第1章:あいさつは「心のドア」を開く鍵
自分から先に「おはよう」と声をかける
朝、がっこうの ちょうばこ(下駄箱)で くつを はきかえて、クラスの きょうしつの ドアを あけるとき。あなたの こころの中は、どんな かんじですか?
「きょうは だれと はなそうかな?」と ワクワクしている 日も あれは、「なんだか ちょっと ゆううつだな…」「あのコ、きょうは きげんが良いかな…?」と、どきどき してしまう 日も ありますよね。
きょうしつの ドアを あけた 瞬間、もし クラスの みんなが シーンとしていて、だれも こちらを 見てくれなかったら、なんだか 自分が「へんとう(返事)のない 世界」に ぽつんと 取り残されたような、さみしい 気持ちに なってしまうかもしれません。
でも、だいじょうぶ! たった 1秒で、きょうしつの 空気を ガラリと かえて、クラスの中に「あなたを 攻撃する人(=てき)」を ひとりも つくらなくする **“さいきょうの 魔法”** が あります。
それが、「じぶんから 先に『おはよう』と 声をかける」ことです。
「えっ? あいさつなんて、毎日 やっているよ」と 思った人も いるかもしれませんね。でも、ここで だいじなのは「じぶんから 先に」という ポイントです。あいてが あいさつしてくれるのを 待つのではなく、あなたが じぶんから さいしょに こころの ドアを パカッと あけてあげるのです。
なぜ、じぶんから 先に あいさつを するだけで、敵が いなくなるのでしょうか? 実は これには、「ことばの 科学(社会言語学・語用論)」という、とても かしこい ひみつが かくされているのです!
「おはよう」は、じょうほうを つたえる 言葉じゃない!?
言葉の つかいかたを 研究する「しゃかい げんごがく(社会言語学)」という 学問では、あいさつについて とても おもしろい ことが わかっています。
ふだん、私たちが つかう 言葉には「じょうほう(情報)を つたえる」という 役目があります。たとえば、「きょうの 給食は カレーだよ」とか、「算数の たんとうの 先生が かぜでお休みだよ」というのは、しらない ことを おしえてあげる「じょうほう」ですよね。
では、「おはよう」という 言葉は、どうでしょうか?
「おはよう」と 言うことで、「いまは 朝ですよ!」という 新しい ニュースを おしえている わけでは ありませんよね。あいてだって、いまが 朝だということくらい、ちゃんと 知っています。
じゃあ、どうして 人は「おはよう」と 言うのでしょうか?
言語学の世界では、あいさつのような 言葉を「こころの ネットを つなぐ サイン(交感的言語使用)」と よんでいます。むずかしい 言葉ですが、わかりやすく 言うと「わたしは あなたの 味方(みかた)ですよ! こうげき しませんよ!」という 安全(あんぜん)の 電波を だすことなのです。
動物の 世界を 思いかえしてみてください。ワンちゃんや ネコちゃんは、はじめて 出会った とき、お互いに くんくんと ニオイを かぎ合いますよね? あれは、「キミは ぼくを おそう 敵かな? それとも お友達になれるかな?」と たしかめ合っているのです。
人間の 世界での「ニオイを かぎ合う アクション」こそが、あいさつなのです!
あなたが じぶんから 先に「おはよう!」と 声をかけるということは、あいてに むかって「ぼく(わたし)は、あなたに 敵意(てきい)は ありませんよ。安心してね!」という 光の バリアを はってあげているのと同じなのです。先に 安全だと わかれば、あいては あなたを 攻撃する(=敵になる)理由が なくなってしまうのです。
あいての「こころの バリア」を トロトロに とかす テクニック
もうひとつ、「ごようろん(語用論)」という 言葉の研究では、人間には だれでも「自分の じぶんらしさを 認めてほしい!」という 気持ちと、「しらない 人から いきなり 心の中に 入ってこられたくない!」という 2つの 気持ちが あることが わかっています。
朝の 教室に いる クラスメイトも、実は みんな ちょっとだけ 緊張(きんちょう)しています。
「きょうも 楽しく すごせるかな…」
「だれか ぼくに 声をかけて くれるかな…」
そんなふうに、みんな 心の中に 小さな「見えない バリア」を はって、じぶんを まもろうと しているのです。
そこに、あなたが 笑顔で「〇〇くん、おはよう!」と 先に 声をかけてあげたら、どうなるでしょう?
あいては、「あ! ぼくの 存在(そんざい)を 認めてくれた! ぼくの 名前を つづけて呼んでくれた!」と、すごく 嬉しくなります。そして、「この人は ぼくの こころの中に、やさしく 入ってきてくれる 安全な 人だ」と 感じて、はっていた バリアを トロトロに とかしてしまうのです。
自分から 先に 声をかける 人は、クラスの中で「みんなの こころの バリアを とかしてくれる、安心できる 存在」に なります。だから、だれも あなたの 敵に なれなくなってしまうのです。これが、「敵をつくらない 魔法」の 正体です!
学校で すぐに 使える!「先手必勝(せんてひっしょう)あいさつ」3つの コツ
「自分から 声をかけるのが だいじなのは わかったけれど、やっぱり ちょっと 照れくさいな…」
「なんて 声をかけたら いいのか、タイミングが わからないよ」
そう 思う人も 大丈夫! 明日から 学校で すぐに 使える、とっておきの 3つの コツを おしえますね。
コツ1:あいての「なまえ」を セットにして よぶ
ただ「おはよう」と 言うよりも、あいての 名前を つけて「〇〇さん、おはよう!」と 言ってみましょう。
人は、自分の 名前を 呼ばれると、無意識(むいしき)に「自分のことを 大切に してくれている!」と 感じる 生きものです。朝、日当番(ひとうばん)で いっしょになった 子や、となりの 席の子に、ぜひ 名前を つけて あいさつしてみてください。一瞬で あいさつの パワーが 10倍に アップします!
