「ごめんね」が言えないと、なぜかモヤモヤする?
学校で、こんなことってありませんか?
- 図工の時間に、友達の作品にうっかり絵の具をぴしゃっと飛ばしてしまった
- 廊下を走っていて、前から歩いてきたクラスメートとドーンとぶつかった
- お母さんに「早く宿題やりなさい!」と言われて、「今やろうと思ったのに!」と強い口調で言い返してしまった
そのあと、心のどこかで「あ、やっちゃったな……。謝ったほうがいいよな……」と分かっているのに、なぜか口がチャックをしたように開かなくなってしまう。そして、心の中にポッカリと黒い穴があいたみたいに、ずっとモヤモヤ、ドキドキし続ける――。
この気持ち、すごくよく分かります。「ごめんね」の一言が出てこないだけで、大好きな友達と一日中気まずい空気になってしまったり、家に帰ってからも「さっきは言いすぎたな」と後悔して、楽しみにしていたテレビ番組も全然面白くなくなったりするんですよね。
実は、「ごめんね」を素直に言うことは、ただ「あやまっている」だけではありません。これは、あなたのまわりの人たちと「もっと深く、ずっと仲良しでいるため」のとびきり素敵な魔法のテクニックなのです。
この章では、言葉のルールを研究する学問「ごようろん(語用論)」というスゴイ考え方も使いながら、どうして「ごめんね」が大切なのか、そして、どうすればスーッと素直に言えるようになるのかを一緒に見ていきましょう。これを読んだあとには、もうモヤモヤを引きずる必要はなくなりますよ!
どうして「ごめんね」って言うと、心がスッキリするの?
そもそも、どうして私たちは謝る必要があるのでしょうか? 「悪気がなかったんだから、謝らなくてもいいや」と思いたくなる日もありますよね。
ここで、言葉の勉強で使われる「ごようろん(語用論)」という面白い考え方を紹介します。ごようろんとは、「言葉は、その時その場所の『空気』や『相手との関係』によって、意味が変わるし、大きな力を持っている」ということを研究する学問です。
ごようろんの考え方では、人間が話す言葉には「お互いの関係をいい状態に保つためのセンサー」のような働きがあると考えます。
あなたが友達とぶつかったとき、ただ体がぶつかっただけなら、痛いのはその瞬間だけです。でも、そこに「言葉」がないとどうなるでしょう? ぶつかられた友達は、心の中でこう思います。
「この人、わざとぶつかってきたのかな?」
「謝りもしないなんて、私のこと嫌いなのかな?」
そう、体は離れていても、心の距離がどんどん離れていってしまうのです。これが、言葉が持つ「見えないパワー」です。
逆に、そこであなたが「ごめんね、痛かった?」と声をかけたとします。すると、言葉という魔法のエネルギーが相手に届いて、こう伝わります。
「わざとじゃないんだな」
「ぼく(私)のことをちゃんと大切に思ってくれているんだな」
つまり、「ごめんね」は、「あなたとの関係を大切にしたいです」というサインなのです。言葉を正しく使う(ごようろんの力を借りる)ことで、お互いの心のモヤモヤがスーッと消えて、もとの仲良しな状態に戻ることができます。謝ることは負けることではなく、むしろ相手とつながるためのカッコいい行動なんですよ。
素直に謝れないのは、心の「バリア」のせい
「頭では謝ったほうがいいって分かってる! でも、どうしても声に出せないんだよ!」
そう叫びたくなりますよね。実は、それにはちゃーんと理由があります。人間には、自分が傷つかないように守ろうとする「心のバリア」が生まれつき備わっています。
何か失敗したり、人に迷惑をかけたりしたとき、心の中の警備員がこう叫びます。
- 「ごめんねって言ったら、自分が『悪い子』って認めることになっちゃう!」
- 「『えー、お前が悪いんだろ』って笑われるかもしれない……怖い!」
- 「プライドが傷つくから、絶対に謝りたくない!」
この心のバリアのせいで、素直になれず、口が重くなってしまうのです。でもね、ちょっと考えてみてください。「ごめんね」が言えなくて、すねたような顔をしているあなたと、「あのときはごめんね」と照れくさそうに笑っているあなた。まわりの人から見て、どちらが「かっこいい人」「すてきな人」に見えるでしょうか?
