相手が話しているときはスマホや手元を見ない
想像(そうぞう)してみてください。きみが昨日あった「最高に楽しかったこと」を、大親友(だいしんゆう)に一生懸命(いっしょうけんめい)話している場面を。きみはワクワクしながら、「それでね、その時さ……!」と身を乗り出します。
でも、その時、友達がずっと自分の筆箱(ふでばこ)をいじっていたり、タブレットの画面をじーっと見つめていたりしたら、きみはどう感じるでしょうか?
「あれ、僕の話、つまらないのかな?」
「もしかして、怒(おこ)ってる?」
「早く話を切り上げたほうがいいのかな……」
そんなふうに、胸(むね)のあたりが少しチクッとして、悲しい気持ちになりませんか? 実は、相手が話しているときに「手元を見ること」は、言葉を使わずに「きみの話には興味(きょうみ)がないよ」という意地悪なメッセージを送ってしまっているのと同じことなのです。
クラスでみんなから「この人と話すと安心するな」「また明日も話したいな」と思われる「愛されっ子」たちは、みんなこの「目線の魔法(まほう)」を使いこなしています。今日は、科学の力を使って、なぜ手元を見ずに相手の目を見ることが大切なのか、その秘密(ひみつ)を解き明かしていきましょう。
脳(のう)は「見られない」ことを「攻撃(こうげき)」だと感じる
なぜ、相手が手元を見ているだけで、私たちは悲しくなってしまうのでしょうか。それは、人間の脳の仕組みに理由があります。
私たちの脳には、相手の表情(ひょうじょう)や目の動きを読み取るための特別な場所があります。大昔、人間がまだジャングルで暮らしていたころ、相手が自分に味方(みかた)をしてくれるのか、それとも敵(てき)なのかを判断(はんだん)する一番のヒントは「目」でした。相手が自分をしっかり見ていれば「仲間(なかま)だ」と安心し、目をそらしていれば「何か隠(かく)しごとをしているぞ」とか「自分を無視(むし)して襲(おそ)ってこようとしているのかも?」と、脳がピンチを感じるようにできているのです。
心理学では、これを「社会的排斥(しゃかいてきはいせき)」のサインと呼ぶことがあります。難しい言葉ですが、簡単に言うと「仲間はずれにされている!」と脳が勘違い(かんちがい)してしまうということです。たとえきみに悪気がなくても、友達が話しているときにスマホの画面や消しゴムのカスをいじっているだけで、相手の脳の中では「緊急事態(きんきゅうじたい)! 嫌(きら)われているかもしれないアラート」が鳴り響(ひび)いてしまうのです。
逆に、きみが相手の目をじっと見るだけで、相手の脳からは「オキシトシン」という「幸せホルモン」が出ることがわかっています。これが出ることで、相手は「この人といると、なんだかホッとするな」と感じるようになるのです。つまり、目を見ることは、相手に「心のプレゼント」を贈(おく)っているのと同じなのです。
「心のシャッター」を開けるための3つのルール
「目を見るのが大事なのはわかったけれど、ずっと見つめるのは恥(は)ずかしいし、緊張(きんちょう)しちゃうよ」という人もいるかもしれませんね。大丈夫(だいじょうぶ)です。完璧(かんぺき)にずっと見つめ続ける必要はありません。次の3つのルールを意識(いしき)するだけで、きみの「安心感(あんしんかん)」は100倍になります。
- ルール1:話しかけられた「最初の3秒」で目を合わせる
友達が「ねえねえ」と言ってきたとき、その瞬間に作業をやめて、パッと相手の目を見ましょう。この最初の3秒で「きみの話を聞く準備(じゅんび)ができているよ」というサインを送るのが、一番大切です。 - ルール2:手元にあるものを「置く」
もし手にゲーム機やスマホ、鉛筆(えんぴつ)を持っていたら、一度机(つくえ)に置きましょう。持ったままだと、どうしても視線(しせん)が下にいってしまいます。「置く」という動作を見せることで、相手は「自分のために時間を使ってくれている」と感じて、とても嬉(うれ)しくなります。 - ルール3:相手の「目」ではなく「顔全体」をぼんやり見る
目をじーっと見つめすぎると、相手もきみも緊張してしまいます。そんなときは、相手の両目と口を結んだ「三角形」のあたりを、やさしい気持ちで眺(なが)めるようにしましょう。これだけで、相手には「しっかり聞いてくれている」と伝わります。
学校生活でやってみよう! 具体的なシチュエーション
