イラッとしたら10数えてから口を開く
学校で過ごしていると、ときどき「ムカッ!」としたり、「イラッ!」としたりすることがありますよね。
たとえば、こんな場面に心当たりはありませんか?
- 掃除の時間:自分はいっしょうけんめい床をふいているのに、となりの班の友達がほうきでお侍さんのマネをして遊んでいる。
- 給食の時間:「早く配ってよ!」と、後ろの席の友達から強めに言われた。
- 係活動(かかりかつどう):休み時間に集まってポスターを描く約束だったのに、「めんどくさいからやーめた」とすっぽかされた。
- 家でのひととき:大切にしていたカードやドミノを、弟や妹にぐちゃぐちゃに壊された。
こんなとき、胸の奥から熱いエネルギーが「メラメラッ!」とわき上がってきて、つい「ちょっと! なんでやらないのよ!」「うるさいな! 今やってるでしょ!」「サイテー!」なんて、トゲのある言葉をきつく言い返してしまったことはないでしょうか。
言い返した瞬間は、なんだかすっとした気持ちになるかもしれません。けれど、そのあとの教室の空気を思い出してみてください。お互いにプイッと横を向いて重たい空気になり、友達との間に「見えないかべ」ができてしまった……そんな経験があるかもしれませんね。
相手にトゲのある言葉をぶつけると、相手もトゲのある言葉をかえしてきます。こうして「敵」が生まれてしまうのです。
でも、安心してください。今日からみなさんは、「イラッとしたら10数えてから口を開く」という、とっておきの魔法を使えるようになります。この魔法を使えば、どんなにイライラする場面でも、敵をつくらずに自分の気持ちをスマートに伝えられるようになりますよ!
脳の中で起きている「怪獣」と「博士」のたたかい
「でも、イラッとした瞬間って、がまんしようと思っても勝手に口が動いちゃうんだよ!」と思う人もいるでしょう。実はそれ、みなさんの頭の中にある「脳(のう)」の仕組みのせいなのです。みなさんが悪いわけではありません。
ここで、少しだけ「脳のひみつ(脳科学)」のお話をしましょう。
私たちの頭の中には、気持ちを担当する「2つのキャラクター」が住んでいます。
① あばれんぼうの「あかちゃん怪獣」(感情の脳)
頭の奥のほうにある「扁桃体(へんとうたい)」という場所です。ここは、危険を感じたり、嫌なことがあったりすると、一瞬で「キーッ!」と怒り出す、素早くてあばれんぼうな怪獣です。みなさんが「イラッ!」とした瞬間、まずこの怪獣が大あばれして、トゲトゲの言葉を口から飛び出させようとします。
② しずかで頭のいい「ものしり博士」(思考の脳)
おでこの裏側にある「前頭前野(ぜんとうぜんや)」という場所です。ここは、「いま、なんて言えばいいかな?」「喧嘩にならない方法は何かな?」と、じっくり考えて正しい答えを出してくれる、とても賢い博士です。
ここからが、一番大切なポイントです!
「あかちゃん怪獣」は、イラッとした瞬間に0.1秒で目を覚まします。ものすごいスピードです。
いっぽうで、頭のいい「ものしり博士」がしっかり目を覚まして、「待った! 落ち着いて話し合おう」とブレーキをかけるまでには、約6秒から10秒の時間がかかるのです。
つまり、イラッとしてすぐに口を開いてしまうと、「ものしり博士」がまだ寝ているため、「あかちゃん怪獣」のあばれる言葉がそのまま外に出ていってしまうのです。これが、トラブルが起きて敵ができてしまう大きな原因だったのです。
だからこそ、「10秒間」の時間をかせぐことが、ものしり博士を呼び起こすための最大の鍵になります!
