第8章:勝手に人のものを使わない
朝、教室に入ると、まだ友達が来ていません。となりの席の机の上を見ると、新しいピカピカの筆箱(ふでばこ)が置いてあります。「うわあ、この消しゴム、いい匂いがするやつだ! ちょっとだけ借りちゃおう」「このペン、使いやすそうだな」……そんなふうに、友達に何も言わないで、勝手に手にとっていませんか?
「これくらい、すぐ返すんだからいいじゃないか」
そう思うかもしれません。でも、行動学(こうどうがく:人間の行動を科学的に研究する学問です)の世界では、「人のパーソナルスペースや持ち物を勝手にいじることが、相手の心にどれほどの警戒心(けいかいしん)とストレスを与えるか」がしっかりと証明されています。
ここでは、友達との大切な信頼関係(しんらいかんけい)を守り、まわりから「この人なら安心して何でも話せるな」と思われるための、大切なルールについてお話しします。
行動学でわかる!「人のもの」を勝手に触るとどうなる?
行動学の研究によると、人間には「自分のテリトリー(自分のものや自分の空間)」が荒らされると、本能的に「攻撃された!」と感じる仕組みがあります。これは大人はもちろん、小学生のみなさんでも全く同じです。
例えば、あなたが自分の宝物である漫画や、お気に入りのノートを、友達に勝手にカバンから出されたところを想像してみてください。「勝手に見ないでよ!」と、なんだかモヤモヤしたり、怒りがわいてきたりしませんか?
- 自分の持ち物は「自分の心の一部」と同じ
- 許可なく触られることは、心のプライベートな場所に土足で入り込まれるようなもの
- だからこそ、「勝手に使わない」だけで、相手に安心感を与えることができる
つまり、「人のものを勝手に使わない」というのは、ただの校則やマナーではなく、「あなたのことを大切に思っていますよ」という最高のサインなのです。
学校生活でありがち!ついやってしまう「NG行動」
悪気(わるぎ)は全くないのに、まわりからの印象をぐっと下げてしまう行動があります。次の心当たりはありませんか?
1. 「ちょっとだけなら…」の消しゴム・ノリ泥棒
図工の時間やプリントを書いているとき、「あっ、消しゴム忘れちゃった! となりの子のをちょっと借りよう」と、本人の許可なく手を伸ばしてしまうこと。相手が黒板を見ていて見えない隙(すき)にこっそり借りる行為は、見つかったときに「え、勝手に使ったの?」と相手をギョッとさせてしまいます。
2. 係の仕事道具や黒板消しを勝手に使う
「次の時間は俺の番じゃないけど、このチョーク使っちゃえ」「みんなの連絡黒板に、勝手にイラストを描いちゃおう」。学級委員や係の子が管理しているものを勝手に使うと、お仕事をしている人のやる気を奪ってしまいます。
3. 友達の机の中やロッカーをのぞき見する
「何が入っているのかな?」と、友達がいない隙に机の中をのぞいたり、マンガを勝手にパラパラとめくったりするのも危険信号です。例え中身が面白そうなものであっても、持ち主のプライバシーを無視した行動は、「信用できない人だな」という印象を与えてしまいます。
明日からできる!「借りる」ときの3つの魔法のステップ
「でも、本当に忘れ物をしちゃって、どうしようもないときはどうすればいいの?」
安心してください。「借りること自体」がいけないわけではありません。大切なのは、「相手の気持ちを尊重した正しい手順を踏むこと」です。明日からすぐに使える、魔法のステップを紹介します。
- ステップ1:必ず「言葉」で許可をとる
相手の顔を見て、「あの、消しゴムを少しだけ貸してくれないかな?」とはっきり伝えます。相手がうなずいたり、「いいよ」と言ってくれたりしてから、はじめて手に取りましょう。 - ステップ2:使ったらすぐに、お礼を言って返す
借りたものは、使い終わったら放置せず、すぐに「ありがとう!助かったよ」と笑顔で返します。自分の机の引き出しの中にしまい込んでしまわないように注意しましょう。 - ステップ3:もとの状態よりも丁寧に扱う
他人のものは、自分のもの以上に大切に扱います。例えば、鉛筆を借りて先が折れてしまったら、「芯(しん)が丸くなっちゃったから、削っておくね」と気配りができると、相手は「なんて丁寧な子なんだろう!」と感動します。
お家でも実践!家族のものを大切にする
学校だけでなく、お家の中でもこのルールは大切です。
お母さんのスマホを勝手にゲーム用に使っていませんか? お父さんのパソコンや、お兄ちゃん・お姉ちゃんの漫画を、黙って部屋から持ち出していないでしょうか?
家族であっても、「人のものを大切にする」という基本はまったく同じです。
家族のものを大切に扱える人は、学校でも自然と友達のものを大切にできます。それが結果的に、家族からも友達からも「信頼される人」という最高の評判をつくっていくのです。
次に何かを借りたいと思ったときは、手を伸ばすのを一度だけ止めて、心の中でこうつぶやいてみてください。
「まずは一言、聞いてみよう!」
その小さな思いやりの行動が、あなたをクラスで一番「感じがいい人」に変えてくれるはずです。明日から、さっそく学校で試してみましょう!