ルール31:誰かと比べず「昨日の自分」と比べる
体育の時間、50メートル走のタイムが発表されたとき、クラスで一番足が速い〇〇くんと自分を比べて、「はぁ、僕はなんでこんなに遅いんだろう…」と落ち込んだことはありませんか?
あるいは、図工の時間にとなりの席の友達が描いたすばらしい絵を見て、「自分の絵はなんだかへたくそだな」と、急に自分が描いた絵が嫌になってしまったことはないでしょうか。
学校では、いろいろな場面で「人と比べること」が起きてしまいます。テストの点数、足の速さ、絵のうまさ、係の仕事の手際、さらには友達の多さまで。でも、いつも「誰か」と自分を比べていると、どんなにがんばっても心が疲れてしまうのです。
クラスでいちばん好かれる子、みんなから「一緒にいると心地いいな」と思われる子は、実は「心のものさし」の使い方がちがいます。彼らは、クラスの誰かと自分を比べるのではなく、「昨日の自分」と今日の自分を比べているのです。
心がモヤモヤする秘密は「心のものさし」にあった!
なぜ、私たちはついつい人と比べて落ち込んでしまうのでしょうか?
実はこれ、あなたが弱虫だからでも、ダメな人間だからでもありません。人の心の動きと行動を研究する「行動経済学(こうどうけいざいがく)」という学問では、人間の脳には「参照点(さんしょうてん)」という「心のものさし」がセットされていることがわかっています。
脳のクセ「参照点(さんしょうてん)」とは?
「参照点」とは、何かを判断するときに無意識に使っている「基準(きじゅん)」のことです。
例えば、ジュースを買うとき、いつも100円のジュースを飲んでいる人(参照点が100円)にとって、200円のジュースは「高い!」と感じます。でも、いつも500円の高級ジュースを飲んでいる人(参照点が500円)にとっては、200円のジュースは「安くてお得だ!」と感じます。ジュースの値段は同じ200円なのに、「どこを基準にするか(参照点)」によって、心の感じ方がまったく変わってしまうのです。
これを学校生活にあてはめてみましょう。
もし、あなたの「心のものさし(参照点)」が「クラスで一番足が速い〇〇くん」になっていたらどうなるでしょうか?
- 〇〇くんのタイム:7.5秒
- あなたのタイム:9.0秒(先週より0.5秒も速くなった!)
本当は、先週の自分より0.5秒も速くなって大成功なのに、ものさしの基準が「〇〇くん(7.5秒)」になっていると、脳は「〇〇くんより1.5秒も負けている=自分はダメだ」と判断してしまうのです。これでは、どんなに成長しても、ずっと自分のことが好きになれませんよね。
「昨日の自分」を基準にすると、脳はワクワクしはじめる
行動経済学の研究では、もうひとつ面白いことがわかっています。人間は「自分が前に進んでいる(成長している)」と実感できたときに、いちばん大きな幸せとやる気を感じる生き物だということです。
「参照点(心のものさし)」を「クラスの誰か」から「昨日の自分」にガチャンと切り替えてみましょう。
ものさしを切り替えた時の心の変化
先ほどの50メートル走の例で、心のものさしを「昨日の自分(先週の自分)」にセットし直してみます。
- 先週の自分のタイム:9.5秒
- 今日の自分のタイム:9.0秒
- 心の声:「やった! 0.5秒も速くなった! 腕をしっかり振って走ったおかげだぞ!」
どうでしょうか? 〇〇くんと比べたときは「負け」だと感じて落ち込んでいたのに、昨日の自分と比べた瞬間に「自分の努力が実を結んだ大勝利!」に変わりましたよね。
昨日の自分と比べるようになると、脳の中で「やる気」を生み出すエネルギーがどんどんあふれてきます。すると、次の練習が楽しくなり、明日学校に行くのがワクワクしてくるのです。
なぜ「昨日の自分と比べる子」はクラスで愛されるの?
