ周りから信頼され、トクをするかが証明されているのです。
失敗をしてしまっても、この2つの言葉を正しく使えれば、あなたの評価は下がるどころか、前よりもずっと上がってしまいます。今回は、失敗をチャンスに変えてしまう「魔法の言葉」の秘密を、科学の力を借りて解き明かしていきましょう!
人間の「こころのクセ」を知ると、失敗がこわくなくなる!
まず、私たち人間の心には、自分でも気づかないような「決まった考え方のクセ」があります。このクセを知っておくだけで、学校生活での失敗がぜんぜん怖くなくなりますよ。
ひみつ1:人は「さいごの印象」をずっと覚えている(ピーク・エンドの法則)
行動経済学には「ピーク・エンドの法則」という有名なルールがあります。これは、人が過去のできごとを思い出すとき、「いちばん気持ちが盛り上がったとき(ピーク)」と「いちばん最後(エンド)」のふたつの瞬間だけで、全体が楽しかったか嫌だったかを決めてしまうというクセのことです。
これを学校の出来事にあてはめてみましょう。
たとえば、あなたが給食の時間に、お隣の席の友達の机に牛乳をうっかりこぼしてしまったとします。友達の教科書も少しぬれてしまいました。この瞬間、友達の気持ちはイライラして「サイアクだ…」と落ち込んでいます(これがマイナスのピークです)。
でも、ここからが勝負です! あなたがすぐに「うわあ、本当にごめんね! すぐに台ふきん持ってきて拭くね!」と全力で対応し、キレイになったあとに「教えてくれてありがとう、教科書、乾くまで僕のを見ようね」と心を込めて「ごめんね」と「ありがとう」で締めくくった(エンド)とします。
するとどうでしょう? 友達の頭の中に残るのは、「牛乳をこぼされて嫌だった記憶」ではなく、「失敗したのに、すごく一生懸命にあやまって優しくしてくれた!」という最高の終わりの印象なのです。失敗したはずなのに、なぜか前よりも仲良くなれてしまう。これが「ピーク・エンドの法則」の素晴らしい効果です。
ひみつ2:「損をしたくない!」という気持ちが、もっと大きな損を生む(損失回避バイアス)
人間には「トクをしたい」という気持ちよりも、「絶対に損をしたくない! 怒られたくない!」という気持ちの方が2倍も強く働くというクセがあります。これを行動経済学では「損失回避(そんしつかいひ)バイアス」と呼びます。
たとえば、係活動でめくりカレンダーをめくるのを忘れてしまったとき、先生やクラスのみんなに「なんでやってないの?」と聞かれると、ついついこんな風に言いたくなりますよね。
- 「あ、朝ドッジボールに誘われたから…」
- 「○分休みにやろうと思ってたし!」
- 「昨日の担当の○君が、ちゃんと言ってくれなかったから…」
これは、あなたの心が「怒られて損をしたくない!」と守りに入ってしまうから起こる自然な反応です。しかし、ここに大きな罠があります!
言い訳をすればするほど、周りの人は「この子は反省していないな」「人のせいにする子だな」と感じてしまい、あなたの信頼はどんどん減っていきます。怒られないために言った言い訳のせいで、結果として「クラスの信頼を失う」という目に見えない大損をしてしまうのです。
失敗したときは、自分の心が「損をしたくないよ〜!」と叫んでいることに気づいてください。そして、その声に負けずに「ごめんね、完全に忘れていました! 今すぐやります!」と先回りして謝ってしまうのが、実は一番損をしない賢い選択なのです。
ひみつ3:プレゼントをもらうと、お返ししたくなる(返報性の原理)
行動学の世界には「返報性(へんほうせい)の原理」という心のルールがあります。人は他人から親切にされたり、プレゼントをもらったりすると、「自分も何かお返しをしなくちゃ申し訳ないな」と感じる生き物なのです。
実は、「ありがとう」という言葉は、お金のかからない「最高のエレガントなプレゼント」です。
- 落とした鉛筆を拾ってもらったときに「あ、ありがとう!」
- プリントを後ろから回してもらったときに「ありがとう!」
- 図工の時間に「その絵、すごく上手だね」とほめられたときに「気づいてくれてありがとう!」
このように「ありがとう」をプレゼントされた友達は、心が温かくなり、「この子にまた親切にしてあげたいな」「この子が困っていたら助けてあげよう」という気持ちになります。毎日「ありがとう」を振りまいている子は、クラス中に親切のお返しをしてくれる味方を増やしているのと同じなのです。
学校で今すぐ試せる!「ありがとう」「ごめんね」のレベルアップ大作戦
では、明日から学校で使える、ワンランク上の「ありがとう」と「ごめんね」のテクニックを紹介します。どれも今日からすぐにできる簡単なことばかりですよ!
