自分の気持ちを言葉で伝える練習をする
休み時間にみんなで楽しく遊んでいたのに、友達に急に順番をぬかされて「なんだよ!」と叫んでしまったこと、ありませんか?
掃除の時間、自分ばかりが一生懸命働いていて、遊んでいる友達に「ちゃんとやってよ!」と怒鳴りたくなったことはありませんか?
または、本当はすごく嫌だったのに、何も言えずに黙り込んでしまい、家に帰ってから「どうしてあのとき、ちゃんと言えなかったんだろう……」と、涙がこぼれそうになったことがあるかもしれません。
自分の心の中にドカンと大きなバクダンが落ちたみたいにイライラしたとき、そのまま怒りをぶつけてしまうと、相手も「なによ!」と言い返してきて、大きなケンカになってしまいます。これでは、クラスに「敵(てき)」をつくってしまうことになりますよね。
でも、安心してください。怒ったり、悲しくなったりしたときに「自分の気持ちを上手に言葉で伝える魔法」を覚えると、トラブルをゼロにできるだけでなく、クラスのみんなから「〇〇さんって、すごく大人でカッコいいな!」と尊敬されるようになります。
今回は、あなたのあたまの中にある「脳(のう)」のひみつを解き明かしながら、明日からすぐに使える伝え方の練習をしていきましょう!
なぜイライラすると、うまく話せなくなるのかな?(脳のひみつ)
まず、どうして人はイライラすると「バカ!」と叫んでしまったり、だまりこくったりしてしまうのでしょうか。実はこれ、あなたが悪いわけではありません。あなたのお話を聞く「あたまの中(脳)」で、ある事件が起きているからなのです。
脳科学(のうかがく)という、あたまの仕組みを研究する学問では、人間のあたまの中には2つの重要な「キャラクター」がいると考えられています。
- ① イライラ怪獣「へんとう体(たい)」
あたまの奥の方にいて、危険を感じたり、嫌なことがあったりすると「キーッ!」と叫んで大あばれする怪獣です。あなたを守ろうとして、すぐに怒りや恐怖のパワーを爆発させます。 - ② かんがえる博士「前頭葉(ぜんとうよう)」
おでこの奥の方にいて、メガネをかけた賢い博士です。「どうどう、落ち着いて」「どうすれば仲良く解決できるかな?」と、冷静に作戦をかんがえる役割をしています。
友達に急に嫌なことを言われた瞬間、脳の中ではイライラ怪獣「へんとう体」がガオーン!と大あばれします。すると、その怪獣の声が大きすぎて、かんがえる博士「前頭葉」が気絶してしまい、作戦をたてられなくなってしまうのです。
これが、「ついつい手が出そうになる」「ひどい言葉を言い返してしまう」「頭が真っ白になって何も言えなくなる」という状態の正体です。
では、どうすれば気絶した「かんがえる博士」をたたき起こすことができるのでしょうか?
その答えこそが、「自分の気持ちを『言葉』にする」ということなのです。
あたまの中で「あ、いま自分はすごく悔しいんだな」「ビックリしたんだな」と、気持ちに名前をつけて言葉にすると、かんがえる博士が「ハッ!」と目を覚まします。言葉を使う作業は、かんがえる博士の一番の得意技だからです。
博士が目を覚ませば、イライラ怪獣はおとなしくなり、あなたは冷静に、カッコよく自分の気持ちを伝えられるようになります。
【魔法1】「イライラ」の裏にある「本当の気持ち」を見つけよう
自分の気持ちを伝えるための第1の魔法は、「本当の気持ち」に気づくことです。
「むかつく!」「イライラする!」という怒りの感情は、実は「本当の気持ち」ではありません。怒りというのは、例えるなら「バケツからあふれ出た水」のようなものです。
バケツの中には、怒りがでる前に別の気持ちがたまっています。それを脳科学では「一次感情(いちじかんじょう)」と呼びます。このバケツの中にある「本当の気持ち」こそが、あなたが言葉にすべき宝物なのです。
たとえば、こんな場面を思い出してみてください。
【場面:給食のとき】
あなたが楽しみにしていた大好物のハンバーグ。給食係の友達が、あなたの皿にだけ、あきらかに小さいハンバーグをのせました。
このとき、心の中のバケツにはどんな気持ちが入っているでしょうか?
