「悪口のグループ」に入りたくない!そんなときの魔法の言葉
教室のすみや、給食の時間、はたまた放課後の公園で、こんな場面に出会ったことはありませんか?
「ねえねえ、聞いてよ! Aくんって、いつもお母さんに怒られてるんだって。なんかダサくない?」
クラスの友だちが、楽しそうにだれかのうわさ話や悪口を言っている。あなたもそのグループの近くにいて、みんながこっちを見ている。「ねえ、そう思わない?」と同意を求められたとき、あなたならどうしますか?
「ううん、そんなことないよ」と堂々とばっさり言い返せたらカッコいいけれど、「仲間はずれにされるのがこわいな……」「気まずい雰囲気になったらいやだな……」とドキドキして、つい愛想笑いをしてしまったり、「そうだね」と同調してしまったりすることはありませんか?
そのあとで、「あーあ、また言いたくない悪口に付き合っちゃったな……」と、胸の奥がチクチクと痛む。夜、布団の中で「どうすればよかったんだろう」と後悔した経験がある人もいるかもしれません。
大丈夫。安心してください。今日から使える「友だちの機嫌もそこねず、自分も悪口に加わらないための、とっておきの魔法」があるのです。
それが、「それは違うんじゃないかな」とやんわり伝える技術です。
どうして「悪口」に巻きこまれちゃうの?(組織社会学のふしぎ)
そもそも、どうして人は、本当はそんなことしたくないのに、友だちの悪口に合わせちゃうのでしょうか。「気が弱いからかな」「勇気がないからかな」と思っていませんか?
実はこれ、あなたのせいではありません。人間がもっている「グループの生き方」のせいで起こることなのです。
これを勉強する学問に、「組織社会学(そしきしゃかいがく)」というものがあります。ちょっとむずかしい名前ですが、かんたんに言うと、「人間が集まると、まわりの人に合わせようとする強力なパワーがはたらく」ということを研究する学問です。
組織社会学では、人間には「自分たちのグループの中にいたい」「仲間はずれにされたくない」という強いきもち(これを「同調圧力(どうちょうあつりょく)」や「内集団ヒイキ」と言います)があると教えています。
クラスというグループの中で、「みんながAくんの悪口を言っている。ここで自分だけ『そんなことないよ!』と怒ったら、今度は自分がみんなから嫌われて、グループから追い出されてしまうかもしれない……!」
このキケンをしらせるアラームが、私たちの頭の中でピカピカと光るのです。だから、体が勝手に「そうだよねー」と言わせてしまう。悪口に参加している子たちも、実は心のどこかでは「本当はこんなこと言いたくないな」と思っていることが多いのです。みんな、仲間はずれがこわくて、人の悪口という「危険なチケット」をまわし合っているだけなんですね。
この仕組みがわかると、対策が見えてきます。グループのつながりを壊さずに、でも自分は悪口の輪からスッと抜け出すには、「頭のいい交わし方」を使えばいいのです。
きらいな自分にならないための「やんわり反論」3つのステップ
では、具体的にどうすればいいのでしょうか? 友だちの悪口をピタッと止めさせつつ、自分も嫌われないための「やんわり伝える魔法」を3つのステップで紹介します。
ステップ1:まずは相手の気持ちを受けとめる(クッション言葉)
友だちが「Aくんってだらしないよねー!」と悪口を言ってきたとき、いきなり「そんなこと言うのやめなよ!」と怒るのはNGです。それだと、相手は「なんだよ、せっかく盛り上がろうとしたのに!」と怒りだして、あなたを攻撃してくるかもしれません。
まずは、相手の気持ちを一度受け止める「クッション」を置きます。これが組織社会学でいう「相手との関係をキープするテクニック」です。
- 「そう見えることもあるよね」
- 「みんなはそう感じたんだね」
ポイントは、「Aくんがだらしない」という悪口の内容には賛成していないけれど、「そう思ったという気持ち」には理解を示している、というところです。
ステップ2:「ちがう角度(かど)」の意見をそっとそえる
クッションを置いたら、すかさず「ちがう視点(みかた)」をやさしく差し出します。ここでタイトルにもある「それは違うんじゃないかな」を、攻撃的ではなく、ふんわりと表現します。
- 「でもさ、Aくんって、図工の時間はすごく一生懸命に片づけ手伝ってくれるよね」
- 「昨日、ノートの貸し借りで助けてもらったから、ぼくは優しいところもあると思うな」
