友だちのいいところを他の人に伝える
学校で、こんな場面を見たことはありませんか?
「ねえねえ、聞いてよ。〇〇くんって、ノートの字がすごく丁寧ですごいんだよ」
友だちがいないところで、別の友だちのいいところを話している声です。こんな話を聞いたとき、あなたの心はどんな気持ちになりますか? 「なんだか、その話を聞いているこっちまで、うれしい気持ちになるな」「〇〇くんって、そんなに素敵なところがあるんだな」と、あたたかい気持ちになりませんか?
逆に、友だちがいないところで、その子の悪口や文句を言っている声を聞いたときはどうでしょう。「いやだな」「自分もいないところで何か言われているかもしれないな」と、すごく不安で暗い気持ちになりますよね。
実は、人がまわりの友だちと仲よく、楽しく学校生活を送るためには、「友だちのいいところを、本人がいない場所で他の人に伝える」という、とっても強力な魔法があるのです。
この章では、なぜこの魔法を使うとみんなから好かれるのか、そして、どうやって使えばいいのかを、社会の仕組みを研究する学問である「組織社会学(そしきしゃかいがく)」の考え方もまじえながら、こっそり教えちゃいます!明日からすぐに使えるヒントがたっぷり詰まっているので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
なぜ「いないところでのほめ言葉」はすごい効果があるの?
みなさんは、「うわさ」って聞いたことがありますか? 「〇〇ちゃんは足が速いらしいよ」「〇〇くんは先生におこられていたらしいよ」といった、本人以外の場所での話のことです。
人間は、自分が直接見ていないときの情報ほど、「本当のことなのだろう」と信じやすいという不思議なクセを持っています。これを学問の世界では、社会や人の集まりの仕組みを研究する「組織社会学」の視点で考えると、とても面白いことが分かります。
「うわさ」が持つ、すごいパワー
人が集まる学校のクラスやグループという小さな社会では、みんなが「あの人はどんな人なのだろう?」ということを常に気にしています。そんなとき、直接本人から「ぼくって優しいんだよ」と言われるよりも、他の人から「〇〇くんって、本当に優しいよね」と聞いた方が、何倍も「本当のことなんだ!」と信じやすくなります。
なぜなら、「本人はいないところで、わざわざ他の人がその子のいいところを言う」ということは、「それだけ本当に素晴らしいところだから、隠しきれなくて言葉に出てしまったんだな」と、周りのみんなが感じるからです。
これを心理学や社会学では「第三者評価(だいさんしゃひょうか)」と言ったりします。自分がいないところで褒められている情報のことを、人は一番信用するのです。
「悪口」のブーメラン効果
ここで少し、逆のことを考えてみましょう。
もし、あなたがいないところで、誰かがあなたの悪口を言っていたとします。それを別の友だちから「ねえ、〇〇ちゃんがあなたのこと、こう言ってたよ」と聞かされたら、どうですか? その子のことが一瞬で苦手になりますよね。
それだけではありません。実は、組織社会学の研究では、「人の悪口を言っている人を見た周りの人たちも、その悪口を言っている人のことを信用しなくなる」ということが分かっています。
つまり、いないところで誰かの悪口を言う人は、「あの人は、いないところで人の悪口を言う人なんだな。私(僕)のことも、いないところで何か言っているかもしれない」と、周りから警戒されてしまうのです。結果として、だんだん人が離れていってしまいます。悪口は、まるでブーメランのように、いつか必ず自分に戻ってきてしまうのですね。
今日からできる!「いいところ伝え」の3つのステップ
「友だちのいいところを他の人に伝える」と言っても、なんだか気恥ずかしかったり、どうやって言えばいいか分からなかったりしますよね。
大丈夫です! 小学校のクラスでもすぐに実践できる、とっても簡単な3つのステップを紹介します。
- ステップ1:小さな「素敵だな」を見つける名人にリッチになる
- ステップ2:一番近くにいる「信頼できる友だち」に伝えてみる
- ステップ3:本人の耳に「間接的」に入ったときのことを想像してみる
それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。
ステップ1:小さな「素敵だな」を見つける名人になる
まずは、まわりの友だちの「すごいところ」「優しいところ」「頑張っているところ」を見つけることから始めます。大きなことでなくても、全然かまいません。
- 給食当番のとき、牛乳のケースを最後まで残さず片付けていた
- クラスで係の仕事を黙々とやっていた
- ノートのイラストがすごく上手だった
- 落ちていた消しゴムを「これ、落ちたよ」と拾ってあげていた