間違いなく、後者ですよね。自分の非を認めて「ごめんね」と言える人は、心が広くて、自分に自信がある人だけです。謝ることは、あなたの価値を下げるどころか、むしろ「あ、この人はすごく大人で優しい人だな」と、周りからの信頼をグッとアップさせる大チャンスなのです。
明日からすぐできる!「神」謝り方トレーニング
それでは、いよいよ実践編です。「ごめんね」を素直に言えるようになるための、とっておきのステップを3つ紹介します。明日から、学校や家でぜひ試してみてください。
ステップ1:言い訳の「でも」「だって」を心の中で飲み込む
お母さんに「何で片付けないの!」と言われて、「今やろうと思ったのに、お母さんがテレビ見たから……」と返しそうになったとき。友達に「遅いよ!」と言われて、「だって、忘れ物取りに帰ったんだもん!」と言い訳したくなったとき。
この「でも」「だって」は、相手をイライラさせる魔法の言葉です。ごようろんの世界でも、言い訳を先に言ってしまうと、相手は「この人、反省してないな」と感じ取ってしまいます。
- 「でも」が出そうになったら、まず口をギュッとチャックする
- 心の中で「1、2、3」と数えて、深呼吸をする
- それから「そうだね、遅くなってごめんね」と、謝る言葉を先に言う
これだけで、相手の怒っているパワーが半分以下にシュンとしぼみますよ。
ステップ2:「ごめんね」に「理由」と「次どうするか」をセットにする
ただ「ごめんね」とボソッと言うだけでは、ちょっともったいないです。相手にあなたの誠実さを100パーセント伝えるために、次の3つのセットを覚えておきましょう。
- 「ごめんね」(謝る)
- 「〜という理由で、こうなっちゃったんだ」(理由を短く言う)
- 「次はこうするね!」(これからの約束をする)
【学校での具体例】
休み時間に、友達のノートの上にジュースをこぼしてしまったとき。
「ごめんね! ランドセルを下ろすときに手が当たっちゃったんだ。今度から、机の端に飲み物を置かないように気をつけるね。このノート、新しいの買ってくるね」
ここまで言われたら、友達も「そこまで言ってくれるなら、もう怒らないよ」と許してくれますよね。未来の約束をセットにすることで、失敗が「成長のチャンス」に変わるのです。
ステップ3:どうしても口から出ないときは「手紙」の力を借りる
どうしても面と向かって「ごめんね」と言うのが恥ずかしい、または緊張して声が震えちゃう、という日もありますよね。そんなときは、無理に声を出さなくても大丈夫です。
ふせんや小さなメモ用紙に、こう書いてみましょう。
「さっきは言いすぎてごめんね。本当は仲良くしたいんだ」
これを、相手の教科書にはさんでおいたり、机の上にそっと置いておいたりするのです。文字(文章)は、ごようろんの考え方でも、対面の会話とは違った優しいクッションの役割をしてくれます。相手も、文字で「ううん、いいよ」と返しやすいので、気まずい空気を一瞬でとかすことができますよ。
「ごめんね」が言えると、世界がもっと優しくなる
素直に「ごめんね」と言えるようになると、あなたの周りの世界はガラリと変わります。
「あ、この人に謝っても、嫌な気持ちにならないな」
「むしろ、ちゃんと謝ってくれて嬉しいな」
そう思ってもらえると、クラスメートや先生、お父さんやお母さんは、あなたをもっともっと信頼してくれます。あなたがもしまた失敗してしまったときも、周りのみんなが「大丈夫だよ、次から気をつければいいよ」と優しく手を差し伸べてくれるようになるのです。
失敗しない人間なんて、この世にはいません。大人でも、先生でも、みんな毎日たくさんの失敗をしています。大切なのは、失敗したあとにどうするか、です。
勇気を出して「ごめんね」と言えた瞬間、あなたの心はパッと明るくなり、友達との絆は昨日よりもずっと強くなっています。さあ、明日学校に行ったら、もし何か「あ、やっちゃったな」と思うことがあったら、今日の魔法を思い出して、笑顔で「ごめんね」をプレゼントしてみましょう。きっと、すてきな笑顔が返ってきますよ!