グループで意見が割れたら多数決に頼らず話し合う
クラスでおたのしみ会の出し物を決めるときや、休み時間に何をしてあそぶかを決めるとき、みんなの意見がピッタリ分かれてしまったことはありませんか?
「ドッジボールがいい!」という人と、「けいどろがいい!」という人。
「劇をやろう!」という人と、「クイズ大会がいい!」という人。
そんなとき、クラスのリーダーや司会の子がよく使うのが「じゃあ、意見が分かれたから多数決(たすうけつ)で決めよう! 手をあげて!」という決め方です。
たしかに多数決は、パッとすぐに決まるので便利ですよね。でも、ちょっと待ってください。多数決で決めたあと、負けてしまった人たちの顔を見たことがありますか? どこか「つまんないな…」「どうせ自分の意見は通らないんだ…」と、ガッカリした顔をしてはいませんか?
実は、クラスでいちばん好かれて、チーム全員から「この人と一緒の班になりたい!」と思われる人は、めったに多数決を使わないのです。
なぜ多数決を使わないのか、どうやってみんなが笑顔になる答えを見つけているのか。その「最高にカッコいい話し合いの秘密」を、一緒つのぞいてみましょう!
「多数決」はチームをバラバラにするアブナイ薬!?
「えっ? 多数決って、みんなで決める正しい方法じゃないの?」と思った人もいるかもしれません。でも、大人の賢い研究者たちが使う「組織社会学(そしきしゃかいがく)」という学問では、多数決には大きな落とし穴があることが分かっています。
組織社会学とは、「どうすればグループが仲良く、強いチームになれるか」を研究する学問です。この学問では、こんなことが知られています。
人は、「自分の意見をぜんぜん聞いてもらえずに、数だけで負けた」と感じたとき、そのチームのためにがんばる気持ちをなくしてしまう。
たとえば、おたのしみ会の出し物が「6対5」の多数決で「劇」に決まったとします。勝った6人は「やったー!」と大喜びですが、負けた5人はどうでしょう?「クイズがよかったのに…」という不満が残ったまま、劇の練習をすることになります。これでは、劇の練習中も力が入らず、本番もうまくいかなくなってしまいますよね。
つまり多数決は、「勝ち組」と「負け組」をその場で作ってしまう方法なのです。一瞬で決まるけれど、チームの仲をバラバラにしてしまうキケンな一面も持っています。
「ゲーム理論」で見つける! 全員が100点満点になる魔法
では、頭のいい「愛されリーダー」はどうするのでしょうか?
ここで登場するのが、大人の経済学でも大注目の「ゲーム理論(りろん)」という考え方です。難しそうな名前ですが、意味はとってもカンタン!「自分も相手も、お互いが得をしてニッコリできる方法を探すパズル」のことです。
世の中には2種類の決め方があります。
- 1つ目:「勝ち負けゲーム」(多数決など)
だれかが得をして、だれかが損をする決め方。(100点対0点) - 2つ目:「がったいゲーム」(ゲーム理論の話し合い)
お互いにアイデアを出し合って、全員が「それいいね!」と思える新しい方法を作る決め方。(全員が80点〜100点!)
クラスでいちばん好かれる子は、意見が割れたときに「どっちが勝ちか」を決めるのではなく、「どうすれば全員がニッコリできる第3のアイデア(がったい案)を作れるか」というパズルを解き始めるのです。
このパズルを解くための「3つのステップ」をマスターすれば、あなたも今日からクラスの「話し合い名人」になれますよ!
ステップ1:「どっちが好き?」ではなく「なぜそれがいいの?」を聞く
意見が割れたとき、普通人は「ドッジボールがいい人!」「けいどろがいい人!」と、「どちらの選択肢(せんたくし)が好きか」ばかりを考えてしまいます。
でも、話し合い名人は聞き方を変えます。
「どうしてドッジボールがやりたいの?」「けいどろのどんなところが面白いの?」と、その理由(本音)をみんなに質問するのです。
例えば、係活動のポスター作りで意見が割れたときのことを考えてみましょう。
- Aくん:「絶対に、色えんぴつで絵を描こうよ!」
- Bさん:「ううん、折り紙をちぎって貼る『ちぎり絵』がいい!」
ここで多数決をせずに、「なんでそれがいいと思ったの?」と理由を聞いてみます。
- Aくんの理由:「細かくてかっこいいドラゴンを描きたいから!」
- Bさんの理由:「遠くから見たときに、目立つポスターにしたいから!」
どうですか? 理由を聞いてみると、2人はケンカをしているのではなく、「かっこよくしたい」「目立たせたい」という、どちらもポスターを良くするための素敵な気持ちを持っていることが分かりますよね。
理由さえ分かれば、解決策はかんたんです!