- 「たまたま今日はうまくいかなかっただけかもしれないよ」
ここで大事なのは、「相手を言い負かさないこと」です。「お前の言っていることは間違っている!」と正義のヒーローのように戦うと、相手ははずかしくなって余計に攻撃的になります。そうではなく、「ぼく(わたし)は、こういう良いところも見たよ」と、自分だけの意見としてやさしく伝えるのがコツです。
ステップ3:話をスッと別の楽しい話題にかえる
ちがう意見を言ったあと、その場が気まずい空気になりそうになったら、すかさずトピックを変えてしまいましょう! 悪口のエネルギーを、別の楽しいエネルギーに変換するマジックです。
- 「そういえばさ、今日の給食のデザート、プリンだったよね! あれ美味しかったなー」
- 「あ、そうそう、次の理科の実験、なにやるか知ってる?」
- 「やばい、宿題まだ終わってないんだよね……手伝ってよ!」
この3つのステップをスムーズにやると、まわりの友だちは「あ、この子は悪口には賛成しないんだな」「でも、自分の意見をやさしく言ってくれるだけなんだな」と自然に理解します。あなたを嫌いになるどころか、「自分の意見をしっかりもっていて、やさしい子だな」と、かえって一目置かれるようになるのです。
明日から使える!学校でのリアルな会話シミュレーション
では、実際に学校でどんなふうに言えばいいのか、2つのシーンをためしてみましょう。
シミュレーション1:係の仕事についてのグチ大会のとき
場面:放課後の教室。「Bちゃん、今日の黒板消し忘れてた! ほんと使えないよねー、サボりすぎ!」と、クラスの女子たちがBちゃんのグチを言いはじめたとき。
あなた:「あー、たしかに黒板残ってるとびっくりするよね(ステップ1:共感する)。でもさ、Bちゃん、今日の掃除の時間はほうきでめちゃくちゃ教室のすみまでキレイにしてくれてたよ(ステップ2:ちがう一面を伝える)。あ、そうだ! 明日の係の分担ってどうなってるんだっけ? 私たち、次の理科室の掃除だよね?(ステップ3:話題を変える)」
結果:グチを言っていた子たちも「あ、そういえばそうだったね!」と、すぐにBちゃんの悪口を忘れて、次の話にうつることができます。Bちゃんをきずつけることもなく、悪口のグループの空気をきれいに変えることができました!
シミュレーション2:ドッジボールのチームわけでのイライラ
場面:昼休み、ドッジボールの練習中。「Cくんがボールを落としたから負けたんだよ! なんであんなやつと同じチームなんだろ、お荷物じゃん」と、男子たちがイライラしてCくんのいないところで悪口を言っているとき。
あなた:「みんな、勝負だから悔しいよねー(ステップ1)。でもCくん、外野から一生懸命ボールパスしてくれてたじゃん。それに、足は一番はやいから、次の試合では作戦変えたらうまくいくかもよ?(ステップ2)。それより、次の作戦みんなで考えよーぜ!(ステップ3)」
結果:みんなも「確かに、あいつ足ははやいよな」と思い出し、チームの空気がギスギスから「次がんばろうぜ!」という前向きな雰囲気に変わります。
「悪口に流されない人」は、クラスのいちばんの安心基地になる
人に流されないで、「それは違うんじゃないかな」をやんわりと言える人は、クラスの中でどんな存在になるでしょうか。
組織社会学では、こういう人を「オピニオン・リーダー(影響力を持つ人)」や、みんなのギスギスを和らげる「調整役(ちょうせいやく)」と呼びます。
みんな、本当は悪口を言いたくありません。悪口を言っていると、心がトゲトゲして、だれかを攻撃している自分も大嫌いになってしまいます。だからこそ、そのギスギスした空気からすっと救い出してくれる人、つまり「悪口に同調しない、でも優しい人」の存在を、心の底ではみんな求めているのです。
「この子に話すと、いやな気持ちにならないな」
「この子といると、だれの悪口も言わなくていいから、すごくホッとするな」
そう思われる人は、自然とクラスの人気者になり、本当に信頼できる、ステキな友だちがたくさん集まってきます。
明日、学校でまた「ねえ、聞いてよ」とだれかの悪口がはじまったら、心の中で深呼吸をしてみましょう。
「私は、私のたいせつな言葉を、悪口には使わない」
そして、クッションを置いて、ちがう一面をやさしく伝えて、パッと楽しい話題に変えてみる。その小さな一歩が、あなたを「だれからも好かれ、自分も大好きな自分」にしてくれる、最高の魔法なのです。