第3章:チームで頼られる「協力」の技術
ルール15:良いアイデアが出たら、0.5秒で「それいいね!」と認める
係活動の話し合いや、お楽しみ会の計画を立てているとき。クラスの友達が、ちょっと恥ずかしそうにこんな提案をしたとします。
「次の休み時間、みんなで『巨大なドッジボール』をやらない?」
このとき、教室がしーんと静まりかえってしまったり、「えー、なんかめんどくさい」という声が聞こえたりしたら、提案してくれた友達はどう思うでしょうか。きっと、「言わなきゃよかったな…」と悲しい気持ちになり、二度とアイデアを出してくれなくなってしまうかもしれません。
でも、もしあなたが、誰よりも早く「それ、いいね! すごく面白そう!」と声をあげたらどうでしょう?
提案した友達の顔はパッと明るくなり、周りのみんなも「あ、それいいかも!」と口々に賛成し始めるはずです。実は、たった一言「それいいね!」と言える人は、クラスの中で圧倒的に愛され、チームのリーダーとしても頼られる存在になれます。今回は、そのすごい魔法の秘密をお話ししますね。
なぜ「それいいね!」の一言で、クラスの人気者になれるの?
「でも、どうして『それいいね!』と言うだけで、そんなに人に好かれるんだろう?」と思いますよね。実はこれには、大人の社会学者や学者の人たちも研究している、2つのちゃんとした理由(科学的な根拠)があるのです。
①「しんらいのキャッチボール」が始まるから(ゲーム理論)
世の中の仕組みを研究する「ゲーム理論」という考え方では、「自分が相手に親切にすると、相手も自分に親切を返したくなる」というルールがあります。
あなたが友達のアイデアを「いいね!」と認めると、それは相手に「心のプレゼント」を渡したことになります。プレゼントをもらった友達は、今度あなたがアイデアを出したときに「〇〇ちゃんの考えもいいね!」と、必ず応援してくれるようになるのです。こうして、お互いに助け合う「しんらいのキャッチボール」が永遠に続いていきます。
② チームの中に「あんしん基地」ができるから(組織社会学)
たくさんの人が集まるチームの仕組みを調べる「組織社会学」では、「何を言っても否定されない安心感があるチームほど、すごい結果を出せる」ということが分かっています。この安心感のことを、専門用語で「心理的安全性(しんりてきあんぜんせい)」と言いますが、私たちは「あんしん基地」と呼びましょう。
あなたが「それいいね!」と言ってあげることで、話し合いの場が「何を出しても大丈夫な、あんしん基地」に変わります。すると、他の友達もどんどん面白いアイデアを出すようになり、話し合いが最高に盛り上がるのです。そのきっかけを作ったあなたは、まさに「チームのヒーロー」です。
今日からできる!「それいいね!」マスターの3ステップ
それでは、明日から学校で使える「それいいね!」の具体的なテクニックを教えてあげますね。段階を踏んで試してみましょう!
ステップ1:アイデアが出たら「0.5秒」で反応する
内容が素晴らしいかどうかをじっくり考える前に、まずは「発言してくれたこと」そのものをほめるのがコツです。
友達が勇気を出して言った瞬間に、「それいいね!」と笑顔で言いましょう。スピードが命です。あなたの素早い「いいね!」が、教室の冷たい空気を一瞬で温かい空気に変えてくれます。
ステップ2:「~だから、いいね!」と理由を1つ足す
「それいいね!」と言えるようになったら、次は「どこが良いと思ったか」をひとこと付け加えてみましょう。
- 「それいいね! だって、男子も女子もみんなで遊べるもんね!」
- 「それいいね! その図工のやり方なら、時間がかからずにキレイに作れそう!」
- 「それいいね! 家から持ってこられる材料だから、すぐに試せるね!」
理由を言ってもらえると、相手は「自分の考えをちゃんと聞いて、理解してくれたんだ!」と感じて、あなたに大きな信頼を寄せるようになります。
ステップ3:「いいね!+アイデアのバトン」で進化させる
上級者になったら、友達のアイデアをさらに面白くする「バトン渡し」に挑戦です。
「それいいね! じゃあ、さらに〇〇も追加してみたらもっと面白くない?」と、否定せずにアイデアを乗っけていくのです。
例えば、友達が「黒板の係ポスター、イラストを描こうよ」と言ったら、「それいいね! じゃあ、折り紙も貼って飛び出すポスターにしてみない?」と返します。これなら、相手の意見を100%尊重したまま、もっとすごいアイデアに進化させることができますよね。
もし「う〜ん…」と思うアイデアが出たときはどうする?
ここで、ひとつ難しい場面の対処法をお教えします。
話し合いの途中で、「う~ん、それはちょっと学校のルール的に難しいんじゃないかな…」と思うアイデアが出たら、あなたならどうしますか?
「それは無理だよ」「ダメに決まってるじゃん」とバッサリ切り捨ててしまうのは、いちばんもったいないやり方です。言われた友達は傷つき、もう二度と発言してくれなくなってしまいます。
そんなときこそ、「はい、そして(Yes, and…)」の魔法を使いましょう。
いきなり「でも」「だけど」と反対するのではなく、まずは一度「いいね!」と受け止めてから、別の方向へやさしく案内してあげるのです。
- ダメな例:「えー、教室でドッジボールなんて無理だよ。先生に怒られるじゃん。」
- 魔法の例:「教室でドッジボールか、発想がすごく面白くていいね! 教室だと危ないから、新聞紙を丸めた柔らかいボールでやるのはどうかな?」
いかがですか? 友達の発想の面白さを認めたうえで、安全な方法にアレンジしていますよね。これなら、誰も嫌な気持ちになりません。「〇〇ちゃんは、いつも自分の意見を大切にしてくれる」と思われるようになり、あなたの周りには自然と人が集まるようになります。
家でも練習してみよう!「家族へのいいね!」
この「それいいね!」の技術は、学校だけでなく、家の中でも大活躍します。家族との会話で、さっそく練習してみましょう!
- お母さんが「今日の晩ごはんはカレーにしようか」と言ったら?
→「いいね! お母さんのカレー大好き!」(お母さんは嬉しくなって、デザートをつけてくれるかもしれません!) - お父さんが「今週末、公園に散歩に行かない?」と言ったら?
→「それいいね! ついでにサッカーボールも持って行こうよ!」 - きょうだいが「このブロックで大きい城を作ったよ」と見せてきたら?
→「いいね! この赤いパーツの使い方がかっこいいじゃん!」
家の中で「いいね!」を増やすと、家族みんなの笑顔が増えて、家全体が温かい「あんしん基地」になっていきますよ。
明日の学校でやってみよう!「いいね!」ミッション
さあ、理論もやり方もバッチリ分かりましたね! 最後に、明日学校で試してほしい「3つのミッション」を出します。
【明日の「いいね!」ミッション】
□ 1. 朝の会や授業中、友達が発表したら小さくうなずいて「いいね」と心の中でつぶやく(慣れたら声に出す)
□ 2. 班の話し合いや係活動で、誰かのアイデアに0.5秒で「それいいね!」と言ってみる
□ 3. 友達の良いところや新しい文房具を見つけて「それ、いいね!」とほめてみる
アイデアを認めることは、その人の「存在」そのものを認めてあげることと同じです。
あなたが「それいいね!」という魔法の言葉を口にするたびに、クラスの中に笑顔が増え、あなたを心から信頼する友達が一人、また一人と増えていきます。明日、教室のドアを開けたら、さっそく一回目の「それいいね!」を届けてみてくださいね!