怒る前に一度深呼吸をする
学校で、こんなふうにモヤモヤしたり、カッとしたりしたことはありませんか?
- せっかく一生けんめい作った図工の作品を、友達がうっかりぶつかってこわしてしまったとき
- 「あとで貸してね」と言っていたマンガを、友達が別のこに先に貸してしまったとき
- 自分の係の仕事を忘れて遊んでいるクラスメートを見たとき
胸のあたりが熱くなって、「なんでそんなことするの!?」「ずるい!」と、大きな声で怒りたくなりますよね。その気持ち、とってもよく分かります。あなたがそのとき感じた「悲しい」「くやしい」「困ったな」という気持ちは、どれも大切なあなたの心の大事な気持ちです。
でも、そのときに出てきた言葉をそのまま相手にぶつけてしまうと、どうなるでしょうか。「なんだよ、わざとじゃないのに!」「そんな言い方しなくてもいいじゃん!」と言い合いになってしまい、最後にはお互いにいやな気持ちが残ってしまいます。
本当は「謝ってほしかっただけなのに」「もっと優しくしてほしかっただけなのに」、仲良くなりたいだけなのに、すれ違ってしまうのはもったいないですよね。
そこで今日は、心理学(しんりがく:人間の心や行動のふしぎを研究する学問です)の力を使って、カッとなった気持ちをスッと落ち着かせる「魔法の深呼吸(しんこきゅう)」の秘密を教えちゃいます!明日からすぐに学校で使えるテクニックなので、ぜひ最後まで読んでいってくださいね。
どうしてカッとなると、ヘンなことを言っちゃうの?
まずは、私たちの「脳(のう)」の中で何が起きているのかを知るために、ちょっとだけ心理学のお話をしますね。
人間には、頭の中に「考えるための場所(理性:りせい)」と、「本能で動物のようにパッと反応する場所(情動:じょうどう)」の、大きく分けて2つの場所があります。
普段、算数のテストを解いているときや、ノートにきれいな字を書いているときは、「考える場所」がしっかり働いています。しかし、友達に意地悪をされたり、自分の大切なものを壊されたりすると、脳の「本能の場所」が一瞬でスイッチを入れてしまうのです。
この本能のスイッチが入ると、脳はこう考えます。
「大変だ!敵があらわれたぞ!すぐに戦え!」
そう、カッとなっているとき、あなたの脳は「今すぐ大声を出す」「言い返す」「にらみつける」という攻撃モードに切り替わってしまっているのです。だから、あとから「あんなこと言わなきゃよかった……」と後悔するような強い言葉が、口から飛び出してしまいます。
つまり、怒りが爆発してしまうのは、あなたの性格が悪いからではありません。脳のシステムが、ちょっと早めに「緊急事態(きんきゅうじたい)宣言」を出してしまっただけなのです。
「タイムアウト」で脳のパニックを止めよう
心理学には、この脳のパニックをピタッと止めるための「タイムアウト」という考え方があります。
スポーツの試合で、監督が「ちょっとみんな、作戦会議だ!試合を一時中断(いちじちゅうだん)するぞ!」と時間を止めるのを見たことはありませんか?あれと同じで、カッとなったときに、自分の心や行動を一度「一時停止」させるのがタイムアウトです。
でも、心の中で「ストップ!」と思っても、なかなか怒りは止まりませんよね。そこでおすすめなのが、体から脳に「今、落ち着く時間だよ」と教えてあげる方法です。それが、タイトルにもある「深呼吸」なのです。
今日からできる!「3秒リセット深呼吸」のやり方
それでは、怒りそうになったときに、頭の中と心をスッキリさせる「深呼吸のやり方」をステップ順に説明します。ノートにメモしなくても大丈夫。すごく簡単です。
- ステップ1:口をチャックして、心の中で「1、2、3」と数える
- ステップ2:鼻から、おなかいっぱい空気を吸い込む
- ステップ3:口から、ふーーーっと細く長く息をはき出す
これだけです!ポイントは、息を吸うときにおなかをふくらませて、はくときに「あー、むかつく!」という黒いモヤモヤを全部外に出すイメージを持つことです。
心理学の実験でも、ゆっくり深い呼吸をすると、心臓のドキドキが落ち着いて、脳の「考える場所」が再び元気に働き出すことが分かっています。深呼吸をすると、脳に「あ、今は戦わなくても大丈夫なんだな」と伝わるのです。
たった3秒、息を吸ってはいくだけで、さっきまで爆発しそうだった怒りが、「あれ?そこまで怒ることじゃなかったかも」と小さくなります。
学校生活のこんな場面で使ってみよう!
