キミの顔は「心のまど」
クラスの中に、なぜかいつも周りに人が集まっていて、みんなから「いっしょにいたいな」と思われている子はいませんか?その子は、勉強がすごくとくいだったり、スポーツが万能だったりするわけではないかもしれません。でも、その子がそこにいるだけで、教室の空気がパッと明るくなる。そんな不思議なパワーを持っているはずです。
そのパワーの正体は、実は「表情(ひょうじょう)」にあります。顔は、心の中が外に見える「まど」のようなものです。そして、だれに対しても明るい表情で接することができる人は、まわりの人の心を一しゅんで安心させる「魔法(まほう)」を使っているのと同じなのです。
「でも、ぼくは面白いことがないと笑えないよ」「私ははずかしがり屋だから、ずっとニコニコするのはむずかしいな」と思うかもしれませんね。でも大丈夫です。明るい表情というのは、なにもずっと大笑いしていることではありません。相手に「キミのことを受け入れているよ」という安心感を伝えるための、心のサインなのです。
脳の中にある「マネっこ細胞」のひみつ
なぜ、明るい表情でいるだけで人に好かれるのでしょうか?そこには、人間の脳(のう)にある、ある特別な仕組みが関係しています。心理学や脳科学の世界では、私たちの脳の中に「ミラーニューロン」という細胞(さいぼう)があることがわかっています。
これは別名「マネっこ細胞」とも呼ばれています。相手の表情や動きを見ると、自分の脳もまるで同じことをしているかのように反応してしまうという、不思議な細胞です。たとえば、友達がおいしそうにアイスを食べているのを見ると、自分まで「おいしそう!」とヨダレが出そうになったり、映画でだれかが泣いているのを見て自分も悲しくなったりするのは、この「マネっこ細胞」が働いているからです。
つまり、キミが明るい表情で友達に接すると、それを見た友達の脳の中にある「マネっこ細胞」が反応して、相手の心も自然と明るくなってしまうのです。キミがニコッとするだけで、相手の脳は勝手に「あ、なんだか楽しい気分だな」とカン違いしてくれます。これが「愛されコミュニケーション」の第一歩です。
「心のガードマン」を安心させてあげよう
私たちの脳の奥の方には、「へんとう体」という場所があります。ここは、自分にとって相手が「味方(みかた)」か「敵(てき)」かを一しゅんで判断する「心のガードマン」のような役割をしています。
朝、学校に行って、友達に「おはよう!」と声をかけたとき、その友達がムスッとした顔をしていたらどう感じますか?「あれ、私なにか悪いことしたかな?」「今日は機嫌(きげん)が悪いのかな?」と、少し不安になりますよね。これは、キミの脳の中のガードマンが「注意せよ!敵かもしれないぞ!」とアラームを鳴らしている状態です。
逆に、相手がパッと明るい表情で「おはよう!」と返してくれたら、ガードマンは「よし、この人は味方だ。安心だ!」と判断して、リラックスモードに入ります。人は、自分を安心させてくれる人のことを、本能的に「好きだな」「いっしょにいたいな」と感じるようにできているのです。
学校生活でやってみよう!「明るい表情」の具体例
では、具体的にどんな場面で、どんな表情をすればいいのでしょうか。明日からすぐに使える「愛されポイント」を紹介します。
- 朝のあいさつは「目」もいっしょに: 言葉だけで「おはよう」と言うのではなく、相手の目を見て、少しだけ口角(こうかく:口の両はし)を上げてみましょう。それだけで、相手の「マネっこ細胞」がキミの味方になります。
- プリントを配るとき、もらうとき: 係の仕事でプリントを配る時、無表情で配るのと、少し明るい顔で「はい、どうぞ」と渡すのでは、もらった人の気持ちが全然ちがいます。もらう時も「ありがとう」と言いながら明るい表情を見せれば、キミの好感度は一気にアップします。
- 授業中、先生や友達の話を聞くとき: 話している人の方を向き、少しだけ「明るい表情」でうなずいてみてください。話している人は「自分の話をちゃんと聞いてくれている、受け入れてくれている」と、とても安心します。
- 廊下ですれちがうとき: 仲の良い友達だけでなく、あまり話したことがないクラスメイトや、他クラスの友達、先生とすれちがうときも、ほんの少し表情をゆるめてみましょう。それだけで「あの子は感じがいいね」と、学年中で評判(ひょうばん)になるかもしれません。
お家での「お手伝い」も魔法の時間に変わる
この魔法は、学校だけでなくお家でも使えます。たとえば、お母さんやお父さんに「お皿洗いを手伝って」と言われたとき。「えー、めんどくさいなあ」という顔でやるのと、「いいよ!」と明るい表情でやるのでは、そのあとの家の空気がガラリと変わります。
たとえ心の中で少し「めんどくさいな」と思っていても、まずは表情だけ「明るく」してみる。すると、お家の人も「マネっこ細胞」の力でうれしい気持ちになり、「助かるよ、ありがとう!」と笑顔で返してくれるでしょう。その笑顔を見て、キミ自身の心もふっと軽くなるはずです。
表情が心を作る「顔面フィードバック」のひみつ
ここで、もっとすごい秘密を教えましょう。心理学には「顔面フィードバック仮説(かせつ)」という考え方があります。これは「楽しいから笑う」のではなく、「笑うから楽しくなる」という仕組みのことです。
脳は、顔の筋肉が動くのを見て「あ、今この人は笑っているな。ということは、今は楽しい状況なんだな!」と判断し、脳の中に「幸せホルモン」と呼ばれるドーパミンやエンドルフィンを出し始めます。つまり、明るい表情を作ることは、相手のためだけでなく、自分自身を元気にするためのスイッチでもあるのです。
「今日はなんだか元気が出ないな」「学校に行くのが少し不安だな」という日こそ、鏡の前で1回だけ、ニコッと明るい表情を作ってみてください。脳が「お、元気なんだね!」とカン違いして、キミの心にエネルギーをわき上がらせてくれますよ。
明日からできる「3秒の表情トレーニング」
最後に、クラスでいちばん好かれる子になるための、簡単なトレーニングを紹介します。寝る前や朝起きたとき、洗面所の鏡に向かってやってみてください。
- ステップ1: 鏡の中の自分と目を合わせます。
- ステップ2: 割りばしを横にくわえるようなイメージで、口の両はしをグイッと上に上げます。
- ステップ3: そのまま3秒間キープ!心の中で「明日はいいことが起きるぞ」とつぶやきます。
たったこれだけです。この「3秒」の習慣が、キミの顔つきを少しずつ「安心感のある、明るい顔」に変えていきます。そして、キミがその表情で教室に入ったとき、クラスメイトたちの脳にある「心のガードマン」は次々と門を開き、キミを大歓迎(だいかんげい)してくれるようになるでしょう。
キミの笑顔は、だれかを救うプレゼント
明るい表情で接することは、相手に「キミのことが大切だよ」「ここにいていいんだよ」というメッセージを送ることと同じです。もしかしたら、キミの明るい表情を見て、その日悲しいことがあった友達の心が、少しだけ救われるかもしれません。
特別な言葉はいりません。ただ、だれに対しても「明るい表情」というプレゼントを配り歩く。そんなキミのことを、周りのみんなが放っておくはずがありません。明日、教室のドアを開けるとき、ほんの少しだけ口角を上げてみてください。そこから、キミの「愛されライフ」が新しく始まります!