明日から学校で使える、具体的な「愛されコミュニケーション」の例をいくつか紹介(しょうかい)します。こんな場面で、ぜひ「手元を見ない」を試(ため)してみてください。
① 係(かかり)の仕事や掃除(そうじ)の時間
掃除の時間、一緒にゴミを集めている友達が「昨日のテレビ見た?」と話しかけてきたとします。このとき、ほうきを動かしながら「見たよー」と言うのではなく、一度だけ手を止めて、相手の顔を見て「見た! あの場面おもしろかったよね」と返してみてください。たったこれだけで、その友達との絆(きずな)はぐっと深まります。作業をしながらの会話は、どうしても「ついで」に聞こえてしまいますが、一瞬(いっしゅん)だけ顔を上げることで、相手を大切にしていることが伝わります。
② 授業中(じゅぎょうちゅう)のグループ発表
グループで話し合いをしているとき、誰(だれ)かが意見を言っているのに、自分のノートに一生懸命(いっしょうけんめい)メモを取っていませんか? メモを取るのは素晴らしいことですが、話し手は「みんな下を向いていて、自分の意見を聞いてくれていない」と不安になります。誰かが話し始めたら、ペンを置いて、その人の顔を見ましょう。きみが顔を上げるだけで、発表している子は勇気(ゆうき)をもらえて、もっと良い意見が言えるようになります。きみはクラスの「ムードメーカー」になれるのです。
③ お家(うち)でのお手伝いや会話
お家の人から「宿題(しゅくだい)終わったの?」とか「今日のご飯は何がいい?」と聞かれたとき、ゲームの画面を見ながら「あとでー」とか「なんでもいい」と答えていませんか? これをお家の人にやってしまうと、お家の人も人間ですから、悲しい気持ちになります。一度画面を消して(あるいは一時停止して)、お家の人の目を見て「あと5分で終わるから待ってて!」と伝えてみてください。お家の人の反応(はんのう)が、いつもより優(やさ)しくなることに驚(おどろ)くはずです。
脳にある「まねっこ細胞(さいぼう)」の不思議
脳科学には「ミラーニューロン」という面白い仕組みがあります。これは、相手の行動を鏡(かがみ)のように真似(まね)してしまう細胞(さいぼう)のことです。
きみが相手の目を見て、楽しそうに話を聞いていると、相手の脳にあるミラーニューロンが働いて、相手もきみの目を見て、楽しく話せるようになります。逆に、きみが手元ばかり見て「つまらなさそう」にしていると、相手もだんだん「つまらない気持ち」になって、会話が止まってしまいます。
つまり、きみが相手をしっかり見ることは、「楽しい会話のスイッチ」をポチッと押(お)すことなのです。きみがスイッチを押せば、相手も笑顔になり、結果としてきみ自身ももっと楽しくなります。これこそが、クラスで一番好かれる子が知っている、魔法のカラクリなのです。
もし、どうしても手が離せないときは?
もちろん、どうしても今すぐ手を止められないときもありますよね。図工(ずこう)の時間に大事な部分を塗(ぬ)っているときや、タブレットで調べ学習を急いでいるときなどです。
そんなときは、目を見ないまま返事をするのではなく、こう言ってみてください。
「ごめん! 今ここを塗(ぬ)り終わるまで待って。終わったらちゃんと聞くからね!」
そして、塗り終わったらすぐに相手の方を向いて「お待たせ! なあに?」と声をかけます。こうすれば、相手は「無視された」とは思いません。「自分の話をちゃんと聞こうとしてくれているんだな」と、逆にきみへの信頼(しんらい)が高まります。
明日からできる「愛されミッション」
まずは明日、学校に行ったら誰か一人だけでいいので、「話しかけられたら、手に持っているものを一度机に置いてから、相手の目を見て返事をする」というミッションに挑戦(ちょうせん)してみてください。
相手の顔がパッと明るくなったり、いつもより話が弾(はず)んだりする感覚(かんかく)を味わえるはずです。その小さな変化(へんか)こそが、きみが「愛されコミュニケーション」の達人(たつじん)への第一歩を踏(ふ)み出した証拠(しょうこ)です。
きみの目は、相手の心に光を届(とど)けるライトのようなもの。手元を照(て)らすのもいいけれど、時々は友達の心に向けて、ピカッと明るい安心感を届けてあげてくださいね。そうすれば、きみの周りには自然と、たくさんの笑顔が集まってくるようになりますよ!