消しゴムを落としたら拾ってあげる
きょうの授業中、なんだかあたりがしんとしています。みんな、国語のテストの真最中(まっさの中)です。カリカリ、カリカリと、えんぴつが紙をするおとだけがひびいています。
すると、あなたのすぐとなりの席のともだちが、うっかり「ポロッ」と、消しゴムを机(つくえ)から落としてしまいました。消しゴムは床(ゆか)を転がって、あなたのいすの足もとまでやってきました。
さあ、あなたならどうしますか?
「テスト中だから、先生に見つかったらいやだなあ」
「めんどくさいから、ほっておこうかな」
そんなふうに思って、見ないふりをしてしまうことはありませんか?
でもね、ここでさっと消しゴムをひろって、「はい」と渡してあげられたらどうでしょう。落としたともだちは、「あ、たすかった!ありがとう!」と、心の底からホッとするはずです。そして、あなたを見る目が、きらっと輝くすてきなものに変わるのです。
今回は、ほんの小さな「困っている人をたすける」という行動が、どれほどまわりの人とのきずなを強くするのか、そのヒミツをいっしょに見ていきましょう。
「たすけ合い」のヒミツを大研究!
実は、人間が作った社会のルールを研究する学問(組織社会学)では、この「だれかをたすけること」について、とてもおもしろいことがわかっています。
人間はむかしから、一人だけではいきていけない生き物でした。みんなでグループをつくって、助け合わないと生き残れなかったのです。だから、わたしたちの心の中には、こんなすごいパワーが生まれつきそなわっています。
- 「たすけられたら、お返しをしたくなる」パワー
- 「やさしくされたら、その人が大好きになる」パワー
- 「クラス全体が明るく、安心できる場所になる」パワー
むずかしい言葉で「互酬性(ごしゅうせい)」といったりしますが、かんたんに言うと「おたがいさまのきもち」です。あなたがだれかをたすけると、たすけられた人は「今度は自分が何かしてあげたいな」と思います。これが、クラスみんなの仲をぐっと深める「魔法のスイッチ」になるのです。
小さな親切が、大きな「神」コミュニケーションになる
「でも、先生、ぼく(わたし)はクラスの人気者じゃないし、目立つこともできないよ……」
そう思った人はいませんか? 大じょうぶです。だれからも好かれる「神」コミュニケーションは、大きな声をだしたり、みんなのまえでスピーチをしたりすることではありません。
むしろ、こういう「だれも見ていないような小さな場面」でのやさしさこそが、いちばん人の心にのこるのです。
学校生活の中には、この小さなチャンスがたくさんかくれています。たとえば、こんな場面を思いえがいてみてください。
- 図工の時間に、色えんぴつを床にちらしてしまった子のペンをひろってあげる
- 給食当番のとき、おもい牛乳のケースを運ぶのを「いっしょに持とうか?」と声をかける
- 雨の日に、わすれものをしてこまっている子に「はんぶんこして入ろう」と傘(かさ)をいれてあげる
どうですか? どれも、今日からすぐにできそうなことばかりですよね。
今日からできる!「たすけ船」の出し方
困っている人をたすけたい!と思っても、はずかしくて声が出ないこともありますよね。そこで、学校で今日から使える「3つのステップ」を紹介します。
ステップ1:よくまわりを「見る」こと
クラスのみんなが、どんなことでこまっているかな?と、ちょっとだけアンテナをはってみましょう。
- 落としものをした人(消しゴム、定規、ノート)
- 荷物が多すぎて、ドアを開けられずに困っている人
- ノートの書き方がわからなくて、ページをペラペラとめくっている人
まずは「あ、こまっているな」と気づくことが、すべてのスタートです。
ステップ2:「大丈夫?」の一言からはじめる
見つけたら、大きな声を出さなくてもいいのです。近づいていって、やさしい声でこう言ってみましょう。
- 「大丈夫?」
- 「ひろおうか?」
- 「手伝おうか?」
この一言だけで、相手は「自分のことを見ていてくれたんだ」と、ものすごく安心します。
ステップ3:お返しを求めないこと
ここがいちばんたいせつなポイントです。たすけてあげたときに、「あとでお菓子ちょうだいね」とか「私のこともたすけてよ」と言ってしまうと、ちょっと台無しになってしまいます。
「ありがとう」の言葉が返ってこなくても、「役に立ててよかったな」と心の中でニコッとするだけで十分です。見返りを求めないやさしさは、まわりまわって、かならず大きな好意となってあなたに戻ってきます。
クラスの空気を変えるのは、あなたの一歩
学校は、たくさんの人が集まる小さな社会です。ときには、トラブルがあったり、ちょっぴりいやな気分になったりすることもあるでしょう。
でも、クラスの空気をガラリと変えるのは、むずかしい大がかりな作戦ではありません。
となりの子が消しゴムを落としたとき、さっと手をのばすこと。
「どうぞ」とやさしく手渡してあげること。
たったそれだけのことで、教室の中にパッとあたたかい花がさきます。その小さなやさしさの連鎖(れんさ)が、クラスを「大すきな場所」に変えていくのです。
さあ、明日の学校では、だれの「たすけ船」を出してあげましょうか? あなたのその小さな勇気が、きっとすてきな笑顔の連鎖をまきおこしますよ。