「みんな違っていい」と考える
クラスのなかを見まわしてみると、いろんな人がいますよね。休み時間はいつもドッジボールで元気に走り回る人、図書室の窓ぎわでずっと本を読んでいるのが好きな人、絵を描くのが得意な人、おしゃべりよりも聞くほうが得意な人。
もし、クラスのみんなが「ドッジボール大好き人間」ばかりだったら、どうなるでしょう? 図書室はいつもガラガラで、静かに読書をしたい人にとっては、ちょっと息がつまりそうな教室になってしまいますよね。逆に、全員が本好きでおとなしい人ばかりだったら、運動会の応援団はどうなるでしょう? 想像しただけで、すこしハラハラしませんか。
そう、人間の世界は、一人ひとりがバラバラだからこそ、うまく回っているのです。文化人類学(ぶんかじんるいがく)という、世界中の人間や社会のくらしを調べる学問があります。この学問のとても大切な考え方に、「どの人間の文化や考え方も、それぞれに価値があって、どれが上でどれが下ということはない」というものがあります。
文化人類学の大きな発見は、「人間のあたりまえは、育った環境やグループによって全くちがう」ということです。あなたが「ふつう」だと思っていることは、実は世界中から見たら、ほんの一つの「たまたま」かもしれません。このことが分かると、自分とちがう友だちに出会ったとき、「まちがっている」のではなく、「おもしろい!」と思えるようになります。今回は、自分とちがう友だちと、もっと深く仲良くなるための「ちがいを認め合う力」についてお話しします。
「ちがい」を面白がる心のレンズをきたえよう
クラス替えがあったときや、席がとなりの人と初めて話すとき、少しドキドキしませんか? 「どんな人だろう」「気の合う人かな」と心配になることもあるでしょう。そんなとき、私たちの心の中には、無意識のうちに「自分と似ている人=安心できる」「自分とちがう人=ちょっとこわい」という小さなレンズがはめられてしまいます。
でも、文化人類学の専門家である「フィールドワーカー(現地調査をする人)」たちは、自分とは全くちがう国や地域のくらしの中に入っていくとき、このレンズをはずすトレーニングをします。彼らは、自分の「あたりまえ」を一度わきに置いて、目の前の人たちの行動を「なぜこの人はこうするんだろう?」と、ワクワクしながら観察するのです。
これを学校生活に当てはめてみましょう。例えば、給食の時間がわかりやすい例です。あなたは牛乳をすぐに飲み終わる派なのに、となりの席のAくんは、のこり五分になってもまだ半分残しているとします。ここで「遅いな、早く飲めばいいのに」と思うのは、自分の「あたりまえ」のレンズで見ている状態です。
でも、文化人類学のレンズに切り替えると、こう見えてきます。
- 「あ、Aくんは一口ずつしっかり味わって食べるタイプなんだな」
- 「お肉をさいごにとっておくみたいに、好きなスープをていねいに飲んでいるんだな」
- 「もしかしたら、おなかの調子を考えてゆっくり食べているのかもしれないな」
このように、「ちがい」を責めるのではなく、「新しい発見だ!」とおもしろがる心を持つこと。これが、だれからも好かれる「神」コミュニケーションの第一歩です。
「みんな同じ」を目指すと疲れてしまう理由
時々、「クラスの全員と仲良くしなければならない」「みんなと同じように意見をそろえなければならない」と考えて、心が疲れてしまう人がいます。係の仕事を決めるときや、グループ活動の話し合いのとき、「本当はこっちの意見がいいけれど、みんなとちがうから言わないでおこう」と我慢した経験はありませんか?
