自分の弱さを少しだけさらけ出す
学校で、こんなふうに思ったことはありませんか?
「失敗したら、みんなに笑われちゃうかもしれない」
「テストで悪い点をとったから、隠しておこう」
「班長なのに上手にまとめられないなんて、絶対に知られたくない!」
クラスの中で「すごいね!」「かっこいいね!」と言われたくて、つい無理をして「完璧な自分」をつくろうとしてしまうこと、ありますよね。失敗したところを見られたくなくて、すました顔をしてしまったり、言い訳をしてしまったりすることもあるかもしれません。
でも、ちょっとだけ心を楽にしてみませんか?
実は、クラスでいちばん好かれて、まわりの人から「一緒にいると落ち着くな」「あの子のことが大好きだな」と思われる人は、完璧なヒーローではありません。自分の「弱点」や「ちょっとダメなところ」を、ほんの少しだけ素直に見せることができる人なのです。
「えっ、自分のカッコ悪いところを見せたら、嫌われちゃうんじゃないの?」と思うかもしれません。でも、人間の心には、まったく逆の面白い仕組みがあるのです。今回は、人間の行動を研究する「行動学(こうどうがく)」や「行動経済学(こうどうけいざいがく)」という学問の知恵をかりながら、クラスで愛される「弱さの見せ方」の秘密をお話ししますね。
「かっこ悪い自分」をかくすと、どうして損しちゃうの?
まず、私たちが失敗を隠したくなるとき、心の中で何が起きているのかを見てみましょう。
人間の心には、自分の失敗やミスを、必要以上に大きく感じてしまうクセがあります。行動経済学では、人は「何かを得るうれしさ」よりも「損をするショック」のほうを、2倍も大きく感じてしまうことがわかっています。だからこそ、「失敗して自分の価値が下がったらどうしよう!」と、パニックになって隠したくなってしまうのです。
たとえば、こんな場面を思い浮かべてみてください。
黒板消しの係をやっているときに、うっかり黒板消しを床に落として、チョークの粉を撒き散らしてしまったとします。そのとき、「ぼくは失敗なんてしていないよ!」という顔をして、すました態度で片付けようとしたり、「誰かがここに置いたから悪いんだ」と言い訳をしたりしたら、まわりの友達はどう思うでしょうか?
「なんだか話しかけづらいな」「素直じゃないな」と、ちょっとだけ遠い存在に感じてしまいますよね。
失敗そのものよりも、「失敗を隠そうとする態度」のほうが、友達との間に壁をつくってしまうのです。完璧に見せようとすればするほど、まわりの人はあなたに話しかけるとき、少し緊張してしまうようになります。
学者さんもびっくり!「ちょっとドジな人」が好かれる秘密
ここで、あなたに勇気が出る、すばらしい心理学の実験をご紹介します。
行動学や社会心理学の世界には、「しくじり効果(専門用語でプラットフォール効果)」という有名なお話があります。
ある学者さんが、こんな実験をしました。とても頭が良くて完璧な人と、頭が良いけれど途中でコーヒーをこぼしてしまう「ちょっとドジな人」の2人の話し声を、たくさんの人に聞いてもらったのです。そして「どちらの人を好きになりましたか?」と尋ねました。
すると、なんと全員が「コーヒーをこぼした、ちょっとドジな人」のほうを「好きだ」「親しみが持てる」と答えたのです!
頭が良くて完璧なだけの人は、「すごすぎて近寄りにくい」と思われてしまいました。でも、能力が高い人がちょっとした失敗を見せた瞬間、人間らしさを感じて、みんなの心がグッと引き寄せられたのです。
これを学校生活にあてはめてみましょう。
いつも勉強ができて、スポーツも万能なA君がいたとします。A君が一度も失敗せずに完璧だったら、みんな「すごいなあ」とは思うけれど、どこか遠い存在に見えるかもしれません。でも、そのA君が「実はぼく、絵を描くのだけはすっごく苦手なんだよね……見てよこの犬、ブタに見えるでしょ?」と笑って見せてくれたらどうでしょうか?
