消しゴムを落としたら拾う
キーンコーンカーンコーン……。チャイムが鳴り、静かだった教室が一気にワイワイとにぎやかになります。「ふう、次のテスト勉強しなくちゃ」と、筆箱を開けようとしたその時です。
カラン、コロローン……。
隣の席の友達が、大事な消しゴムを机の下に落としてしまいました。「あ、やっ……!」とあわてて椅子を引く友達。机の下はせまくて、自分の足がジャマになって、すぐに取るのはちょっと大変そうです。さあ、あなたならどうしますか?「見て見ぬふりをして自分の勉強を続ける」それとも、「サッと手を伸ばして拾ってあげる」?
たったこれだけの出来事ですが、実はこの一瞬の行動で、まわりからのあなたに対する印象は大きく変わります。「消しゴムを落としたら拾う」という、一見すると小さな小さな親切。これができる人は、クラスの中で「なくてはならない存在」になり、みんなから自然と好かれるのです。今日は、この「消しゴムを拾う」という行動に隠された、とびきり素敵な秘密についてお話しします。
組織社会学から見る「たすけ合いのパワー」
「でも先生、たかが消しゴムを拾うだけで、そんなにすごいことなの?」と思いますよね。ここで、少しだけ大人もびっくりするようなすごいお話をします。それは「組織社会学(そしきしゃかいがく)」という、ちょっぴりかっこいい学問の考え方です。
組織社会学では、「みんながバラバラに生きているのではなくて、グループやチームとしてうまく協力し合うためにはどうすればいいか」を研究しています。その研究の中で、とても大切なルールが見つかっています。それは、「小さな助け合いの積み重ねが、強いチームを作る」ということです。
クラスも、会社も、ひとつの「チーム」です。チームがうまくいっているかどうかは、大きな事件が起きた時ではなく、実は「消しゴムを落とした」というような、日常のちいさなピンチをみんなで助け合えているかにかかっています。
これを「組織社会学」の言葉では、「互酬性(ごしゅうせい)」や「信頼のネットワーク」と呼びます。難しく聞こえますが、意味はとってもシンプルです。
- あなたが誰かを助ける(消しゴムを拾う)
- 助けてもらった人は「うれしいな」「ありがとう」と思う
- その人は、次にあなたが困っている時に「今度は私が助けてあげよう」と思う
- このキャッチボールがクラス中に広がっていく
つまり、あなたが落とした消しゴムを拾うという行動は、クラス全体を「思いやりのある温かいチーム」に変えるための、最初の一歩なのです。学問的にも、ちいさな親切は、まわり回って自分を助けてくれる最強の行動だと証明されているんですよ。
学校生活で実践!「困っている人を見逃さない」3つのステップ
「消しゴムを拾う」ことは、困っている人を見逃さないための基本の「き」です。でも、ただ拾うだけではありません。「感じがいい人」になれる、スマートでかっこいい3つのステップを紹介します。明日からさっそく学校でやってみましょう!
ステップ1:音と動きに「アンテナ」をはる
学校の中は、おしゃべりや先生の声でいつもにぎやかです。自分のことに夢中になっていると、まわりの小さなトラブルを見逃してしまいます。まずは、周りの音や動きに「心のアンテナ」を少しだけ広げてみましょう。
- 「カラン」という文房具が落ちる音に耳をすませる
- 隣の友達が「あ、しまった」という顔をしていないかチラッと見る
- 掃除の時間に、ホウキを探している子がいないか見回す
これだけで、あなたの「視野」がぐっと広がります。困っている子は、声に出さなくても「どうしよう……」という顔をしています。そのサインを見つけるのが、感じがいい人の第一歩です。
ステップ2:スピードと「さりげなさ」が命
消しゴムを拾う時、そして困っている人を助ける時にいちばん大切なのは、「さりげなさ」です。ここテストに出したいぐらい重要ですよ!
例えば、友達が消しゴムを落としたとします。この時に「あ!落としたでしょ!はい、どうぞ!」と大きな声で大げさに拾って渡すと、落とした本人はちょっと恥ずかしい思いをしてしまうかもしれません。「あちゃー、やっちゃったな」と思っている時に、あまり目立ちたくないこともあるからです。
だからこそ、こんな風に動いてみましょう。
- 何も言わずに、サッと机の下に手を伸ばす
- 落ちてきた消しゴムをキャッチ、あるいは床から拾う
- 相手の机の端に、ニコッと笑って「はいっ」と置く
- そのまま自分の作業に戻る
この「スマートさ」が、まわりに「大人っぽくてかっこいいな」「気づかいができる優しい人だな」という印象をあたえます。見返りを求めない、このさりげなさが最高にクールなのです。
ステップ3:お返しを求めないピュアな心
「消しゴムを拾ってあげたんだから、今度は私のノートを貸してね」とか、「ありがとうって言われなかったな……」と心の中でモヤモヤしていませんか?
組織社会学のルールでもお話しした通り、親切のキャッチボールは、すぐに同じ人から返ってくるとは限りません。あなたが誰かにした親切は、巡り巡って、全然違う形や、全然違う友達からあなたに戻ってくるものです。だから、拾ってあげたあとに「どういたしまして!」と爽やかに笑って、すぐに忘れてしまうくらいがちょうどいいのです。
そのピュアで優しい態度は、まわりの友達や先生がちゃんと見ています。「あの子は、誰に対しても優しくて親切だな」という評判は、あなたが気づかないうちに、クラス中の大きな信頼へと変わっていきます。
家のお手伝いでも大活躍!家庭での「消しゴムルール」
この「困っている人を見逃さない・消しゴムルール」は、学校だけでなく、おうちの中でも大活躍します。おうちの人とあなたの関係も、学校と同じひとつの「チーム」だからです。
例えば、こんな場面を想像してみてください。
- お母さんが料理をしていて、調味料のボトルを取ろうと手を伸ばしている時、近くにいるあなたがサッとそれを手渡す
- お父さんがリビングで新聞を読もうとして、メガネを探している時に「ここにあるよ」と教えてあげる
- 弟や妹が、おもちゃのパーツをなくして泣きそうな時に、一緒に探してあげる
これらはすべて、学校で練習した「消しゴムを拾う」こととまったく同じです。おうちの人たちは、あなたがこういう小さな優しさを発揮するたびに、「うちの子、いつの間にこんなにしっかりして、優しい子になったんだろう」と、すごくうれしい気持ちになります。
家族という一番身近なチームでこのルールができる人は、学校でも自然と優しい振る舞いができるようになります。なぜなら、優しい行動は「練習すればするほど、自分の得意技になる」からです。
まとめの代わりに:明日からできる小さな魔法
「感じがいい人」になるために、特別な才能や、みんなの前で大きなスピーチをするような勇気は必要ありません。クラスのアイドルになる必要もなければ、テストでいつも1番をとる必要もないのです。
必要なのは、明日、学校の教室で、隣の席の子の消しゴムが落ちた時に、ほんの1秒だけ手を伸ばすこと。ただそれだけです。
「あ、落ちたな」
そう思ったら、心の中で「チャンス!」とつぶやいてみてください。その一瞬の行動が、あなたをクラスでいちばん信頼されて、みんなから好かれる素敵な人へと変えてくれます。
明日の朝、教室に入ったあなたの周りには、きっと温かい空気が流れています。さあ、明日から、あなたの手で小さな魔法のルールを実践してみましょう!