共通点を見つけると、なぜ一瞬で仲良くなれるの?
新しい学年になったばかりの春や、席替えをしたばかりの日のことを思い出してみてください。となりの席になった友達と、何を話せばいいかわからなくて、少しドキドキしたことはありませんか?
「どんな子なんだろう?」「こわい子だったらどうしよう」「話が合わなかったら気まずいな……」
そんなふうに心がそわそわしているとき、もしとなりの子が、あなたと同じ筆箱を使っていたらどうでしょう? あるいは、あなたと同じ「あのゲーム」のキャラクターのキーホルダーを陸上バッグにつけていたらどうでしょうか。
「あ! そのゲーム、私も大好きなんだ!」
そう声をかけた瞬間、さっきまでのドキドキが嘘みたいに消えて、一気に笑顔になれた経験があるはずです。実は、これこそが「共通点(きょうつうてん)」の魔法なのです。
共通点とは、「お互いに同じところ」や「共通している好きなこと・経験」のことです。クラスで誰からも好かれる「愛されコミュニケーションの達人」たちは、この共通点を見つけるのがとびきり上手です。彼らは特別なマスコットを持っているわけでも、おもしろいダジャレを連発しているわけでもありません。ただ、相手との共通点を素早く見つけて、「私も同じだよ!」と伝える天才なのです。
大昔の人類から受け継がれた「安心のスイッチ」
なぜ、人間は共通点を見つけると、急に相手のことが好きになってしまうのでしょうか? これには、学問の世界でもちゃんとした理由が証明されています。
世界中の人間の暮らしや文化の歴史を研究する「文化人類学(ぶんかじんるいがく)」という学問があります。この文化人類学の研究によると、大昔の人類(私たちの遠いご祖先さま)は、広いジャングルや草原の中で生きていくために、常に「この人は味方かな? それとも敵かな?」と見極めていました。
そのとき、ご祖先さまたちが味方かどうかを確かめる最大の目印にしていたのが、「共通点」だったのです。
- 同じ言葉を話しているか?
- 同じアクセサリーや服を身につけているか?
- 同じ食べ物を「おいしい」と感じるか?
自分と同じ特徴を持っている相手を見ると、大昔の人たちの脳の中では「あ! この人は自分たちの仲間だ! 安心できる味方だ!」というスイッチがカチッと入りました。逆に、自分とまったく違う特徴ばかりの人には「敵かもしれないぞ」と警戒したのです。
つまり、あなたが友達と「同じ!」を見つけたときに感じる「うれしい! 仲良くなれそう!」という気持ちは、大昔から人間の心に刻み込まれている「味方発見のサイン」なのです。共通点を話題にするということは、相手の心の中にある「安心スイッチ」を優しく押してあげることと同じなんですね。
たった1つの「おそろい」が起こす、統計学のすごい魔法
「でも、たまたま同じゲームが好きだったくらいで、本当にずっと仲良くなれるの?」と思う人もいるかもしれませんね。
ここで登場するのが、数字やデータを使って世の中の仕組みを解き明かす「統計学(とうけいがく)」という学問です。統計学は、たくさんの人のデータを集めて「どんなことが起きやすいか」を調べる学問です。
心理学や統計学のさまざまなデータを見てみると、人間関係において驚くべき事実が分かっています。それは、「人と人が仲良くなる確率は、見つけた共通点の数に比例して跳ね上がる」ということです。
たとえば、クラスの友達との「仲良し確率」をデータ風に見てみましょう。
- 共通点が0個のとき:「どんな人か分からないクラスメイト」(仲良し確率:普通)
- 共通点が1個のとき:「きっかけができる」(仲良し確率:2倍UP!)
- 共通点が3個のとき:「話が弾む友達」(仲良し確率:5倍UP!)
- 共通点が5個以上のとき:「何でも話せる親友」(仲良し確率:10倍以上UP!)