- テストの点数が悪くて落ち込んでいる子に、「次があるよ!」と声をかけていた
こんな風に、みんなが見過ごしてしまうような小さな親切や頑張りを見つけられる人は、それだけでとても魅力的な人です。「あ、今の行動、すごくかっこいいな」と思ったら、心の中でメモしておきましょう。
ステップ2:一番近くにいる「信頼できる友だち」に伝えてみる
いいところを見つけたら、それを別の友だちに話してみましょう。例えば、給食の班のメンバーや、帰りの会を一緒に待っているときのお友だちです。
「ねえ、聞いてよ。さっき〇〇くん、黒板を消すのを手伝ってあげてたんだよ。やさしいよね」
このときのポイントは、「自慢げに言わないこと」と「大げさに言わないこと」です。ただ事実として、「あの子って、こういう素敵なところがあるんだよね」と、感心したように話すだけで十分です。
これを聞いた友だちは、「へえ、〇〇くんってそんなことするんだ。素敵だな」と思います。あなたに対して「この人は、人のいいところをちゃんと見られる優しい子だな」という信頼感を抱くようになります。
ステップ3:本人の耳に「間接的」に入ったときのことを想像する
ここが、この魔法の最も素晴らしいところです。
あなたが別の友だちに話した「〇〇くん、優しいよね」という言葉は、やがて巡り巡って、本人の耳に届くことがあります。「ねえ、〇〇ちゃん(くん)がね、あなたがこの前こういうことしてたって、すごく褒めてたよ!」と、誰かが本人に伝えてくれるのです。
自分がいないところで、自分のことを見ていてくれた。しかも、それをいいこととして他の人に話してくれていた。
それを知った本人は、どう思うでしょうか?
「自分のことを見ていてくれたんだ!」「そんな風に言ってくれて、すごくうれしい!」と、あなたに対する好意や感謝の気持ちが一気に高まります。本人に直接「優しいね」と面と向かって言うのも素敵ですが、「いないところで褒めてくれていた」という事実を知ったときの喜びは、何十倍も大きくなるのです。
クラスの空気を変える「好かれる人」の秘密
組織社会学の考え方では、グループやクラスという集団は、そこにいる一人ひとりの「言葉や行動の積み重ね」によって作られているとされています。
もし、クラスのみんなが「あの子はあそこがダメだ」「この人はここが変だ」という悪口や文句ばかり言い合っていたら、そのクラスはどんな空気になってしまうでしょうか? いつも誰かの目を気にして、ピリピリした、居心地の悪い場所になってしまいますよね。
反対に、誰かが「〇〇さんは絵が上手なんだよ」「〇〇くんは、いつもみんなを笑わせてくれてすごいよね」と、友だちのいいところを伝え合っているクラスはどうでしょう?
みんなが「自分も誰かから見ていてくれる」「自分の良いところを認めてくれる人がいる」と感じられる、とてもあたたかくて安全な場所になります。そんなクラスは、誰もが毎日学校に行くのが楽しみになりますよね。
「人のいいところを言う人」の周りには、自然と人が集まる
人の悪口を言わない、そして友だちのいいところを他の人に伝える。
これを自然にできる人は、周りの人から「この人と一緒にいると、なんだか自分まで誇らしい気持ちになれる」「安心できる」と思われます。結果として、無理に目立とうとしなくても、自然とたくさんの素敵な友だちに囲まれるようになります。
なぜなら、人間は本能的に「自分を認めてくれる人」「自分のまわりの世界を明るくしてくれる人」のそばにいたいと思うからです。これは、小学生であっても、大人になっても、ずっと変わらない人間の心理なのです。
明日からできる、あなたの小さなチャレンジ
さて、ここまで「友だちのいいところを他の人に伝える」という魔法についてお話してきました。難しく考えすぎなくて大丈夫です。明日から学校で、ほんの少しだけ行動を変えてみましょう。
- 明日の朝、教室に入ったら、クラスの誰かの「小さな良いところ」を1つだけ見つけてみる
- 休み時間に、仲のいい友だちに「ねえ、〇〇さんって、いつも係の仕事まじめにやっててすごいよね」と伝えてみる
- 誰かが誰かの悪口を言い始めたら、「でも、あの子ってこういう良いところもあるよ」と、そっと話題を変えてみる
最初は、ちょっと恥ずかしいかもしれません。「こんなこと言って、変に思われないかな?」とドキドキするかもしれません。でも、勇気を出して言ってみてください。
あなたのその一言が、言われた本人を笑顔にし、聞いていた友だちの心をあたたかくし、最終的にはあなた自身のことを「一番信頼できる、まわりから愛される人」に変えてくれます。
さあ、明日からの学校生活が、もっと楽しく、もっとワクワクする場所になるように。今日からあなたも、「いいところ伝えの魔法使い」になってみませんか?