挨拶は相手の名前を呼んでからする
朝、教室のドアをあけたとき、どんな気持ちになりますか? 「だれかこっちを見てくれないかな」「今日はだれと話そうかな」と、少しドキドキするかもしれませんね。そんなとき、あなたから「おはよう!」と声をかけるのは、とっても勇気がいることです。でも、その「おはよう」に、たったひと工夫くわえるだけで、あなたの周りにいる人たちが、もっとあなたを大好きになる方法があります。
それは、「挨拶のまえに、相手の名前を呼ぶこと」です。
たとえば、隣の席のゆうとくんが、教科書を広げて座っているとします。いつも通り「おはよう!」と言うのもいいですが、ちょっとだけ変えてみましょう。「ゆうとくん、おはよう!」と言ってみるのです。たったこれだけで、相手の反応がガラリと変わることに気づくはずです。
なぜ「名前」を呼ぶと、魔法がかかるの?
ことばの研究(社会言語学や語用論といいます)では、人は自分の名前を呼ばれると、「この人は、自分のことをちゃんと見てくれている!」という安心感を持つことがわかっています。
学校にはたくさんの人がいますよね。先生、係の仲間、休み時間に遊ぶ友達。もしあなたが、みんなに向かって「みんな、おはよう!」と言ったとしても、聞いているほうは「自分に言われているのかな?」と迷ってしまうことがあります。でも、名前を呼ぶと、「これは、あなただけに向けた言葉ですよ」という特別なメッセージになるのです。
これを「語用論(ごようろん)」という難しい言葉では、「相手との距離をちぢめるための大切なルール」と呼んだりします。名前を呼ぶことは、相手の心に「あなたのことが大切ですよ」と伝える、一番かんたんで、一番強力な魔法なのです。
名前を呼ぶだけで、こんなに変わる!
名前を呼ぶ挨拶をすると、クラスでの生活がどんなふうに変わるのか、具体的に見ていきましょう。明日からすぐに試せることばかりですよ。
- 係の仕事で、みんなが協力してくれるようになる
プリントを配るとき、「はい、プリント」と渡すのではなく、「〇〇さん、どうぞ」と名前を呼んでみてください。受け取る相手は、ただの作業ではなく「自分を大切にされた」と感じて、次の仕事も気持ちよく手伝ってくれるようになります。 - 苦手な子とも、少しだけ仲良くなれる
ちょっと話しかけにくいな、と思う子には、まずは名前を呼ぶことから始めてみましょう。「〇〇さん、おはよう」と言うだけで、相手は「あれ? 私のことを見てくれているんだ」と驚き、少しずつ心の壁がなくなっていきます。 - 先生との会話がもっと楽しくなる
朝の会で先生に会ったとき、「先生、おはようございます!」と名前(役職)を呼ぶだけで、先生は「おっ、今日はいい挨拶だな」と、あなたを特別な生徒として意識してくれるようになります。
「名前を呼ぶ」練習をしてみよう
いきなり名前を呼ぶのが恥ずかしい、という人もいるかもしれませんね。そんなときは、まずは「一番話しやすい友達」から練習してみましょう。
1. まずは「名前+挨拶」をセットにする
「おはよう」の前に、相手の名前をくっつけるだけです。「あやちゃん、おはよう」「けんた君、おはよう」。これだけで、あなたの声が相手の耳にしっかりと届くようになります。
2. 相手の目を見て、にこっと笑う
名前を呼ぶとき、下を向いていてはもったいないです。相手の目をパッと見て、少しだけ口角を上げてみてください。名前を呼ばれて、目が合って、笑顔を向けられる。この3つがそろうと、相手は「この人と話すと、なんだかいい気分だな」と感じます。
3. 家でもやってみよう
おうちの人にも試してみてください。「お母さん、ただいま!」「お父さん、おはよう!」と名前を呼ぶだけで、おうちの空気がパッと明るくなります。家族みんながニコニコしていれば、あなたも学校に楽しい気持ちで行くことができますよね。
「敵を作らない」ための、一番やさしいルール
「敵を作らない」ということは、みんなに無理をして合わせることではありません。「相手を一人ひとり、ちゃんと大切にすること」です。
クラスには、いろんな子がいます。静かな子、元気な子、少し怒りっぽい子。どんな子でも、自分の名前を呼ばれると悪い気はしません。「あ、自分はここにいていいんだ」「この人は、自分のことを知ってくれているんだ」と安心します。その安心感が、あなたの周りに「敵」ではなく「味方」をふやしていくのです。
名前は、その人が生まれてからずっと大切にされている、一番の宝物です。その宝物を呼んであげることは、相手への最高のプレゼントになります。明日、教室のドアをあけたら、ぜひ誰か一人の名前を呼んで「おはよう」と言ってみてください。あなたの世界が、昨日よりもずっと優しく、楽しくなるはずですよ。