統計のデータが示しているのは、「人間は、自分と似ているところが多い人ほど、圧倒的に信頼しやすく、好きになりやすい」という事実です。これは「類似性の法則(るいじせいのほうそく)」とも呼ばれています。
しかも、その共通点は、大人から見たら「えっ、そんなことでいいの?」と思うような小さなことで十分なのです。
「給食のコーンスープが好き」「かさ立ての傘の色が同じ」「図工の時間、絵の具を混ぜすぎて黒くなっちゃった経験がある」「家で犬を飼っている」……。こんな小さな「おそろい」が3つ見つかるだけで、統計学的に見て、あなたと相手が仲良くなれる確率は何倍にも跳ね上がります。
今すぐできる!「共通点ハンター」になる3つのステップ
では、明日から学校で友達との共通点をたくさん見つけるためには、どうすればいいのでしょうか? 今日からあなたも宝探し名人ならぬ「共通点ハンター」になれる、3つのステップを伝授します!
ステップ1:目で見て見つける「見た目の共通点」
まずは、言葉を交わさなくても、目に入る情報から共通点を探してみましょう。クラスや廊下で友達をそっと観察するだけで、たくさんのヒントが転がっています。
- 文房具や持ち物:消しゴムのキャラクター、筆箱の形、下敷きの柄、使っているシャープペンシル。
- 身につけているもの:服の色、靴のブランド、ハンカチの柄、ヘアゴムの形。
- 行動やしぐさ:休み時間に読書をしている、休み時間に外へ走っていく、授業中にノートを丁寧に色分けしている。
例えば、給食袋の柄が自分と同じアニメのキャラだったら、大チャンスです。「見た目の共通点」は、もっとも話しかけるきっかけを作りやすい宝物です。
ステップ2:耳で聞いて見つける「話の中の共通点」
次は、友達が話していることや、授業中の発言に耳をすませてみましょう。
- 授業中の発言:「国語の詩の読解で、自分と同じ意見を言っていた」「社会の歴史の授業で、同じ武将の名前が好きだと言っていた」。
- 雑談のこえ:「昨日、あのテレビ番組見た?」「週末にイオンに行ったんだ」「最近、スイミングを始めたんだよね」。
- 係や委員会の活動:「黒板をきれいに消すのが好き」「花壇の水やりが楽しい」。
友達が話しているときに「あ、それ私も!」と思う瞬間があったら、心の中でメモをしておきましょう。あとで話しかけるときの最高の武器になります。
ステップ3:心で感じる「気持ちの共通点」
じつは、いちばん友達の心に深く刺さるのが、この「気持ちの共通点」です。好きなものや持ち物だけでなく、「どんな気持ちを感じているか」の共通点です。
- 大変だなという気持ち:「体育の持久走、ちょっと緊張するよね」「算数の文章問題、むずかしいよね」。
- うれしいという気持ち:「今日の給食、あげパンだから楽しみだね!」「テストが終わってホッとしたね」。
- 困ったという気持ち:「雨の日の休み時間って、何して遊ぶか迷うよね」。
持ち物や趣味が違っていても、「今、同じ気持ちを感じている」という共通点があれば、人は一瞬で心の距離を縮めることができます。文化人類学が教える「同じ感情を分け合う仲間」になれるのです。
明日の学校で試せる!「共通点」を使った話しかけフレーズ集
共通点を見つけたら、あとはそれを言葉にして相手に届けるだけです。ここでは、明日から学校のいろいろな場面でそのまま使える「魔法のフレーズ」を紹介します!
係活動や掃除の時間に使えるフレーズ
一緒に作業をしている時間は、共通点を見つけて話しかける絶好のタイミングです。
【黒板消しの係で】
「〇〇ちゃんも、黒板の端っこまでキレイに消す派? 私もなんだ! すっきりするよね!」
【掃除の時間に】
「〇〇くんも雑巾がけ得意なの? 実は私も小そうじの時間が好きなんだよね。ピカピカになると気持ちいいよね!」
【プリント配りのとき】
「このプリントのイラスト、かわいいよね。〇〇ちゃんもこのキャラクター好き? 私も好きなんだ!」
休み時間や放課後に使えるフレーズ
ちょっとした雑談のときに、会話を弾ませるフレーズです。
【休み時間の教室で】
「あ、その折り紙の折り方、すごいね! 私も昔、よく折ってたんだ。それ、むずかしくない?」
【図書館や読書の時間で】
「その本読んでいるの? 私もそのシリーズ大好きなんだ! 3巻の話、すごく面白かったよね!」
【下校の途中で】
「〇〇くんも、学童(または塾)行ってるの? 私もなんだ! 宿題終わらせるの、大変だよね〜」
家でおうちの人と練習してみよう!