「自分の中での成長」を大切にしている子が、なぜクラスのみんなから好かれるのでしょうか? それには、ちゃんとした理由があります。
理由1:友達の成功を心から「すごいね!」と応援できる
いつも人と比べている子は、友達がテストで100点を取ったり、体育で活躍したりすると、心の中で「キーッ! 悔しい! 負けた…」と思ってしまいます。ひどいときは、友達の自慢話を聞きたくなくて、意悪な態度をとってしまうこともあります。
でも、「昨日の自分」と比べている子は、友達と勝ち負けを争っていません。だから、友達がすごい結果を出したときに、「〇〇ちゃん、すごいね! どうやって練習したの?」と、心から笑顔で一緒に喜ぶことができるのです。自分の幸せを一緒に喜んでくれる人を、みんな好きにならないはずがありませんよね。
理由2:いつも心に「ゆとり」があって、やさしくなれる
人と比べてばかりいると、心の中がいつも「負けたくない」「バカにされたくない」という不安でいっぱいになります。でも、昨日の自分と比べている子は、自分の小さな成長に満足できているので、心にたっぷりと「ゆとり」があります。
心にゆとりがある子は、給食の配膳で困っている友達にすっと手を差し伸べたり、係活動で失敗した友達に「大丈夫だよ、次はこうしてみよう!」とやさしい声をかけたりすることができます。この「心のゆとり」こそが、愛される子のいちばんの魅力なのです。
今日からできる!「昨日の自分超え」3つの作戦
それでは、明日から学校や家で使える、具体的な「心のものさし切り替え作戦」を3つ紹介します! どれもゲーム感覚でできるので、ぜひ試してみてくださいね。
作戦1:学校での「1ミリの前進」探しゲーム
学校生活の中で、昨日の自分より「ちょっとだけできたこと」を見つけるゲームです。誰も気づかないような、ほんの小さなことで構いません。
- 算数の授業:昨日は1問解くのに5分かかったけれど、今日は4分で解けた!
- 掃除の時間:昨日は自分の担当エリアだけ掃除したけれど、今日はとなりの班のゴミも1つ拾えた!
- 給食の時間:昨日は苦手なピーマンを残したけれど、今日は小さく切って一口食べられた!
- 日直や係の仕事:昨日は小さな声で朝の会を進めたけれど、今日は語尾までハッキリ言えた!
「こんな小さなことでいいの?」と思うかもしれません。でも、行動学では「小さな変化を自分で認めること」が、大きな成長を生む唯一の道だと証明されています。「昨日の自分より1ミリ前進したぞ!」と、心の中で自分に拍手を送ってあげましょう。
作戦2:家での「お手伝いレベルアップ」チャレンジ
家でのお手伝いも、「昨日の自分」と比べる絶好のトレーニングになります。おうちの人と比べるのではなく、過去の自分の記録に挑戦するのです。
- 靴そろえ:昨日は自分の靴だけそろえた。今日は家族全員の靴をきれいに向きまでそろえてみよう!
- お皿洗い:昨日は洗うのに10分かかった。今日は丁寧さをキープしたまま、8分でできるかな?
- 洗濯物たたみ:昨日は服をたたむだけだった。今日はタンスの引き出しまでしまってみよう!
おうちの人から「わあ、昨日より手際が良くなったね!」「すごく助かるよ!」とほめられると、あなたの「心のものさし」はどんどん「昨日の自分」にセットされていきます。
作戦3:ひみつの「昨日の自分超えノート」をつくる
ノートを1冊用意して、寝る前に「今日、昨日の自分を超えたこと」を3つだけ書く習慣をつくってみましょう。
書き方はとても簡単です。
【昨日の自分超えノートの書き方例】
① 昨日は友達に挨拶されるのを待っていたけど、今日は自分から「おはよう!」と言えた。
② 昨日は漢字ドリルで2つ間違えたけど、今日は1回で全問正解できた。
③ 昨日は消しゴムを落とした友達をスルーしちゃったけど、今日はひろってあげられた。
このノートが溜まっていくと、あなたは「自分は毎日確実に成長しているんだ!」という強力な自信を手に入れることができます。人と比べて落ち込みそうになったときは、このノートを開いてみてください。「なんだ、僕(私)ってめちゃくちゃ頑張ってるじゃん!」と勇気がわいてくるはずです。
ライバルは、教室の中ではなく「過去の自分」
クラスでいちばん好かれる子は、決して「何でもできるスーパーマン」ではありません。失敗することもあれば、テストで悪い点数を取ることもあります。でも彼らは、失敗したときでも「次は昨日の自分よりちょっとだけ上手くやろう」と前を向くことができる人です。
もし明日、学校で誰かのすごいところを見て「うらやましいな」「負けていて悔しいな」と思ったら、心の中でこうつぶやいてみてください。
「あの子はあの子のペースで進んでいる。僕は僕のペースで、昨日の自分を超えるんだ!」
心のものさしを「昨日の自分」に合わせた瞬間から、あなたの学校生活はもっと自由に、もっと楽しくなり始めます。そして、自分の成長を素直に楽しめるようになったあなたのもとには、自然と素敵な友達が集まってくるようになりますよ。