「ごめんね」が言えると、どうして「特別にステキな人」になれるの?
給食のすーぷをこぼしちゃったとき。ドッジボールで投げたボールが、友達の顔に当たっちゃったとき。図書室から借りた本を、うっかり折り曲げてしまったとき……。
「やばい! やっちゃった!」
そんなとき、胸がキューッと苦しくなって、頭の中が真っ白になった経験はありませんか?
その瞬間に、心の中でこんな声が聞こえてくるかもしれません。
「だって、〇〇くんがうしろから押してきたからだし……」
「でも、もともと本が古かったんだもん!」
自分のまちがいや失敗に気づいたとき、とっさに「言い訳」をしたくなるのは、実はあなただけではありません。でもね、クラスでみんなから「あの人って、すごくステキだな」「一緒にいると安心できるな」と信頼されている子は、失敗したときの行動がちょっと違います。そういう子は、自分のまちがいをみつけたとき、びっくりするくらい「すなお」なんです。
失敗したことを隠そうとせず、「あ、ごめんね! わたしのミスだ!」とサッと言える。実はこれこそが、クラスでいちばん好かれる子が使っている、とくべつな「魔法のコミュニケーション」なのです。
この本では、なぜ素直にあやまることがそんなにすごい力を持っているのか、そして、どうすれば失敗したあとに前よりもっとみんなと仲良くなれるのかを、科学のお話といっしょに解きあかしていきます!
心が勝手に言い訳をつくる!? 行動経済学でわかる「ごめんね」のナゾ
「失敗したときに、素直にあやまるのって、なんだかすごく損をする気がする……」
そう思ったことはありませんか? 怒られるかもしれないし、カッコ悪いと思われるかもしれない。そう考えると、すごくこわくなりますよね。
実はこれ、人間の心についての学問である「行動経済学(こうどうけいざいがく)」で、しっかり証明されている「心のクセ」なんです。
行動経済学の研究によると、私たち人間には「損(そん)をするのを、何よりもすごーく嫌がる心」が生まれつき備わっています。専門用語では「損失回避(そんしつかいひ)」と呼びます。人間は「ほめられて嬉しい気持ち」よりも、「怒られたり嫌われたりして損をする恐怖」の方を、なんと2倍も強く感じてしまう生き物なのです。
だから、自分がまちがえたときに「ちがうもん!」「自分じゃないもん!」と言い訳をしたくなるのは、あなたが悪い子だからではありません。あなたの心が「損をしたくないよー!」とピンチを感じて、自分を守ろうと緊急ブレーキをかけているからなのです。
言い訳をすると「損が2倍」になっちゃう!
でも、ここに大きな落とし穴があります!
損をしたくないからといって、「でも」「だって」と言い訳を重ねたり、黙りこくったりしてしまうと、どうなるでしょう?
周りの友達は、「あやまってくれないこと」に対して、失敗そのものよりもショックを受けます。その結果、本当は小さかったはずのミスが、どんどん大きくなってしまい、最後には「あの子は自分のまちがいを認めない人だな」と、信頼を失ってしまうのです。
「損をしたくない!」と思って言った言い訳が、かえって一番大きな損を引き寄せてしまう……。これが、言い訳のこわいトラップなのです。
行動学が教えてくれる!「すぐにあやまる人」が信頼される理由
では逆に、間違いに気づいた瞬間に「ごめんね!」と素直にあやまると、どうなるでしょうか?
人間の行動を研究する「行動学(こうどうがく)」では、おもしろいことが分かっています。完璧で一度も失敗しない人よりも、「失敗したときに素直に認めて、すぐにやり直せる人」の方が、まわりから圧倒的に愛され、信頼されるというルールです。
なぜだと思いますか?
自分の失敗を素直に認める姿を見ると、まわりの人はこう感じるからです。
「この人は、嘘をつかない正直な人だ」
「自分のことより、みんなのことを一番に考えてくれているんだな」
つまり、失敗した瞬間は、実は「あなたへの信頼度をドカンとアップさせる最大のチャンス」に変身するのです! 失敗そのものはゼロにはできません。でも、そのあとの「素直なごめんね」ひとつで、あなたの評価は失敗する前よりも高くなることだってあるのです。
クラスや家でよくある!「やってしまった」ときの3つの具体例
学校生活や家での「やってしまった!」という場面で、どんな対応をすればイケているのか、具体的に見ていきましょう。
① クラスの掃除の時間:友達が使うゴミ箱を倒しちゃった!