だれでもできる!「10秒カウント」3つの最強テクニック
「イラッとしたら、心の中で1から10まで数えればいいんだね!」
その通りです。でも、イライラしているときに「いち、に、さん……」と早口で数えても、なかなか怪獣は落ち着いてくれません。そこで、学校でイラッとしたときにすぐに使える、3つの「最強の数え方」をお教えします。
テクニック1:深呼吸(しんこきゅう)カウント
息をゆっくり吐きながら数える方法です。体の中に空気をたくさん出し入れすると、脳に酸素が届いて、博士が早く目を覚まします。
- 「すう〜っ」と鼻から息を吸う。
- 口から「はぁ〜っ」と息を吐きながら、心の中で「1……2……3……」とゆっくり数える。
- これを3回くりかえすと、ちょうど10秒くらいになります。
ポイントは、「吐く息」を長めにすることです。体がリラックスして、胸の熱い熱がすーっと冷めていくのが分かりますよ。
テクニック2:ポケット指おりカウント
どうしてもイライラが収まらないときは、手を使ってみましょう。ズボンのポケットの中や、机の下で、だれにも気づかれないように指を1本ずつ折っていきます。
- 親指を折りながら「1」
- 人差し指を折りながら「2」
- 中指を折りながら「3」……
両手の指を全部折り終わったら、ちょうど10秒です。自分の指の動きに集中することで、あばれていた「あかちゃん怪獣」の注意が指先に向かい、怒りがどんどん小さくなっていきます。
テクニック3:安全バリア・カウント
自分のまわりに、透明な「魔法のバリア」をはるイメージをする方法です。
嫌なことを言われたら、心の中で「バリア発生! ただいま10秒間の安全タイムです」と唱えます。そして、バリアの中で「1、2、3……」と数えます。相手の言葉はバリアにはじかれて、自分には届きません。10秒経ったら、バリアを解除して口を開きます。
10秒数えたあとに使う「敵をつくらない言葉の魔法」
10秒数えて「ものしり博士」が目を覚ましたら、次は「どんな言葉を使うか」です。せっかく10秒待てたのですから、相手を怒らせずに自分の思いを伝える「魔法の言い方」を使ってみましょう。
言葉のコツは、たったひとつ。「主語(しゅご)を自分にする」ことです。
イラッとしたとき、私たちはつい「あなたがちゃんとやらないからでしょ!」「あなたがうるさいんだよ!」と、「相手(あなた)」を主語にして責めてしまいます。これを聞いた相手は、「なんだよ!」と反発したくなってしまいます。
これを、「わたし」を主語に変えてみましょう。
【実践(じっせん)例】学校のよくあるシーンでくらべてみよう!
みんなどえらい差が出る! 言い方のチェンジ術
- 掃除をやらない友達へ
- ✕「(あなたが)遊んでないで、早く掃除しなよ!」
- ◯「(わたし)一人だと広くて大変だから、一緒に手伝ってくれるとうれしいな」
- 給食の時間に「早くして」と言われたとき
- ✕「(あなたが)急かすから失敗するんだよ!」
- ◯「(わたし)こぼさないように気をつけて配っているから、もう少しだけ待ってね」
- 作った作品をこわされたとき
- ✕「(あなたが)せっかく作ったのに何するのさ!」
- ◯「(わたし)時間をかけて作ったから、壊れちゃってすごく悲しいな」
いかがですか? 「わたし」を主語にすると、相手を攻撃(こうげき)せずに、自分の本当の気持ち(困っている、悲しい、手伝ってほしい)を伝えることができますね。
「ものしり博士」が目を覚ましていれば、このような思いやりのある言葉が、自然と口から出てくるようになります。
もしも「10秒数える前に言っちゃった!」ときは?
ここまで読んでくれたみなさんは、「よし、明日から10秒数えるぞ!」と張り切ってくれているかもしれません。でも、時にはうっかり10秒数えるのを忘れて、トゲのある言葉を言ってしまうこともあるでしょう。人間だもの、誰だって失敗はあります。
そんなときも、落ち込む必要はありません! 「失敗した!」と気づいた瞬間が、ものしり博士が目を覚ました合図です。
もし10秒待てずにきつい言葉を出してしまったら、次の「3秒のおあやまり魔法」を使いましょう。
「ごめん! さっきのは言いすぎちゃった。言い直すね」
これだけで大丈夫です。自分の間違いに気づいてすぐに言い直せる人は、クラスの中でも飛びきりかっこよく、みんなから信頼(しんらい)される人になれます。
明日学校でやってみよう!「10秒の魔法使い」へのチャレンジ
怒りという感情は、けっして「悪いもの」ではありません。大切な自分の気持ちを守るための、大切なエネルギーです。大切なのは、そのエネルギーで友達を傷つけないように、上手にコントロールすることです。
明日、学校に行ったら、まずは1回だけでかまいません。誰かに何かを言われて「ムカッ」「イラッ」としたら、口を開く前に、心の中でこうつぶやいてみてください。
「おっと、あかちゃん怪獣が出てきたぞ。1、2、3……」
そして、ゆっくり10まで数えてみましょう。10数え終わったとき、自分の心が驚くほど静かになり、クラスの友達を見る目がやさしくなっていることに気づくはずです。
感情をコントロールできる人は、誰からも愛され、敵をつくらない最強の力を持っています。さあ、明日からあなたも「10秒の魔法使い」になって、クラスのみんなと最高の毎日をすごしてみませんか!