コツ2:目は「はな」か「首もと」を フワッと 見る
あいての 目を じーっと 見つめすぎると、お互いに 緊張して しまいますよね。かといって、あさっての 方向を 向きながら 言うと、「あ、嫌われているのかな」と 誤解(ごかい)されてしまいます。
コツは、あいての「鼻(はな)」の あたりや、「体操服の えりもと」を フワッと やさしく 見ることです。これだけで、あいてには「ちゃんと 自分に 向かって はなしかけてくれているな」と 伝わり、あなたも 緊張せずに あいさつが できます。
コツ3:声の たかさは ドレミファソの「ソ」の音!
ぼそぼそっと 低い 声で あいさつを すると、あいてに「怒っているのかな?」と 勘違い(かんちがい)させてしまう ことが あります。
あいさつを するときは、音楽の 時間に ならう ピアノの 音でいう「ソ」の 音(ちょっと高めの 明るい 声)を 意識してみましょう。
「ソ〜♪(おはよう!)」という 明るい トーンの 声は、あいての 耳に 心地よく 届きます。大きな 声を だす 必要は ありません。小さくても「ソ」の 音なら、気持ちよく 心に 届くのです。
こんな 場面でも 大活躍! クラスの いろいろな シーン
「自分から 先に あいさつ」の 魔法は、朝の 教室だけではなく、学校生活の いろいろな 場面で あなたを 助けてくれます。
- 係(かかり)の 活動のとき:
「水やり係」や「プリント配り係」で いっしょに なった 友達に、仕事をはじめるとき「〇〇ちゃん、よろしくね!」と 自分から 言ってみる。あいては「この子と 一緒で よかった!」と 安心して、仲良くなれます。 - 給食(きゅうしょく)の とき:
ストローや 運ぶかごを 渡すとき、無言で 渡すのではなく「はい、どうぞ!」と 先に 声をかける。たった これだけで、クラスの 給食タイムが なごやかな 空気に なります。 - そうじの 時間:
「きょうは 机を はこぶの、いっしょに やろう!」と 先に 声をかける。めんどうな そうじの時間も、一気に 楽しい 協力タイムに 変わります。 - 家での お手伝い:
おうちの 人が ごはんを 作ってくれたら、自分から 先に「いただきます!」「いつも ありがとう!」と 言ってみる。おうちの 人の 顔が ニッコリほころんで、家の中が 温かい 場所になります。
もしも、あいてから 返事が 来なかったら…?
勇気を だして 自分から「おはよう!」と 言ったのに、あいてから 返事が 返ってこなかったら、どうでしょう?
「がーん… ぼくのこと、嫌いなのかな…」
「もう、あの子には あいさつするのを やめよう…」
そんなふうに、傷ついて しまうかもしれませんよね。でも、ちょっと 待ってください! ここで 落ち込む 必要は、1ミリも ありません。
社会言語学の 考えかたでは、あいてが 返事を しなかった 理由には、こんな「裏の じじょう」が あると かんがえられます。
- たまたま ぼーっとしていて、耳に 声が とどいていなかっただけ(朝は みんな 眠いのです!)。
- 「おはよう」と 言われて 嬉しかったけれど、恥ずかしすぎて 声が出なかっただけ。
- 心の中で「あ、おはよう…!」とつぶやいたけれど、口から 出ていなかっただけ。
そう! あいてが 返事を しなかったのは、あなたのことが 嫌いだからではなく、あいての「心の じゅんび」が まだ 出来ていなかっただけなのです。
だから、返事が 来なくても「あ、いまは 心の アンテナが お休み中なんだな」と 思って、気にせず スルーして あげましょう。
あなたが あきらめずに、毎日 フワッと「おはよう!」と 声をかけつづけていると、あいての 心の バリアは 少しずつ とけていきます。そして ある日 とつぜん、「…あ、おはよう!」と、あいての ほうから 笑顔で 返事が 返ってくる 日が 必ず やってきます。
そのときの 嬉しさは、まるで 宝探しで レアな アイテムを 見つけたときのような、最高の 気持ちですよ!
さあ、明日の 朝、さいしょの「魔法」を つかってみよう!
「てきを つくらない 10の 魔法」、その 記念すべき 第1の 魔法は、【自分から 先に「おはよう」と 声をかける】ことでした。
あいさつは、あいてを かえるための もの(コントロール)ではありません。あなた自身が「ぼくは/わたしは、きょうも みんなの 味方だよ!」という 素敵な人(平和の リーダー)になるための 宣言(せんげん)なのです。
自分から 先に 声をかけられる 人は、だれからも 信頼(しんらい)され、大切に されます。だって、いつでも こころの ドアを あけて、笑顔で かんげいしてくれる 人を、きらう 人なんて いないからです。
明日の 朝、がっこうの ちょうばこで くつを はきかえたら、胸を はって、きょうしつの ドアを あけてみてください。
そして、一番 さいしょに 目が あった 友達に、ドレミの「ソ」の 声で、やさしく 言ってみましょう!
「〇〇くん、おはよう!」
その 瞬間、あなたの 周りから「敵」が スーッと 消えて、きょうという 一日が、とびきり 楽しい 冒険(ぼうけん)に かわるはずですよ!