相手の頑張りを具体的にほめる
友達が何かをうまくできたとき、あなたはどんな言葉をかけていますか?
「すごーい!」
「上手だね!」
こんな風に声をかけることが多いかもしれませんね。もちろん、ほめられていやな気持ちになる人はいません。でも、実は「すごいね」という言葉だけだと、相手の心にあまり残らなかったり、時には「本当にそう思ってるのかな?」と、ちょっとだけ疑われてしまったりすることがあるのです。
クラスで誰からも愛されて、敵を作らない「話し方の名人」たちは、友達をほめるときにある「特別な魔法」を使っています。それは、「相手のどこが、どう頑張っているのかを具体的に伝える」ということです。
この魔法を使えるようになると、友達は「自分のことをしっかり見てくれているんだ!」と、あなたに対して強い安心感と親しみを持つようになります。明日からすぐに使いたくなる「具体的にほめる魔法」のひみつを、いっしょにのぞいてみましょう!
「ことばのうら側学」からわかる、ほめ言葉のひみつ
ここで少しだけ、大人の学問のお話をしますね。大学などで研究されている「語用論(ごようろん)」という学問があります。むずかしい名まえですが、かんたんに言うと「ことばのうら側学」のことです。
私たちは、言葉を話すときに「辞書に載っている意味」だけを伝えているわけではありません。その言葉を「どんな場面で」「どんな気持ちで」言ったかによって、相手に伝わる意味が変わってくるのです。
たとえば、おそうじの時間に、黒板をピカピカにふいてくれた友達がいるとします。そこであなたが、遠くからチラッと見ただけで「あ、すごいね〜」と言ったとしましょう。
言葉通りの意味は「相手をほめている」ですよね。でも、「ことばのうら側」はどうでしょうか? 友達の心には「あ、適当に返事されたな」「あんまり見てないのに、口先だけで言ってるな」というニュアンスが伝わってしまうことがあるのです。
反対に、「うわあ、黒板のすみの粉まで、ぞうきんでキレイにふき取ってくれたんだね! まるで新品みたい!」と言ったらどうでしょう?
言葉のうら側から「あなたのアクションをしっかり見つめて、本当に感動しているよ」という温かいメッセージが、相手の心の中にドカンと届くのです。これが「ことばのうら側学(語用論)」のルールです。ほめ言葉は、「具体的に言えば言うほど、本当の気持ちとして相手に伝わる」という性質を持っているのです。
今日から使える!「具体ほめ」3つのステップ
では、どうすれば相手の頑張りを具体的にほめることができるのでしょうか? 誰でも簡単にできる「3つのステップ」をおしえますね。
ステップ1:「どこを」ほめるかズームインする
写真をとるときに、好きなものにカメラを近づけるように、相手の行動にズームインしてみましょう。「絵が上手だね」ではなく、「絵のどこ」にズームインできるかな?と考えてみるのです。
- 「色づかいが、本物の夕やけみたいでかっこいい!」
- 「ロボットの手の関節のところが、細かくかかれていてすごい!」
このように、「どこ」を指さしてほめることができるくらいズームインするのがコツです。
ステップ2:「自分の気持ち」をセットにする
相手の行動にプラスして、「それを見た自分がどう思ったか」を伝えましょう。「気持ち」をセットにすることで、世界にひとつだけの特別なほめ言葉になります。
- 「いつも帰りの会でハキハキ司会をしていて、聞いていてすごく気持ちがいいよ!」
- 「生き物かがりの水そうそうじ、いつも丁寧だから、メダカも嬉しそうだよね。見ていてワクワクする!」
「〜だと思う」「〜な気分になる」というあなたの素直な気持ちは、誰も否定できない最高のプレゼントになります。
ステップ3:「前とくらべて」の変化を伝える
人間は、「自分の成長に気づいてくれたとき」に、いちばん感動します。友達の「昔」と「今」をくらべて、伸びたところを教えてあげましょう。
- 「先週よりも、なわとびの二重とびが軽く跳べるようになってるね!」
- 「はんの発表のとき、前より大きな声で話せるようになっていてビックリしたよ!」