一気に亲しみがわいて、「A君も僕たちと同じ人間なんだ!」「なんかかわいいな」と大好きになってしまいますよね。
自分の弱さを少しだけ見せることは、相手の心を安心させて、「あなたと友達になりたいよ」というサインを送る、最高に賢いコミュニケーションなのです。
今日からできる!「すなおな弱み」の出し方 3つのルール
ただし、なんでもかんでも「自分はダメだ」と言えばいいわけではありません。クラスでみんなに好かれる子たちは、とても上手で「かわいい弱みの見せ方」を知っています。
明日から学校で使える、3つの簡単なルールを紹介しますね。
ルール①:「じつは〇〇なんだ」の魔法の言葉をつかう
自分の苦手なことや、ちょっと恥ずかしいことを、自分から「じつはね」と打ち明けてみましょう。
- 体育の時間:「じつはぼく、とび箱がちょっと怖くて苦手なんだ。コツを教えてくれる?」
- 給食の時間:「じつは私、シイタケがどうしても苦手で……がんばって1個だけ食べてみるね!」
- 休み時間:「じつは私、人見知りだから、話しかけてくれてすっごくうれしかったよ」
このように、「じつは〇〇なんだ」と伝えると、聞いた相手は「自分だけに秘密を教えてくれた!」とうれしくなります。行動学では、自分の秘密を明かすことを「自己開示(じこかいじ)」と呼び、相手もあなたに心をひらくきっかけになります。
ルール②:失敗したときは「あちゃー!」と早めに笑いをとる
掃除の時間にバケツの水をおこしてしまったり、日直の号令で声がひっくり返ってしまったりしたとき。顔を真っ赤にして黙り込むのではなく、自分から軽やかに失敗を認めてしまいましょう。
「あちゃー! やっちゃった! ごめんね、すぐに雑巾持ってきて拭くね!」
「あれ? いま声が裏返っちゃったね(笑)」
失敗したあとに、自分からフッと笑って認められる人は、とてもかっこよく見えます。まわりの友達も「大丈夫だよ! 手伝うよ!」と、喜んで助けてくれるようになります。
ルール③:相手の弱みも「わかるよ!」と包み込んであげる
自分が「弱さ」を出せるようになると、友達が失敗したときにも優しくなれます。
友達が計算ドリルで間違えたり、体育でボールを取り損ねたりしたときに、「大丈夫だよ! ぼくもこの前、同じ失敗しちゃったからわかるよ!」と言ってあげましょう。
自分の弱さを知っている人だけが、人の弱さに寄り添うことができます。これができる子は、クラスで圧倒的に信頼されるようになります。
こんな出し方はNG!「愛される弱さ」と「嫌がられる弱さ」の違い
ここでひとつだけ、気をつけてほしい大切なポイントがあります。
弱みを見せるのはとても良いことですが、やり方を間違えると、友達を困らせてしまうことがあります。「愛される弱さ」と「嫌がられる弱さ」の違いを整理しておきましょう。
- NGな弱さ①:いつでも「どうせ無理」と言ってあきらめる
係の仕事やグループワークで、「私、バカだからできない〜」「どうせ無理だし」と最初から投げ出してしまうのはNGです。これは「弱みを見せる」のではなく「ずるけている」ように見えてしまいます。 - NGな弱さ②:ずっと暗い顔で「かまってアピール」をする
「私なんて生きている意味がないかも……」と過剰に暗くなったり、心配されたくてわざとため息をついたりするのも、まわりを疲れさせてしまいます。 - 〇(マル)な愛される弱さ:一生懸命やったうえでの「てへっ」
「がんばったんだけど、ここだけうまくいかなかった!」「一生懸命やったけど、うっかり忘れちゃった!」という、前向きな一生懸命さのなかにある弱さこそが、みんなから愛されるのです。
明日学校で試してみよう!「弱み見せ」のわくわくミッション
自分の弱さを少しだけ出すことは、友達との距離を一気に縮める「魔法の鍵」です。
明日、学校に行ったら、次の3つのうちどれかひとつだけ、試してみてください。
ミッション1:朝の会や休み時間に、友達に「じつは昨日、宿題やりながら寝ちゃいそうだったんだ〜」と、小さなドジを1つ話してみる。
ミッション2:授業で答えを間違えてしまったら、恥ずかしがらずに「あちゃー、間違えた! 次はがんばるぞ」とニコッと笑ってみる。
ミッション3:友達が失敗したときに「大丈夫! ぼくもよくやるから気にしないで!」と声をかけてあげる。
完璧な人間なんて、この世界には一人もいません。みんな、ちょっとずつ失敗したり、苦手なことがあったりしながら生きています。
あなたが「完璧な仮面」を脱いで、「じつは私、こんな失敗もしちゃうんだ」と素顔を見せたとき、クラスの友達は「あの子って、本当に素敵だな」「もっと仲良くなりたいな」と、あなたをもっと大好きになります。
自分の弱さを、少しだけ愛してあげてください。その素直な心が、あなたを「クラスでいちばん愛される子」に変えていくのですから!