- ガッカリな対応:「〇〇くんがそこに置くからじゃん!」と言い訳をする。
- 愛される対応:「あ! ごめんね! すぐ集めるよ!」と自分からほうきを持って動く。
自分がわざとやったわけではなくても、自分の行動でトラブルが起きたときは「あやまる+手助け」をセットにするのがコツです。
② 係活動・委員会:プリントの枚数を間違えて配れなかった!
- ガッカリな対応:「だって、先生が渡してきた枚数がちがってたんだもん」と先生のせいにする。
- 愛される対応:「ごめん! 確認が足りなかった! すぐ職員室に足りない分を取りに行ってくるね!」と元気に動く。
誰のせいかをさがすのではなく、「今、自分がどう動けばみんなが助かるか」を考えると、周りの人は「頼りになるなあ!」と感心します。
③ 家でのお手伝い:お皿を運んでいるときに割っちゃった!
- ガッカリな対応:怒られるのがこわくて、割れたお皿を隠そうとしたり、黙って部屋に逃げたりする。
- 愛される対応:すぐに「おうちの人、ごめんなさい! お皿を割っちゃった。危ないから動かないで見てて!」と報告する。
家でも同じです。素直にすぐ言うことで、危険も防げますし、おうちの人も「素直に言えてえらいね」と、許してくれる気持ちになりやすくなります。
「魔法の素直さ」を手に入れる! 今日からできる3つのルール
「素直にあやまるのが大切なのはわかったけれど、やっぱりいざとなると勇気が出ないよ……」
大丈夫! 心のクセを乗り越えて、サッと素直になれる「3つのアクションルール」を伝授します。明日学校に着いたら、ゲーム感覚で試してみてくださいね。
ルール1:「でも」「だって」を心のなかで【パチン】と消す
失敗したとき、口から「でも…」「だって…」が出そうになったら、心の中で大きな口で「ストップ!」と叫んでみましょう。手でパチンと1回拍手を打つイメージでもいいです。
「でも・だって」は、あなたの心が損を恐れて出そうとしている煙幕(えんまく)です。これを言葉にする前に消し去るだけで、あなたの言葉は一気に素直になります。
ルール2:「3秒以内」に声を出す
行動学の研究では、人間は失敗してから5秒以上考えると、頭が勝手に言い訳を作り出してしまうことがわかっています。
だから、やっちゃった!と思った瞬間、頭でいろいろ考える前に「あ、ごめん!」と3秒以内に声を出しちゃいましょう。言葉が先にでてしまえば、あとの言い訳は出てこなくなります。「あやまれるカッコいい自分」になるためのスピード勝負です!
ルール3:「あやまる+これからどうするか」をセットで伝える
ただ「ごめんね」と言うだけでも素敵ですが、もうワンランク上の「愛され上手」になる秘密のテクニックがあります。それが、【あやまる+未来のアクション】です。
- 「ごめんね! 次は気を付けるね」
- 「まちがえちゃってごめん! 今すぐやり直すね」
- 「ごめんなさい! いっしょに片付けるね」
「ごめん」のあとに「これからどうするか」をつけることで、聞いている人は「この子は反省して、前を向いているんだな」と、とても爽やかな気持ちになります。
明日から学校でやってみよう!「愛されコミュニケーション」の実践
クラスでいちばん好かれる子は、完璧でミスのないロボットのような人ではありません。失敗したときに、素直に「ごめんね」と言えて、笑顔でやり直せる、温かい心を持った人です。
自分の間違いを認めることは、負けることではありません。むしろ、自分の弱さを認められる「本当の強さ」を持っている証拠なのです。
明日、もし学校で小さな失敗をしてしまったら、心の中で「チャージ完了!」とつぶやいてみてください。そして、勇気を出して3秒以内に言ってみましょう。
「ごめんね! 次からこうするね!」
そのひとことで、周りの友達はきっと、にっこり笑って「ううん、大丈夫だよ!」と返してくれるはずです。そしてあなたの周りには、もっともっと温かい笑顔と信頼が集まってきますよ!