その場にいない人のうわさ話をしない
「ねえ、聞いてよ。今日の体育の後さ、Aくんがすっごい変な走り方してなかった?」
給食のじゅんびをしているとき、となりの席の友達が小声で話しかけてきました。あなたなら、どうしますか?
「あー、してたしてた!なんかロボットみたいですごく笑っちゃったよね」
思わず、こんなふうに話を合わせてしまったことはありませんか? そのとき、Aくんはその場にいません。悪口を言っているつもりはなくても、本人がいないところでその人の姿をまねしたり、おかしなところを話題にしたりすること。これが「うわさ話」のスタートです。
「みんなも言ってるからいいか」
「ちょっと盛り上げるための冗談だし……」
そう思っていませんか? でも、ちょっと待ってください。組織社会学(そしきしゃかいがく)という、人と人とのグループの仕組みを研究する学問では、この「いない人のうわさ話」が、あなたのまわりの人間関係クラッシャーになってしまうことが証明されています。
なぜ「いない人のうわさ話」をしてはいけないの?
組織社会学では、人が集まってできるグループ(クラスや班、部活など)が、どうやったら長もちするか、みんなが安心して過ごせるかを研究しています。
その研究の中でわかった、とても大切なルールがあります。それは、「グループの安心感は、おたがいへの信頼でできている」ということです。
想像してみてください。今、あなたと仲良くおしゃべりしている友達がいます。その友達は、あなたにはとってもやさしい笑顔を向けてくれます。でも、あなたがトイレに立って席をはずしたとき、その友達はちがうグループの子に、あなたのテストの点数のことや、ちょっとした失敗談をヒソヒソと話していました。
それを後から知ったとき、あなたはその友達をどう思うでしょうか?
「怖っ……! 私がいないところでは、私の悪口も言ってるんだ……」
そう思いますよね。一度そう思ってしまうと、その友達の笑顔をもう素直に見られなくなってしまいます。これが、うわさ話がもたらすこわい効果です。
「悪口」ではなくても、うわさ話はキケン
「ねえ、Bちゃんって、昨日も同じくつ下だったよね」
「Cくんのノート、字がきたなすぎて読めないってみんな言ってるよ」
こういう話は、悪口のつもりはなくて「ただの事実」のつもりかもしれません。でも、組織社会学の視点で見ると、これらはすべて「その場にいない人を、みんなで面白がる(あるいは下に見る)ための道具」に使われています。
いない人を話題にすることで、話している人たちは「私たちは同じグループだよね」「私たちはおかしいところなんてないよね」という、一時的な安心感(なかま意識)を手にいれようとします。これを社会学では「いけにえの仕組み」と呼ぶことがあります。だれかをちょっと下げることで、自分たちのポジションを守ろうとする心理です。
でも、このやり方でできた「なかま」は、とってももろいもの。なぜなら、「次は自分の番かもしれない」という不安が、心のどこかにずっと残るからです。本当に好かれる子は、そんな不安定な方法でなかまを作りません。
明日からできる! うわさ話の魔法の断り方
「でもさ、友達がうわさ話をはじめたら、どうすればいいの? 無視したらきらわれちゃうかも……」
そんな心配をしたあなたに、今日から使えるとっておきの「3つの魔法」を教えます。きつい言葉を使わずに、自然にうわさ話を終わらせるテクニックです。
- 魔法1:話題をそっと変える(ジャンプ作戦)
- 魔法2:肯定も否定もしない(スルーの術)
- 魔法3:ほめ言葉に変換する(ひっくり返しマジック)
友達が「ねえ、Dくんってさ……」と言い出したら、まったく別の明るい話題にジャンプしちゃいましょう。「そういえばさ! 今度の図工の時間の準備、もう終わった?」「ねえ、今日の給食のデザートってプリンだよね!」と、パッと笑顔で別の話にするのです。大体の人は、そのまま新しい話に乗っかってきます。
もし、どうしても話題を変えられないときは、うなずくのをやめて、目を合わせずに「ふーん」「そうなんだ」と、風のようにサラッと受け流します。ここで「それひどいよ!」と正義感を出して怒ってしまうと、相手もムッとしてしまうことがあります。笑顔や相づちで「私はこの話には興味がありませんよ」というサインを出すのが、一番平和で大人なやり方です。
上級者向けの魔法です。もし、だれかのちょっとした失敗のうわさが出たら、それをポジティブ(前向き)な言葉にひっくり返してみましょう。
例えば、「Eちゃんって、いつも係の仕事を忘れてるよね」といううわさが出たとします。そこでこう言うのです。
「あ、でもEちゃん、前回係の仕事やったとき、すごく丁寧だったよね!」
「忘れちゃったこともあるけど、今日あとで声かけてあげよっか!」
この一言で、その場の空気がパッと明るくなります。うわさ話をしていた友達も、「あ、そっか」とハッと気づくはずです。うわさ話を、だれかをほめるチャンスに変えてしまうのです。
「あの人には、自分のいないところでも悪口を言われない」という絶対の安心感
学校生活の中で、一番ステキなことは何でしょうか?
テストで100点をとること? 足が一番速いこと? もちろんそれもすごいことです。でも、何よりも心強いのは、「このクラス(グループ)には、私のいないところで私の悪口を言う人がいない」という安心感の中で過ごせることです。
組織社会学の言葉をかりるなら、あなたが「その場にいない人のうわさ話をしない人」になることは、あなたのまわりに「絶対的に安全で、あたたかい空間」を作ることに直結しています。
あなたが友達のいないところで、その子の悪口を言わない。それどころか、いないところでその子のことを悪く言われそうになったとき、話を合わせなかったり、そっと話題を変えたりする。
そんなあなたの姿を、まわりの人はちゃんと見ています。
「この子は、私がいないところでも、きっと私の味方でいてくれる」
そう周りに感じさせることができる人は、クラスの中で一番信頼され、たくさんの人に好かれます。だれかの秘密や失敗をネタにして盛り上がるグループよりも、おたがいのよいところを認め合えるグループのほうが、何倍も楽しくて、ずっとずっと長もちするからです。
さあ、今日の放課後、そして明日からの学校生活。だれかがヒソヒソと「いない人のうわさ話」をはじめたら、心の中でこうつぶやいてみましょう。
「私は、そんなもったいない時間には付き合わないぞ。みんなが安心して笑えるほうを選ぼう!」
その小さな選択の積み重ねが、あなたを「だれとでも深く信頼し合える、本当の人気者」にしてくれます。