話し終わるまで口をはさまない
学校で、友達とおしゃべりをしていて、こんなことになったことはありませんか?
友達が「昨日さ、テレビで面白いアニメを見たんだよ!」と話し始めたとき、あなたは「あ!それ知ってる!あのキャラクターがさ……」と、つい話を先に言ってしまったのです。
そのとき、友達は少し「えっ……」という顔をしませんでしたか? もしかしたら、「あ、うん……」と言って、それ以上話を続けなくなってしまったかもしれません。
悪気(わるぎ)はなかったはずなのに、なぜかちょっぴり気まずい空気になってしまう。この小さなすれ違い、実はとても大きな原因があります。それは、「相手が話し終わる前に、口をはさんでしまったこと」です。
人は誰でも、「自分の話を最後まで聞いてほしい」「自分の気持ちを受け止めてほしい」という強い願いを持っています。心理学の世界では、これを「承認欲求(しょうにんよっきゅう)」と呼びます。ちょっと難しい言葉ですが、つまり「ぼくの(わたしの)話を聞いて!すごいと思って!」という心のことです。
相手が一生懸命話している途中で、「それ知ってる!」「ぼくはね……」と自分の話に変えてしまうと、相手は「自分の話は聞いてくれなかった」「私より自分の話がしたいんだな」と感じてしまいます。これでは、どんなにニコニコしていても、「感じがいい人」にはなれません。
逆に言えば、相手が話し終わるまでじっと口をはさまずに聞き通すだけで、あなたはまわりから「この人と話すと安心するな」「すごく優しくてかっこいいな」と思われる、最高の「感じがいい人」になれるのです。
心の中で「3・2・1」と数えてみる
「でも、友達が話していると、うれしくなってつい言葉が出ちゃうんだよ!」
そう思いますよね。大好きなことや、自分も知っている話題が出ると、口が勝手に動き出してしまうのは仕方のないことです。そこで、明日からすぐに使える、とっておきの「魔法のルール」をお伝えします。
「3秒ルール」で口チャックの術
友達が話し終えたように見えたとき、すぐに自分の話を始めるのではなく、心の中で「3・2・1」と数えてから話し始めてみてください。
学校生活の中での具体例を見てみましょう。
【場面:給食の時間、となりの席の友だちと】
- 友達:「昨日ね、お母さんと一緒にハンバーグを作ったんだ!」
- あなた:(おっ、ハンバーグだ!ぼくも好きだな……と心の中で思いつつ、すぐには「ぼくも!」と言わずに、心の中で「3・2・1」と数える)
- 友達:「ちょっと焦げちゃったんだけど、ソースが美味しくてさ」
- あなた:「そうなんだ!焦げちゃったのも美味しそうだね。ソースはどんな味だったの?」
どうでしょうか?もし最初の「ハンバーグを作ったんだ!」の段階で、「ぼくも昨日ハンバーグ食べた!」と口をはさんでいたら、友達が「ソースの味」や「焦げちゃった」という楽しいエピソードを話すチャンスを奪ってしまっていたはずです。
心の中で「3秒」待つことで、相手が本当に伝えたいことの「2コ目」や「3コ目」の言葉を引き出すことができます。これができる人は、クラスで「一番話しやすい聞き上手」として、みんなから大人気になれるのです。
心理学が教える「傾聴」という最強のパワー
心理学には、相手の話をただ聞くのではなく、心から寄り添って聞くことを「傾聴(けいちょう)」という特別な呼び方をします。心理学の実験で、自分の話を最後までしっかり聞いてくれた人と、途中で遮(さえぎ)った人を比べたとき、人はどちらの人に「また会いたい」「信頼できる」と感じるでしょうか?
答えはもちろん、「最後までしっかり聞いてくれた人」です。
心理学ではこれを「受容(じゅよう)」と「共感(きょうかん)」の効果で説明します。自分の話を遮られずに最後まで聞いてもらえると、脳の中で「この人は自分を認めてくれた!」という安心ホルモンがたくさん出ます。すると、話している人はとてもハッピーな気持ちになり、聞いてくれたあなたのことが大好きになるのです。
これは、学校のクラスでも、お家のお手伝いのときでも、まったく同じように使えます。
お家で試してみよう!お母さんのお使いのお話
学校から帰ってきて、宿題をしようとしたときにお母さんが「ねえ、今日の夕方、スーパーで牛乳と卵を買ってきてくれる?」と頼んできました。
そんなとき、つい「あー、宿題が忙しいから後にして!」と、お母さんの話を最後まで聞かずに遮(さえぎ)ってしまったことはありませんか?
ここで心理学の「傾聴」と「口をはさまないルール」を使ってみましょう。
- お母さんが話し終えるまで、ランドセルを置いてじっと聞く。
- 心の中で「3・2・1」と数えてから、「牛乳と卵だね。わかったよ、何時ごろ行けばいい?」と返事をする。
お母さんは、「この子は私の話をちゃんと最後まで聞いて、協力してくれる優しい子だな」と、とても嬉しくなります。お使いを頼まれたあとの空気も、ぐっと温かくなりますよね。
「相づち」と「オウム返し」で聞く力をレベルアップ
「でも、ただ黙って聞いてるだけでいいの?なんだかつまらなそうに見えちゃわない?」
そんな心配をしたあなたへ。すばらしい質問です!
口をはさまないというのは、「ロボットのように黙っていること」ではありません。相手が話しやすいように、「相づち(あいづち)」と「オウム返し」という2つの技をセットで使うと、さらに感じがいい人になれます。
1.うなずきと相づち
相手が話している間、言葉をはさむ代わりに、大きくうなずいたり、「へえ!」「そうなんだ!」「それで、どうなったの?」と短い相づちを打ちます。これだけで、「あなたの話をしっかり聞いていますよ」というサインが相手に100%伝わります。
2.オウム返し(バックトラッキング)
相手が話し終わったあとに、相手が言った言葉をそのまま繰り返す技です。心理学では「バックトラッキング」と呼ばれています。
【具体例】
- 友達:「昨日、公園でめちゃくちゃ高い木に登ったんだよ!」
- あなた:「へえ、めちゃくちゃ高い木に登ったんだね!怖くなかった?」
このように、相手の使った言葉(めちゃくちゃ高い木)をそのまま返してあげることで、相手は「自分の話を本当に聞いてくれたんだ!」と感動します。
明日から、クラスの「一番の聞き手」になろう
ここまで、相手の話を最後まで聞くことの大切さと、そのための秘密のルールを見てきました。
おさらいをしましょう。
- 相手が話しているときは、自分の意見を言いたい気持ちをグッとこらえて、最後まで聞く。
- 話し終えたら、心の中で「3・2・1」と数えてから話し始める。
- うなずきや相づち、そして「オウム返し」を使って、聞いているよというサインを全身で送る。
どうですか?どれも今日から、すぐに学校でできることばかりですよね。
クラスのなかには、「自分の話を聞いてほしい!」と思っている子があふれています。だからこそ、あなたが「一番の聞き手」になってあげるのです。誰もが「この人と話すと、自分の気持ちが分かってもらえる!」と、あなたに話しかけたくなってしかたがなくなるでしょう。
明日の朝、教室に入ったら、まずは近くの友達にこう言ってみてください。
「おはよう!昨日、何か楽しいことあった?」
そして、友達が話し始めたら、口をチャックして、心の中で「3・2・1」。
相手が話し終わるまで、しっかり耳を傾けてみてください。その瞬間から、あなたはクラスで一番「感じがいい人」への第一歩を踏み出していますよ。