「あの子、ちょっと変だよね」と言われたら、どうする?
休み時間、仲良しの友達と3人で楽しくおしゃべりをしていたときのことです。急にそのうちの1人が、声をひそめてこんなことを言いました。
「ねえ、となりの席の〇〇くんって、ちょっと変だよね。いつも係の仕事をやらないし、話しかけても無視するんだよ」
さあ、あなたならこのとき、どんなお返事をしますか?
「う、うん、そうだね……」と、話を合わせてうなずいてしまうでしょうか。それとも、「そんなことないよ!」と怒って言い返すでしょうか。あるいは、何も言わずにただだまって、気まずい空気に耐えるでしょうか。
学校生活の中では、このような「だれかの陰口(かげぐち)」や悪口の場面に、どうしても出会ってしまうことがあります。クラス、係のグループ、部活動、そして放課後の遊びの時間。だれかがその場にいない人のことを悪く言っているのを聞くのは、とてもハラハラしますし、心がチクチク痛みますよね。
「話を合わせないと、次は自分が仲間はずれにされるかもしれない」
「でも、陰口に一緒になってうなずくのは、なんだかずるい気がする」
そんなふうに悩んでしまうのは、あなたがとても優しくて、友達思いの心を持っている証拠です。実は、この「陰口のピンチ」を上手に切り抜けることができるようになると、クラスの中で「この人と一緒にいると、なんだかホッとするな」「この人は絶対に信頼できるな」と思われる、とびきり「感じがいい人」になれるのです。
今回は、だれかの陰口が始まったときに、自分の心を守りながら、周りの友達とも気まずくならずにその場を切り抜ける「魔法のルール」を、脳と心の科学的なヒミツと一緒に解き明かしていきましょう!
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脳科学でわかった! 悪口は「自分に毒を盛る」のと同じ
まず、あなたにどうしても知っておいてほしい、人間の「脳」のびっくりするようなヒミツがあります。脳科学の研究によって、「人間の脳は、主語(だれが言っているか、だれについて言っているか)を理解するのが苦手」ということが分かっているのです。
どういうことか、分かりやすく説明しますね。
あなたが友達と一緒になって、「〇〇さんって、本当にいじわるだよね」と陰口を言ったとします。このとき、あなたの頭の中にある脳は、次のように言葉を受け取ってしまいます。
- あなたが言った言葉:「〇〇さんは、いじわるだ」
- あなたの脳の勘違い:「私は、いじわるだ」
なんと、脳は「〇〇さん」という主語をカットしてしまい、「いじわるだ」という言葉だけを、自分自身に向けて言われた言葉だと勘違いしてしまうのです!
脳が勘違いをすると、頭の中で「ストレスホルモン」という、体を攻撃するイライラ物質がドバドバと出てしまいます。その結果、だれかの悪口を言っているはずなのに、なぜか自分の心臓がドキドキしてきたり、嫌な気分になったり、夜ぐっすり眠れなくなったりします。つまり、だれかの陰口を言うことは、相手を攻撃しているようでいて、実は「自分の脳に毒を盛って、自分を傷つけている」のと同じことなのです。
これは、自分が悪口を「言う」ときだけではありません。だれかが言っている悪口を「聞く」だけでも、脳は同じようにストレスを感じて、傷ついてしまいます。だからこそ、自分の大切な脳と心を守るために、陰口には絶対に参加してはいけないのです。
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心理学でなぞ解き! なぜ人は陰口を言いたくなるの?
では、どうして人は、自分を傷つけることになるとも知らずに、だれかの陰口を言いたくなってしまうのでしょうか。心理学の目線で、その心のヒミツをのぞいてみましょう。
人が陰口を言いたくなる理由は、大きく分けて3つあります。
① 自分に自信がないから(安心したい)
自分に自信がない人は、だれかを「ダメな人」「変な人」に仕立て上げることで、「自分の方が優れている」「自分はちゃんとしている」と安心したいのです。つまり、陰口を言う人は、心の中で「だれか私を認めて!」と泣いている、少し寂しい人なのかもしれません。
② 「みんなと同じ」でいたいから(同調圧力:どうちょうあつりょく)
学校には「みんなと同じ意見だと安心する」という心のブレーキが働きやすい雰囲気があります。1人が「あの子、変だよね」と言うと、周りの人も「そうだね」と言わなければいけないような気がして、ついつい合わせてしまうのです。
③ 仲間を増やしたいから
「共通の敵」を作ると、人間は手っ取り早く仲良くなれるような気がしてしまいます。しかし、これは心理学で「偽りの親密感(いつわりのしんみつかん)」と呼ばれる、とてももろい関係です。悪口でつながったグループは、誰かがいなくなると、すぐに次のターゲットを探して悪口を言い始めるため、いつもお互いを疑い合ってビクビクしています。
クラスのみんなは、陰口を言っている人のことを、実はよく見ています。
「〇〇ちゃんは、となりの席の子の悪口を言っていたな。ということは、私がいないところでは、私の悪口も言っているかもしれないな……」
心理学では、陰口を言う人は、周りからの信頼をどんどん失っていくことが分かっています。反対に、陰口に流されず、いつもおだやかに人の良いところを見ている人は、クラスの中で「この人は裏表がない、本当に安心できる人だ」という、強力な信頼を手に入れることができるのです。
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明日から使える! 陰口をサラッとかわす「3つの魔法のバリア」
陰口に参加するのが良くないことは分かっても、いざその場面になると、「なんて言って断ればいいか分からない!」と困ってしまいますよね。そこで、明日から学校で使える、相手を怒らせずに陰口をサラッとかわす「3つの魔法のバリア」を伝授します!