学校で使う前に、おうちで家族に「共通点探し」を試してみるのもおすすめです。家のお手伝いをしながら、練習してみましょう。
【お皿洗いや料理の手伝いをしながら】
「お母さんも、ハンバーグの玉ねぎ切るとき目にしみる? 私もなんだよ!」
「お父さんも、洗濯物たたむの靴下からやる派? 私と同じだ!」
家族相手に「私も同じ!」を伝える練習をしておくと、学校でも自然と言葉が出てくるようになりますよ。
「共通点がない…」と思った時の2つの超・裏ワザ
コミュニケーションの相談を受けていると、よくこんな質問をもらいます。
「話しかけたい子がいるんだけど、好きなゲームも違うし、習い事も違うし、全然共通点が見つかりません。どうしたらいいですか?」
安心してください! 共通点が見つからないときでも、誰からでも好かれる子が使っている「すごい裏ワザ」が2つあります。
裏ワザ①:相手の「好き」を自分の「興味」にして共通点を作る
共通点は、「最初からあるもの」だけではありません。「これから作るもの」でもいいのです!
もし相手が、あなたの知らないゲームや、読んだことのない漫画に夢中になっていたら、こう言ってみましょう。
「私、そのゲームやったことないんだけど、〇〇ちゃんがそんなにハマってるなら面白そうだね! どんなゲームなの?」
相手の「好き」に興味を持つこと。それ自体が、「あなたに関心があります」という最大の共通点になります。相手は喜んで教えてくれるはずです。そして次の日、「昨日ちょっと調べてみたよ!」と言えば、もう立派な共通点の完成です。
裏ワザ②:「ちがい」を面白がる「ちがい探検隊」になる
文化人類学では、共通点と同じくらい「自分と相手の違いを楽しむこと」も大切にされています。
たとえば、あなたが「ウサギ派」で、友達が「犬派」だったとします。共通点はありませんね。でも、そこでガッカリする必要はありません。
「えっ! 〇〇くんは犬派なんだ! 私はウサギ派だから、犬の可愛さについて教えてほしいな!」
このように、「ちがい」を敵対する理由にするのではなく、「お互いを知るための楽しい冒険」にしてしまうのです。「自分と違うからこそ、話を聞いてみたい」という姿勢は、相手にとって「自分の話をしっかり聞いてくれる素敵な人」として映ります。
明日から君も「あいされコミュニケーション」の達人!
最後に、今日の秘密のおさらいです。
- 共通点を見つけると、脳の「安心スイッチ(味方サイン)」がカチッと入る。
- 統計学でも、共通点が増えるほど仲良し確率は何倍にも跳ね上がることが分かっている。
- 見た目・話・気持ちの3ステップで「共通点ハンター」になろう。
- 共通点がなければ、相手の「好き」に興味を持って、今日から作ればOK!
クラスで好かれている子たちは、特別な魔法を使っているわけではありません。みんなよりほんの少しだけ早く友達を観察して、ほんの少しだけ大きな声で「あ、私も同じ!」と言っているだけなのです。
明日の朝、学校についたら、まずは隣の席の友達の筆箱や、朝の挨拶の声に注目してみてください。
「あ、その消しゴム、私も使ってる!」
「今日の朝、寒かったよね! 私も手袋してくればよかったって思ってたんだ!」
そのたった一言から、新しい友情のストーリーが動き出します。さあ、明日はどんな「おそろい」が見つかるか、宝探しに行く気持ちでワクワクしながら登校してみましょう!