「前からあなたのことを見ていたよ」という気持ちが伝わるので、友達はあなたを「自分の一番の理解者だ!」と感じるようになります。
【場面別】明日学校で使える!「具体ほめ」テクニック集
学校生活のいろいろな場面で使える具体例を集めました。自分ならどう言うか、イメージしながら読んでみてくださいね。
① クラスの「係活動・おそうじ」のとき
地味で目立たないお仕事ほど、具体的にほめられると嬉しいものです。
【もったいない例】
「手伝ってくれてありがとう、助かったー。」
【魔法の具体ほめ】
「机をはこぶとき、足を引きずらないで持ち上げて運んでくれたから、音も静かで早く終わったよ! 気づかいがステキだね。」
どこに気を配っていたかを言葉にしてあげることで、友達は「自分の工夫が伝わった!」と大満足します。
② 休み時間や体育のとき
スポーツや遊びの場面では、結果だけでなく「うごき」や「姿勢」に注目しましょう。
【もったいない例】
「ドッジボール、強かったね!」
【魔法の具体ほめ】
「最後のワンバウンドのボール、あきらめないで最後まで手をのばしてキャッチしたところ、めちゃくちゃカッコよかったよ!」
勝ったことだけでなく、その途中の「あきらめない姿勢」をほめられると、誰だって誇らしい気持ちになります。
③ グループ学習・授業の発表のとき
発表は誰もがドキドキするものです。終わったあとの一言が、友達の安心感につながります。
【もったいない例】
「発表、よかったよ。」
【魔法の具体ほめ】
「〇〇くんが使っていた『たとえば〜』っていうたとえ話がすごく分かりやすくて、はんのまとめノートが一気に書けちゃった!」
自分の発表が「どう役に立ったか」まで伝えると、相手は大きな自信を持つことができます。
④ 家でのお手伝いや、きょうだいとの時間
この魔法は、学校だけでなく家でも大活躍します!
【もったいない例】
「おにいちゃん、ゲーム上手だね。」
【魔法の具体ほめ】
「わたしがピンチになったときに、すぐにアイテムを分けてくれてありがとう! 助け方がいつも素早くて頼りになるよ!」
おうちの人や兄弟に対しても、具体的にほめることで、家の中がパッと明るく温かい雰囲気に変わります。
気をつけよう! 逆効果になっちゃう「あくまのほめ言葉」
ほめているつもりでも、言い方によっては相手の心をモヤモヤさせてしまうことがあります。「ことばのうら側」が悪い意味で伝わらないように、次の2つのパターンには気をつけましょう。
× 上から目線の「評価」になっちゃうほめ方
「〇〇さんにしては、よくできたね!」
「意外と上手なんだね!」
「〜にしては」「意外と」という言葉が入ると、ことばのうら側から『本当は君のことをバカにしていたけどね』という気持ちがすけて見えてしまいます。どんなにほめても、相手の敵を作ってしまう危険な言い方です。
× 誰かとくらべるほめ方
「〇〇ちゃんは、△△くんより絵が上手だね!」
誰かを落として誰かを持ち上げるほめ方は、聞いている周りの人もいやな気分にさせます。ほめるときは「他の誰か」とくらべるのではなく、「その人自身」の過去や工夫とくらべるのが鉄則です。
まとめ:明日学校で試す「ほめ出し」ミッション!
友達の「ダメなところ」を探して注意するのは、だれでも簡単にできます。そして、ダメ出しばかりする人の周りには、人が離れていってしまいます。
でも、友達の「素敵(すてき)なところ」や「頑張っている工夫」をじっくり観察して、具体的に伝えることができる人は、クラスの中で宝物のように大切にされます。否定しない言葉遣いの第一歩は、この「ほめ出し」から始まるのです。
さあ、明日学校に行ったら、次の「ミッション」に挑戦してみてください!
- となりの席の友達の「工夫」をひとつ見つけて、具体的にほめてみる
- 係活動やそうじの時間に、友達の「カッコいい動き」を言葉にして伝える
- ほめるときに「〇〇なところがスゴイ!」と「どこ」をかならず言葉に入れる
あなたが具体的にほめた瞬間、相手の顔がパッと明るくなり、パズルのピースがピタッとはまるように、あなたと友達の心が近づくのを感じられるはずです。
さあ、明日はどんな「ステキな頑張り」が見つかるか、楽しみに学校へ向かいましょう!