作戦1:「ありがとう」に「理由」をトッピングする
ただ「ありがとう」と言うだけでも素敵ですが、愛される子は必ず「何に対して感謝しているか」という理由をセットにして伝えます。
【ふつうの言い方】
「ノート貸してくれて、ありがとう」
【レベルアップした言い方】
「ノート貸してくれて、ありがとう! ○○ちゃんの字がすごくキレイだから、休んだぶんの授業がすごくよく分かったよ!」
理由をトッピングされると、言われた相手は「自分の工夫や優しさをちゃんと見てくれたんだ!」と嬉しさが何倍にも膨らみます。掃除の時間にバケツの水を取り替えてくれた友達や、日直の仕事を一緒にやってくれた友達に、ぜひ「理由つきのありがとう」をプレゼントしてみましょう。
作戦2:「ごめんね」のあとに「次の行動」をセットにする
失敗してしまったとき、「ごめんね」と言うだけで終わらせていませんか? 行動学的には、「ごめんね」のあとに自分が次にどうするか(改善策)を伝えることで、相手の不安を完全に消し去ることができると分かっています。
【ふつうの言い方】
「あ、教科書忘れちゃった。ごめんね」
【レベルアップした言い方】
「忘れて一緒につかわしてもらうことになっちゃって、ごめんね! 次は忘れ物ゼロにするために、今日から寝る前にランドセルをチェックするようにするね。今日は見せてくれてありがとう!」
どうでしょうか? ここまで言えたら、失敗したはずなのに「すごくしっかりした、誠実な子だなあ」と感心されてしまいますよね。失敗は誰にでもあることです。大切なのは、失敗したあとにどう行動するかです。
作戦3:家での「お手伝い」を最高の練習場にする
学校で急にやろうとしても、恥ずかしかったりタイミングを逃したりしてしまうことがあります。そこでおすすめなのが、お家を「練習場」にすることです!
お家の人との関係は、コミュニケーションの最高のトレーニング場です。
- お夕飯を作ってもらったとき:「美味しいご飯を準備してくれて、ありがとう!」
- 服を洗濯してたたんでもらったとき:「いつもキレイにしてくれてありがとう!」
- お母さんやお父さんに頼まれたお使いやゴミ出しを忘れてしまったとき:「ごめんなさい! すぐに今からやってくるね!」
家の中で「ありがとう」と「ごめんね」を自然に言えるようになると、学校に行っても口が勝手に動くようになります。お家の人も笑顔になって、自分のコミュニケーション力も上がるなんて、一石二鳥ですね!
今日からキミも「言葉のプロ」!明日やってみようチェックリスト
さあ、理論とコツはすべて頭に入りました! あとは明日、学校で実践してみるだけです。ワクワクしてきましたか?
明日、学校に着いたら、下のチェックリストのなかから最低でも3つをクリアできるようにチャレンジしてみてください。
- 朝、登校したとき:教室に入ったら、近くにいる友達に「おはよう! 今日も会えて嬉しいよ」の気持ちを込めて笑顔であいさつする。
- 授業中:消しゴムや定規を借りたり、プリントを回してもらったりしたら、相手の目を見て「ありがとう」と言う。
- 休み時間:ドッジボールや鬼ごっこで、友達の足を踏んでしまったり邪魔になってしまったりしたら、3秒以内に「ごめんね!」と言う。
- 給食・掃除の時間:自分の代わりに配膳をしてくれたり、ゴミを捨てに行ってくれた友達に「〇〇してくれてありがとう!」と理由をつけて伝える。
- 帰りの会・放課後:今日いちばんお世話になった友達や先生に、「今日は〇〇が楽しかったね、ありがとう!」と言って下校する。
失敗することは、悪いことではありません。人間は失敗しながら成長していく生き物だからです。でも、失敗したあとに「ごめんね」が言えずにウソをついたり、「ありがとう」が言えずに当たり前のような顔をしたりすることは、とてももったいないことです。
「ありがとう」と「ごめんね」という魔法の合言葉をポケットに入れておけば、どんな失敗をしたって大丈夫。あなたはいつでも、クラスのみんなから愛される素敵なヒーローになれます。
さあ、明日の朝、どんな「ありがとう」からスタートしますか? あなたの学校生活が、もっとキラキラ輝く素晴らしいものになることを応援しています!