魔法1:オウム返しでスルーする「オウムの盾(たて)」
友達が「〇〇ちゃんって、掃除のとき全然働かないよね!」と同意を求めてきたら、その意見に「そうだね」と乗っかってはいけません。かといって「そんなことないよ!」と否定すると、ケンカになってしまいます。
そこで、相手が言った「事実」の言葉だけを、オウムのようにそのまま繰り返してみましょう。
- 友達:「〇〇ちゃんって、掃除のとき全然働かないよね!」
- あなた(オウムの盾):「あ、〇〇ちゃん、今日はあっちのほうを掃いてたよ」
- 友達:「〇〇くんって、いつも宿題忘れてきてバカだよね」
- あなた(オウムの盾):「へえ、〇〇くん、宿題忘れちゃったんだね」
このように、「悪口(いじわるだ、バカだ、変だ)」という相手の主観(思い込み)はスルーして、「掃除をしていた」「宿題を忘れた」という「ただの事実」だけを繰り返します。これを使うと、相手は「あれ? 同意してくれないな」と気づき、自然と陰口をやめていきます。
魔法2:話題をワープさせる「ワープトンネル」
陰口の空気がどんよりと漂い始めたら、全く関係のない、明るくてみんながワクワクする話題にワープしてしまいましょう!
- 友達:「ねえ、〇〇先生ってさ、今日の授業ちょっと怒りっぽくてうざくなかった?」
- あなた(ワープトンネル):「あ、そういえばさ! 今日の給食のカレー、ナンがつくんだっけ? 私、めっちゃ楽しみなんだよね!」
- 友達:「えっ、あ、うん、ナンつくよ。私もカレー好き!」
ポイントは、「あ、そういえば!」と少し大きめの声で、楽しそうに話をつなげることです。人間の脳は、新しい楽しい刺激にとても弱いため、楽しそうな話題が出ると、それまで言っていた陰口のことを一瞬で忘れて、新しい話題に乗っかってしまうのです。
魔法3:いいところ探しの「キラキラメガネ」
もし、あなたに少しだけ勇気があるなら、陰口の中に、相手の「良いところ」を1つだけポトンと落としてみましょう。これを「キラキラメガネ」と呼びます。
- 友達:「〇〇くんって、いつも係の仕事遅くてイライラする!」
- あなた(キラキラメガネ):「たしかにのんびりしてるよね。でも、〇〇くんが描いた係のポスター、すごく絵が上手でびっくりしちゃった!」
悪口に対して、1つだけ「良いところ」を付け足すことで、その場のどんよりした空気が一瞬でパッと明るくなります。これをされた友達も、「あ、そっか。そういう良いところもあるんだな」と、トゲトゲした心が丸くなっていきます。
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もし、自分が陰口を言われていると知ったら?
最後に、もしもあなたが、だれかから陰口を言われていることを知ってしまったときの、心の守り方をお話しします。
自分の悪口を言われていると知ったら、目の前が真っ暗になって、学校に行くのが怖くなってしまうかもしれません。でも、絶対に忘れないでください。陰口を言う人は、あなたに問題があるから言っているのではありません。先ほどお話ししたように、その人自身の心の中に「自信がない」「イライラしている」という問題があるから、あなたをターゲットにして、うっぷんを晴らそうとしているだけなのです。
ですから、陰口を言われたときは、心の中でこうつぶやいてみてください。
「あの人は今、脳が疲れていて、かわいそうな状態なんだな」
そして、そんな人のためにあなたの貴重な時間を使うのはやめましょう。おうちで大好きなペットと遊んだり、お母さんのお手伝い(お皿洗いやお掃除など、体を動かすお手伝いは脳をスッキリさせる効果があります!)をしたり、自分の好きな読書やゲームに熱中したりして、あなたの脳を「楽しい!」でいっぱいに満たしてあげてください。
あなたがいつも通り、明るく、目の前の友達や家族を大切にしていれば、周りのみんなは必ず「あなたがいかに素敵か」を分かってくれます。悪口の嵐(あらし)は、そっとやり過ごせば、やがて消えていくものです。
誰かの陰口に参加しないこと。それは、あなた自身の心と、大切な友達との絆(きずな)を守るための、最強の「思いやりの行動」です。明日、もし学校でそんな場面に出会ったら、ぜひ「オウムの盾」や「ワープトンネル」を、心の中でこっそり使ってみてくださいね。あなたのクラスが、もっと優しくて安心できる場所になりますように!