「私は」を主語にして気持ちを伝える
学校で、こんなことはありませんか?
休み時間に友達があなたの消しゴムを勝手に使って、机の上で転がしていたとき。「あんた、なんで勝手に使うの! やめてよ!」と、つい強い言葉で言ってしまうこと。あるいは、係の仕事で分担を決める時に「どうしていつも自分ばかり大変な仕事をするの? ずるいよ!」と怒ってしまうこと。
言ったあとはスッキリするかもしれませんが、言われた友達は「なんだよ、そんな言い方しなくてもいいじゃん」と、ぷいっと横を向いてしまうかもしれません。これが、クラスで「敵」を作ってしまう原因です。
実は、心理学には「アイ・メッセージ(I-message)」という、とても有名な考え方があります。これは、「あなた(You)」を主語にするのではなく、「私(I)」を主語にして気持ちを伝える方法です。これを使うだけで、相手を怒らせずに、自分の気持ちを正しく届けることができるようになります。
「あなた」が主語だと、相手は責められていると感じる
なぜ、「あんた、なんで〜」と言うと、相手は怒った顔をするのでしょうか。それは、相手の耳には「あなたが悪い」というメッセージとして届くからです。
心理学の世界では、相手を責める言葉を「ユー・メッセージ(You-message)」と呼びます。これを言われた相手の脳は、「攻撃された!」と判断して、自分を守るために「お前だってそうじゃん!」と反撃したくなるようにできています。これが、クラスでの言い争いの正体です。
たとえば、こんな場面を想像してください。
- 「あんた、掃除サボってるでしょ!」(ユー・メッセージ)
- 「(えっ、そんなこと言われる筋合いはないよ!)」→心の中に敵が生まれる
これでは、掃除を代わってほしいというあなたの願いは、一生相手には届きません。
「私は」に変えるだけで、魔法のように伝わる
ここで登場するのが「アイ・メッセージ」です。主語を「私」に変えるだけで、不思議と相手は耳を傾けてくれるようになります。なぜなら、自分を責められているのではなく、「相手がどう感じているか」を聞かされているだけだからです。
先ほどの掃除の例を、「私」を主語にして言い換えてみましょう。
- 「あなたがサボっていると、私は悲しいな」
- 「私は、みんなで協力して早く終わらせたいと思っているんだ」
どうでしょうか? これなら、相手も「あ、そんなふうに思っていたんだ」と気づくことができますよね。相手を責めるのではなく、自分の気持ちを「報告」する。これが、敵を作らない話し方の最大のコツです。
「アイ・メッセージ」をマスターする3つのステップ
明日からすぐに使える、アイ・メッセージの作り方を教えます。この3つのステップを意識してみてください。
1. 相手の行動をそのまま伝える
まずは、何が起きたのかを「事実」だけ伝えます。感情を入れず、ビデオカメラで撮影したような内容にするのがポイントです。
× 「いつも勝手に触るよね!」(感情が入っている)
○ 「机の上にある消しゴムが、床に落ちていたよ」(事実だけ)
2. 「私は」どう感じたかを伝える
次に、その事実に対して自分がどう思ったかを正直に伝えます。これがアイ・メッセージの心臓部です。
- 「私は、大切にしているものだから心配になったんだ」
- 「私は、みんなで使うものだから、元の場所に戻してほしいな」
「悲しい」「心配」「困る」「うれしい」といった言葉を使うと、相手にあなたの心がより伝わりやすくなります。
3. お願いを伝える
最後に、どうしてほしいかを伝えます。命令ではなく、相談するように言うのがコツです。
- 「次からは、使う前に聞いてくれると助かるな」
- 「今度からは、終わったら元の場所に戻してくれる?」
「敵」ではなく「味方」を増やすためのルール
この話し方のすごいところは、相手を「悪い人」にしないところです。ユー・メッセージは相手を「悪いやつ」と決めつけますが、アイ・メッセージは「私はこう思うから、こうしてほしい」と、あなたの気持ちを伝えているだけです。
相手も人間ですから、責められたら反発したくなりますが、素直に「困っているんだ」と相談されれば、「ああ、ごめんね。そうだったんだ」と受け入れてくれることがほとんどです。
もし、あなたが誰かに対してイラッとしてしまったら、一度深呼吸をして、心の中でこうつぶやいてみてください。
「今、私はなんて言いたいんだろう? 『あなた』を主語にしていないかな?」
この一瞬の立ち止まりが、あなたを「クラスのリーダー」にも「誰からも好かれる友達」にも変えてくれます。言葉は、相手を倒す武器にもなりますが、相手と心を通わせる魔法の道具にもなります。どちらを選ぶかは、あなた次第です。
明日の学校で、もし誰かの行動が気になったら、ぜひ試してみてください。「私は、こう思うんだ」という言葉が、あなたの周りから敵を消し、味方を増やしてくれるはずですよ。