相手の長所を一つは見つけて褒める
クラスのみんなと話しているとき、「この人、ちょっと苦手だな」と感じてしまうことはありませんか? 意見が合わなかったり、いつも自分勝手なことばかり言ったりする相手だと、つい「関わらないでおこう」と思ってしまうはずです。でも、もしその相手と毎日顔を合わせなければならないとしたら、どうでしょう。敵を作らず、穏やかに過ごすための「魔法のステップ」があります。それは、相手の長所を一つだけ見つけて、言葉にして伝えることです。
「好き」にならなくていい。ただ「見つける」だけでいい
誤解しないでほしいのですが、苦手な相手を無理に「大好き」になる必要はありません。心理学の世界には「返報性の原理(へんぽうせいのげんり)」という言葉があります。これは、「相手から親切にされたり、いい言葉をかけられたりすると、自分も相手にお返しをしたくなる」という心の仕組みのことです。
相手のいいところを見つけて褒めることは、あなたから相手に「心のプレゼント」を渡すようなものです。プレゼントをもらって嫌な気持ちになる人は、世界に一人もいません。あなたが「その消しゴム、使いやすそうだね」や「今日の係の仕事、ていねいにやってくれたね」と声をかけるだけで、相手の心の中にある「あなたへのトゲ」が、少しずつ丸くなっていくのです。
「いいところ探し」は、心の探偵になること
では、どうすれば苦手な人の「長所」を見つけられるのでしょうか。コツは、「心の探偵」になって相手を観察することです。ポイントは、大きなことではなく「小さなこと」に注目することです。
- いつもより少しだけ早く教室に来ている
- 貸し借りをするときに「ありがとう」と言っている
- ノートの字を一生懸命書いている
- 休み時間に一人で本を読んでいる(集中力がある証拠!)
- 給食の牛乳をこぼさずに運んでいる
これら全てが、立派な「長所」です。みんな当たり前のようにやっていることかもしれませんが、あえてそこに注目して「すごいね」と伝えてみてください。
「褒める」は、自分を守るための最強の武器
なぜ、苦手な相手を褒めることが「敵を作らない」ことにつながるのでしょうか。行動学の視点で見ると、人間は「自分を認めてくれる人に対して、攻撃的な行動をとりにくくなる」という性質があります。あなたが相手を褒めることで、相手は「この人は、自分の味方かもしれない」と無意識に感じるようになります。すると、あなたに対して意地悪をしたり、無視をしたりする理由がなくなってしまうのです。
これは、あなた自身を守るための「防御の魔法」でもあります。相手を褒めることは、相手のためだけでなく、あなた自身が学校でストレスなく過ごすための、とても賢い作戦なのです。
「褒める」ときの3つのルール
ただ褒めるだけでなく、もっと効果的に伝えるためのルールを教えます。明日から、この通りにやってみてください。
- 「具体的に」伝える:「すごいね」だけだと、相手も「何が?」と思ってしまいます。「その色使い、すごくきれいだね」と、どこが良かったのかをはっきり伝えましょう。
- 「I(アイ)メッセージ」を使う:「私は、あなたの〇〇なところが好きだよ」という伝え方です。「あなたは〇〇だね」と言うよりも、あなたの気持ちとして伝えることで、相手はうれしさを感じやすくなります。
- 「人前」で言う:みんながいる前で褒められると、相手は「認められた!」という強い喜びを感じます。逆に、恥ずかしがり屋さんの場合は、二人きりのときにこっそり伝えてあげるのがベストです。
「そんなこと言えない!」というあなたへ
「苦手な相手を褒めるなんて、なんだか負けたような気がする…」と思うかもしれませんね。でも、考えてみてください。相手を無視したり、嫌いな態度をとったりして、クラスがピリピリする空気を作るのと、一言だけ褒めて穏やかな空気を作るの。どちらの方が「賢い」選択でしょうか。
敵を作らない人は、自分の感情をコントロールできる人です。嫌いな相手であっても、冷静に「この人の良いところはどこかな?」と探せる人は、大人から見てもとてもかっこいい存在です。それは、あなたが自分の心の中に「余裕」を持っているという証拠でもあります。
明日の学校で、まずは誰か一人、苦手だなと思う人の「小さな良いところ」を探してみてください。そして、勇気を出して一言だけ声をかけてみましょう。「その筆箱、かっこいいね」それだけで、あなたの学校生活は、昨日までとは少し違う、明るいものに変わるはずです。
敵を作るのは、とても簡単です。でも、敵を作らずに、みんなとほどよい距離で仲良く過ごすことは、あなたにしかできない「賢い魔法」なのです。さあ、明日はどんな「良いところ」が見つかるでしょうか。探偵になったつもりで、教室を見渡してみてくださいね。