ステップ2:2つの意見をガッチャンコ!「第3のアイデア」を作る
理由が分かったら、いよいよゲーム理論の「がったい作戦」の出番です! 2つの意見の良いところを合わせて、新しいアイデアを作り出しましょう。
さっきのポスターの例なら、こんな「第3のアイデア」が生まれます。
「じゃあ、Aくんが描いたドラゴンのまわりに、Bさんの提案で折り紙を貼って、遠くからでも目立つド派手なポスターにしようよ!」
いかがでしょうか?
これなら、Aくんの「かっこいい絵を描きたい」も、Bさんの「目立たせたい」も、両方叶(かな)っていますよね! AくんもBさんも「自分の意見を大切にしてもらえた!」と感じて、大満足でポスター作りを始められます。
学校生活のいろいろな場面で使える「がったい作戦」の例をいくつか紹介しますね。
- 【昼休みのあそび】「ドッジボール」対「おにごっこ」
→「前半15分はドッジボールをして、後半15分は負けたチームが鬼になる『ドッジおにごっこ』をしよう!」 - 【おたのしみ会】「劇」対「ダンス」
→「物語の途中で、全員でノリノリのダンスを踊る『ミュージカル劇』にしよう!」 - 【掃除の役割】「黒板ふき」対「ほうき」
→「今週は前半と後半で交代して、両方やってみよう!」
このように、2つの意見を戦わせるのではなく、「どうやってがったいさせたらもっと面白くなるかな?」と考えるのが、愛されコミュニケーションの極意(ごくい)です。
ステップ3:どうしても決まらないときは「半分こ作戦」と「順番作戦」
そうは言っても、どうしてもガッチャンコできない意見もありますよね。
たとえば、「体育館でバスケがしたい」と「体育館でバドミントンがしたい」のように、場所が1つしかない場合です。
そんなときに使えるのが「半分こ作戦」と「順番作戦」です。
「コートをコートの半分ずつ使って両方やろう(半分こ作戦)」
「今週はバスケにして、来週の体育館が使える日はバドミントンにしよう(順番作戦)」
ポイントは、「今日はダメだったけれど、次は自分の番がくる」という安心感をみんなに与えてあげることです。これなら、誰も嫌な気持ちになりません。
少数派(少ない意見)の人を「天才」に変える魔法の一言
話し合いをしていると、グループの中でたったひとりだけ、みんなと違う意見を言う子がいますよね。
たとえば、みんなが「教室でおしゃべりしよう!」と言っているのに、「図書室で静かに本が読みたい」と言う子がいたとします。
そんなとき、多数決で「はい、10対1で教室の勝ちー!」と片付けてしまうのは、とてももったいないことです。
実は、組織社会学の研究では「みんなと違う意見をいう少数派(しょうすうは)の存在こそが、グループの失敗を防ぐ」ということが分かっています。全員が同じ意見のときほど、人は大切なことを見落としてしまいがちなのです。
だからこそ、違う意見を出してくれた子には、こう言ってみてください。
「〇〇くん(ちゃん)、みんなと違う素敵な視点を教えてくれてありがとう!」
この一言が言える子は、クラスで圧倒的に信頼されます。「自分の意見を否定されなかった」と感じたその子は、あなたに強い感謝と信頼を寄せるようになるでしょう。
「本が読みたいと言ってくれたから気づいたけど、雨の日は教室だとウルサすぎるかもね。じゃあ、前半は図書室で、後半は教室で静かにカードゲームをするのはどう?」といった、より良いアイデアに発展することもしばしばあります。
明日から使える! グループの話をまとめる「愛されフレーズ」
明日、学校でグループワークや班の話し合いがあったら、ぜひ次のフレーズを使ってみてください。あなたがこの言葉を口にするだけで、教室の雰囲気がパッと温かくなり、話し合いのスーパースターになれますよ!
- 「どっちにするか決める前に、みんなが『なぜそれがいいか』を教えて!」
(理由を聞いて、本音を見つける魔法のフレーズ) - 「A案とB案の良いところを合体させて、もっとすごい『C案』を作らない?」
(ゲーム理論をスタートさせる決めゼリフ) - 「ちがう意見を出してくれてありがとう! その考え方は気づかなかったな」
(少数派の人を味方にする感動フレーズ) - 「今回はA案で行こう。でも次は絶対にB案にしようね。約束だよ!」
(譲ってくれた人に安心を与える思いやりフレーズ)
多数決は、最後の最後まで話し合っても決まらなかったときの「本当の最後の手段」です。
いきなり「はい、多数決ね!」と手をあげさせるのをやめて、「どうすれば全員がニッコリできるかな?」とみんなで首をひねって考える時間を作ること。それこそが、班の仲間全員から「あなたと同じチームになれて本当によかった!」と感謝される、いちばんの秘密なのです。
明日の話し合いで意見が分かれたら、ニヤリと笑って心の中で叫んでみてください。
「よーし、がったいパズルの始まりだ!」と。