- 「むかつく!」(あふれ出た水=怒り)
- 「楽しみにしていたから、すごく『がっかり』した」(本当の気持ち)
- 「自分だけ損をしたみたいで『悲しい』」(本当の気持ち)
「むかつく!」と怒りをぶつけると、「なんだよ、文句言うなよ!」とケンカになります。でも、「本当の気持ち」を見つけて、こう言ってみたらどうでしょうか。
「ずっと楽しみにしていたから、小さくてちょっと『がっかり』しちゃったな。できれば普通サイズのにかえてもらえる?」
どうですか? これなら相手も「あ、ごめん!うっかり小さくなっちゃった。取りかえるね」と言いやすくなりますよね。敵をつくらずに、自分の思い通りの結果を手に入れることができるのです。
【魔法2】主人公を「わたし」に変える「アイ・メッセージ」
第2の魔法は、言葉のつくりかたのテクニックです。これを「アイ・メッセージ(わたしが主人公の言葉)」と呼びます。
人に怒りを感じたとき、私たちはついつい「あなた」を主人公にして話してしまいがちです。
「(あなたが)ちゃんとやってよ!」
「(あなたが)なんでそんなこと言うの!」
「(あなたが)邪魔だよ!」
「あなた」を主人公にした言葉(ユー・メッセージ)は、相手にとって「攻撃された!」と感じられます。すると、相手のあたまの中のイライラ怪獣も大あばれを始めて、「そっちこそ!」と言い返し、大ケンカに発展してしまうのです。
そこで、お話の主人公を「わたし」に変えてみましょう。
学校生活での具体例でくらべてみましょう。
【例1:クラスの掃除の時間】
×「(あなたが)あそばないで、ちゃんと掃除してよ!」
〇「(わたしは)1人でお掃除するの、大変だから手伝ってくれるとうれしいな」
【例2:休み時間のドッジボール】
×「(あなたが)強く投げすぎなんだよ!ひどいよ!」
〇「(わたしは)いまのボール、すごく速くてビックリして怖かったよ」
【例3:係の仕事の話し合い】
×「(あなたが)勝手に決めないでよ!」
〇「(わたしも)一緒にアイデアを一緒に出したかったから、声をかけてほしかったな」
どうでしょうか? 主人公を「わたし」にするだけで、チクチクしたトゲのある言葉が、フワフワした温かい言葉に変わりますよね。
相手を責めるのではなく、「わたしがどう感じたか」を伝える。これこそが、敵をつくらない人が使っている最強の魔法なのです。
【魔法3】心の「3秒カメさん」になって深呼吸する
「本当の気持ちを見つけるのも、アイ・メッセージをつくるのも、イライラしているときには難しそう……」と思った人もいるかもしれませんね。大丈夫です! とっておきの練習法があります。
イライラ怪獣「へんとう体」が大あばれしてから、かんがえる博士「前頭葉」が追いついてくるまでに、約3秒から6秒かかると言われています。
つまり、嫌なことがあった瞬間の「最初の3秒間」さえやり過ごせば、あなたのあたまの中には必ず「かんがえる博士」がやってきてくれるのです。
嫌なことがあったら、まずは「3秒カメさん」になりましょう。首をすくめてカメさんの甲羅に入るイメージです。
- 1秒目:「うっ」と思ったら、口をかたく閉じる(言葉をすぐにださない)。
- 2秒目:鼻から息を「すうっ」と吸って、口から「はあ〜っ」と細く長く吐く。
- 3秒目:心の中で「かんがえる博士、タスケテ!」ととなえる。
この3秒間の深呼吸をするだけで、脳に酸素がたっぷり届き、かんがえる博士が「お待たせ!作戦をたてよう」とメガネを光らせて復活します。
息を吐ききったころには、あなたはもう「むかつく!」と叫ぶのではなく、「わたしは、〇〇されて悲しかったよ」と冷静に言える無敵のカッコよさを手に入れています。
【魔法4】おうちの「お手伝い」で伝えるパワーをレベルアップ!
この魔法は、学校でいきなり使おうとすると、少し緊張してしまうかもしれません。だからこそ、一番安心できる「おうち」で練習してみるのがおすすめです。
実は、家でのお手伝いは「気持ちを言葉で伝える」最高のトレーニング場なのです。
たとえば、おうちでこんな場面はありませんか?
【場面1:リビングのお片付けを頼まれたとき】
宿題をやろうとしていたタイミングで、お家の人から「部屋を片付けなさい!」と言われたら、イライラ怪獣が出そうになりますよね。
★練習テクニック:
「うるさいな!」ではなく、「(わたしは)いまから宿題をやろうとしていたから、言われるとちょっとやる気がなくなっちゃうな。宿題が終わったら片付けるね!」と伝える。
【場面2:お皿洗いや配膳のお手伝いをしているとき】
「もっと早くやって」と言われたり、手際が悪いと言われたりしたとき。
★練習テクニック:
黙ってふてくされるのではなく、「(わたしは)一生懸命やってるから、そう言われると悲しいな。こうやって手伝うのはどう?」と提案してみる。
おうちの人に「わたしは〜と感じたよ」と伝える練習をしておくと、お家の人も「あら、この子は自分の気持ちをしっかり大人っぽく言えるようになったな」と感心してくれます。
家で何度も練習してレベルアップしておけば、明日学校でトラブルが起きたときも、自然と魔法の言葉が口から出てくるようになりますよ。
明日学校で使ってみよう!気持ちのことば化チェックリスト
さあ、これであなたも「自分の気持ちを言葉に変える魔法使い」の第一歩を踏み出しました!
明日の学校生活で、何かモヤモヤしたり、イラッとしたりすることがあったら、あたまの中でこのチェックリストを思い出してくださいね。
- □ イラッとしたら、まずは「3秒カメさん」で深呼吸できたか?
- □ あたまの中の「かんがえる博士」を呼び出せたか?
- □ 「むかつく」の裏にある「悲しい」「びっくりした」「困った」を見つけられたか?
- □ 「わたしは〜だったよ」と、アイ・メッセージで伝えられたか?
自分の気持ちを言葉で伝えられる人は、自分の心も、相手の心も大切にできる人です。そんなあなたの周りには、自然と優しい友達が集まってきます。
敵をつくらないどころか、みんなから「あなたと話していると安心するな」「すごく大人だな」と思われる人気者になれるはずです。
明日の朝、校門をくぐるのが楽しみになってきませんか? あなたの中の「かんがえる博士」と一緒に、ワクワクする最高の1日を作っていきましょう!