では、実際に学校でどんなふうにこの深呼吸を使えばいいのか、具体的な場面で見てみましょう。
場面1:給食の配膳中、牛乳をこぼされて服が濡れてしまったとき
隣の席の友達が手をすべらせて、あなたの机に牛乳をピシャリ。お気に入りの服が濡れてしまいました。「きゃっ!」とびっくりして、怒鳴りたくなりますよね。そんなときは、声に出すのをグッとこらえて、心の中で「1、2、3」と数えてから、すーっーと息を吸ってはいてみましょう。
それから、こう言います。
「びっくりしたぁ。でも、わざとじゃないよね。ふきんでふこうか」
深呼吸をひとつしただけで、相手も「ごめんね!本当にわざとじゃないんだ……!」と安心して、お互いにイヤな気持ちにならずにすみます。
場面2:ドッジボールで、自分だけアウトにされた納得いかないとき
「今のあたってないよ!セーフだよ!」と言い返したくなりますよね。でも、そこで大声で言い争いになると、まわりのみんなも「なんだか険悪な雰囲気だな……」と楽しくなくなってしまいます。そんなときもコートの隅で一度、深く息をすってはいきましょう。
そして、落ち着いた声でこう伝えます。
「今のボール、服にかすったか微妙だったから、次はゆずり合うか、審判(しんぱん)の子に聞いてみない?」
怒鳴るよりもずっと大人っぽくて、かっこいい解決方法になります。
自分の気持ちを「言葉」に変えて伝えよう
深呼吸をして心が落ち着いたら、次のステップとして大切なことがあります。それは、怒る代わりに「自分の本当の気持ちを言葉にして伝えること」です。
人間は、「わかってほしいのに、わかってもらえない」と思うと、余計にイライラが大きくなってしまいます。心理学では、自分の気持ちを素直に、でも相手をきずつつけずに伝える方法を「アサーション(さわやか自己表現)」と呼びます。
アサーションのコツは、主語を「あなた(You)」ではなく、「私(I:アイ)」にすることです。
- ダメな例(Youメッセージ):「あなたが勝手に消しゴムを使うからいけないんだ!」(相手を責める言い方)
- いい例(Iメッセージ):「わたしは、勝手に使われると悲しいな。使うときは一言教えてほしいな」(自分の気持ちを伝える言い方)
「あなた」を主語にすると、相手は「責められている!」と感じて、防御(ぼうぎょ)体制に入ってしまいます。でも、「私」を主語にすると、相手は「あ、この子はそんなふうに感じていたんだな」とすんなり受け止めることができるのです。
「怒る」というのは、実は心のSOSのサイン。カッときたら、まずは深呼吸をして脳のパニックを止め、それから「わたしはこう感じたんだよ」と静かな声で伝えてみてください。
明日から、きみのクラスの「コミュニケーションの達人」に!
どうですか?「怒る前に一度深呼吸をする」ということが、どれだけ強力で、自分も相手も守ってくれる魔法のテクニックか分かってもらえたでしょうか。
最初から完璧にできなくても、もちろん大丈夫です。カッとなって思わず怒鳴ってしまってから、「あ、今の場面で深呼吸だったな」とあとから気づくだけでも、すごい大進歩です。そうやって少しずつ練習していくうちに、だんだんと「怒る前に一呼吸おくこと」が、自分でも驚くくらい自然にできるようになっていきます。
自分の気持ちを上手にコントロールできるようになると、不思議と友達との関係もどんどん良くなっていきます。あなたの周りに笑顔が増えて、「なんだか最近、話しやすくて優しいね」と言われるようになるはずです。
明日、学校でちょっとイヤなことやモヤモヤすることがあったら、思い出してくださいね。
「まずは深呼吸、そして『私』の気持ちを伝える!」
その小さな一歩が、あなたをもっともっと素敵にしてくれます。さあ、明日からの学校生活で、さっそくこの「神コミュニケーション術」を試してみましょう!