相手が話しやすい空間を作る
「きょう、こんなことがあってね!」と、友達がうれしそうに話しかけてくれたとき、あなたはどうしていますか? もしかして、自分の言いたいことをガマンして、ただ聞いているだけになっていませんか?
実は、「聞き上手」というのは、ただ黙っていることではありません。相手が「この子には、もっと話したい!」と感じるような「話しやすい空間」を作ることこそが、クラスでいちばんの人気者になるための魔法なのです。
脳は「自分を受け入れてくれる場所」を探している
私たちの脳には、おもしろい仕組みがあります。誰かと話すとき、脳は無意識のうちに「この人は、ぼく(わたし)の話を安全に聞いてくれるかな?」とチェックしているのです。これを脳科学では「安心感の確認」と呼びます。
もしあなたが、話を聞きながら「ふーん」「へー」とそっけなくしていたら、相手の脳は「ここは危険だ! 話すのをやめよう」と判断してしまいます。逆に、相手が話しやすい空間を作ると、相手の脳からは「オキシトシン」という、心がポカポカして幸せを感じるホルモンが出ます。このホルモンが出ると、相手はあなたと一緒にいるだけで「すごく楽しい!」と感じるようになるのです。
「聞き方の魔法」は、体から始める
「話しやすい空間」を作るために、今日からすぐにできる魔法のコツを教えます。特別な道具はいりません。あなたの体と、ちょっとした言葉だけで十分です。
- 「おへそ」を相手に向ける
話を聞くとき、おへそを相手のほうに向けてみてください。これだけで「あなたの話を大切に聞いているよ」というサインが相手に伝わります。体全体で「あなたに注目している」と示すだけで、相手は安心して話し始めることができます。 - 相手の目を見て、1秒だけ「まばたき」をする
ずっと目を見つめすぎると、相手は少し緊張してしまいます。話の区切りで、ゆっくりとまばたきをしてみてください。これは「あなたの話をしっかり受け止めたよ」という、脳への合図になります。 - 「オウム返し」で安心感をプレゼント
相手が言った言葉を、そのまま繰り返すだけでOKです。たとえば、友達が「きのう、おいしいカレーを食べたんだ!」と言ったら、「へえ、おいしいカレーを食べたんだね!」と返すだけ。これだけで、相手の脳は「自分の言ったことを認められた!」と大喜びします。
「語用論」の力で、会話をキャッチボールにする
言葉には、その場の空気を変える力があります。これを「語用論」といいます。難しい言葉に聞こえますが、要するに「言葉の使い方で、相手の気持ちは変わる」ということです。
たとえば、係の活動で困っている子がいるとき、ただ「大変だね」と言うだけでは、会話はそこで終わってしまいます。でも、こんなふうに返してみたらどうでしょう?
- 「それで、どうなったの?」と続きをうながす
相手の話が終わる前に「それで?」と聞くのはNGですが、相手が少し話したあとに「それで、どうなったの?」と聞くと、相手は「もっと話してもいいんだ!」とワクワクします。 - 「感情」を言葉にしてあげる
相手が「宿題が難しくて泣きそうだった」と言ったら、「それは大変だったね。悲しかったね」と、相手の気持ちを言葉にしてあげてください。自分の気持ちを分かってもらえると、人は「この人は、ぼくの心の中まで見てくれている!」と深い信頼を感じます。
明日、学校で試してほしい「3つのステップ」
さあ、明日の学校で、さっそくこの魔法を使ってみましょう。まずは、休み時間の何気ない会話からスタートです。
1. 相手が話しかけてきたら、まずは手を止める
ノートを書いたり、本を読んだりしていても、一度だけ手を止めて相手の顔を見てください。「あなたの話が一番大事だよ」というメッセージが、一瞬で伝わります。
2. 「あいづち」を少しだけ大きくする
「うん、うん」と小さくうなずくのではなく、少しだけ首を大きく動かしてみましょう。あなたの大きなうなずきは、相手にとって「もっと話して!」という最高の応援歌になります。
3. 最後に「教えてくれてありがとう」と言う
会話の終わりに「話してくれてありがとう、楽しかったよ」と伝えてみてください。言われた相手は、きっと「またこの子と話したいな」と思うはずです。これが、人気者の第一歩です。
「話しやすい空間」を作ることは、相手を大切に思う気持ちを「形」にすることです。あなたが誰かの話を大切に聞けば、その優しさは必ず自分に返ってきます。明日の休み時間、勇気を出して、友達の方へおへそを向けてみてください。そこから、新しい友情の物語がはじまりますよ。