実は、文化人類学の研究から見ると、「みんなが全く同じ意見を持つグループ」は、変化にとても弱いということがわかっています。なぜなら、全員が同じ考えだと、新しいアイデアが出なかったり、トラブルが起きたときに全員で同じまちがいをしてしまったりするからです。
パズルを思い浮かべてみてください。パズルのピースがすべて同じ形だったら、絵を完成させることはできませんよね。ギザギザしたピースや、まっすぐな端っこのピース、小さく切られたピースなど、バラバラの形をしているからこそ、一枚の大きな絵が完成します。クラスもまったく同じです。
- 意見がどんどん出てアイデアを出す人(アイデアマンのピース)
- みんなの意見を優しく聞いてまとめる人(お世話係のピース)
- 細かいところによく気がついて、ポスターの線をきれいに引く人(職人のピース)
- みんなが疲れたときに、面白いギャグで笑顔にしてくれる人(ムードメーカーのピース)
あなたが「私はみんなとちがうからダメだ」と思う必要は、どこにもありません。あなたがあなたであるだけで、クラスという大きなパズルの大切なピースが一つ、ピタリとはまっているのです。
明日からできる!「ちがいを尊重する」3つのステップ
では、明日からの学校生活で、この「文化人類学的な視点(ちがいを面白がる力)」をどう使えばいいのでしょうか。具体的な3つのステップを見ていきましょう。
ステップ1:「へえ、そうなんだ!」を口グセにする
友だちと話していて、「えっ、信じられない!」「私だったら絶対にそんなことしないな」と思う瞬間はありませんか? そんなとき、言葉のトゲを出す代わりに、「へえ、そうなんだ!」と言ってみましょう。
例えば、友達が「昨日、テレビで全然お笑い番組を見ないで、ずっと電車の図鑑を読んでいたんだ」と言ったとします。「え、お笑い見ないの?もったいない!」と言うのではなく、「へえ、電車好きなんだ!どの電車のページが一番好きなの?」と返してみるのです。これだけで、友だちは「自分の好きなものを否定されなかった」「受け止めてもらえた」と感じて、あなたにぐっと心を開くようになります。
ステップ2:自分の「あたりまえ」を疑ってみる
家でのお手伝いや、ノートのまとめ方、宿題をやるタイミングなど、「これが正しい」と自分が信じ込んでいることはありませんか?
「宿題は学校から帰ってすぐにやるものだ」と思い込んでいると、夜になってから机に向かう友だちを見たときに「だらしないな」と感じてしまうかもしれません。でも、もしかしたらその友だちは、夕方はピアノの練習や習い事で忙しくて、夜のほうが集中できるタイプなのかもしれません。
「私のあたりまえは、みんなのあたりまえとはちがうかもしれないぞ」と気づくだけで、イライラしたり、誰かを責めたりすることが驚くほど減っていきます。
ステップ3:ちがう意見を「お宝」として扱ってみる
係の仕事や、クラスのイベントの話し合いで意見が分かれたとき、それを「めんどくさいトラブル」ではなく、「宝の山」だと思ってください。
文化人類学では、異なる文化が出会うことで、新しい文化が生まれることをとても大切にしています。クラスでも同じです。「全員が賛成」の意見よりも、「私はこう思う」「いや、こっちの方がいいよ」と意見がぶつかったときの方が、最終的により良い計画になります。
「みんなとちがう意見を言ってくれてありがとう。その視点はなかったな!」と言える人は、クラスの中で最高にかっこいいリーダーになれます。周りの人たちは、「この人となら、安心して自分の本当の意見を話せる」と感じ、あなたを深く信頼するようになるでしょう。
「ちがい」は、世界を広げるパスポート
学校という小さな世界から、私たちはやがて大人になり、もっと広い世界へ出ていきます。そこには、言葉のちがう人、考え方のちがう人、生き方のちがう人があふれています。
小学生の今、クラスのなかの「ちょっとちがう友だち」の存在をおもしろがり、大切にすることは、未来の自分への最高のプレゼントです。自分とちがいを面白がれる人は、誰とでも友達になれる魔法のパスポートを持っているようなものです。
明日の朝、教室に入ったら、いつもとすこし違う角度から周りの友だちを見てみてください。「あの子はあんなふうにノートを書いているんだな」「この子はこういうとき、こういう表情をするんだな」と、小さな発見を楽しみましょう。
「みんな違っていい。ちがうからこそ、おもしろい。」
その優しい心を持ったあなたを、きっとみんなが大好きになります。さあ、明日からの学校生活で、あなたの新しいコミュニケーションの旅を始めてみましょう!