「それでどうなったの?」と聞き返す
キミは、友達とお話をしていたとき、こんなふうに思ったことはありませんか?
「あー、早く自分の話がしたいな」
「ボクのほうが、もっとすごいゲームの技を知っているのにな」
お友達が楽しそうに話しているのに、心の中で別のことを考えてしまう。これって、実はよくあることです。人間は、だれでも「自分の話を聞いてほしい」「自分をわかってほしい」という強い気持ちを持っています。心理学の世界では、これを「自己開示(じ自己かいじ)の欲求」や「承認(しょうにん)欲求」と呼びます。むずかしい言葉ですが、要するに「みんな、自分に注目してほしいし、自分を受け入れてほしいんだ」ということです。
だからこそ、クラスで「この人となら、ずっとお話ししていたいな」「なんだか、すごく安心するな」と好かれる人は、この秘密をちゃーんと知っています。その秘密とは、自分の話をすることではなく、「相手の話を心から楽しんで聞くこと」です。
そして、相手の話を最高に盛り上げるための、とっておきの合言葉があります。それが、「それでどうなったの?」という魔法の聞き返しです。
ただ「聞いてるフリ」と「本当に聞くこと」のちがい
「うんうん、そうだね」とあいづちを打つだけでも、聞いていないよりはずっといいですよね。でも、それだけだと、お友達は「本当に聞いてくれているのかな?」と少し不安になってしまいます。
ここで、心理学の面白い実験をご紹介しましょう。人は、自分の話をうなずきながら聞いてくれる人よりも、「自分に興味を持って、もっと知りたそうにしてくれる人」に対して、何倍も好意を抱くということがわかっています。これを心理学では「返報性(へんぽうせい)の法則」といいます。人は、自分に興味を持ってくれた人には、「自分もこの人のことをもっと好きになりたい!」と自然に思うようになっているのです。
つまり、「それでどうなったの?」と聞き返すことは、ただの相槌(あいづち)ではなく、「ボク(ワタシ)はキミの話に夢中だよ!」というラブレターのようなものなのです。
学校でよくある、こんな場面
例えば、国語の係で一緒のユウキくんが、こんなふうに話しかけてきたとします。
ユウキくん「昨日さ、家族で公園に行ったんだよ。そしたら、すごく大きなトカゲがいてさ!」
ここで、もしキミが「ふーん、トカゲね。そういえば昨日、ボクもテレビで動物の番組見たよ」と、自分の話に変えてしまったとします。ユウキくんは、ちょっとションボリしてしまうかもしれません。「あれ、ボクの話、聞いてくれなかったのかな……」って。
でも、ここで魔法のルールを使ってみましょう。
キミ「えっ、大きなトカゲ!? それでどうなったの?」
この一言を言われたユウキくんは、どんな気持ちになるでしょうか?「おっ、聞いてくれてるぞ!」と嬉しくなって、目をキラキラさせながら続きを話し始めるはずです。
ユウキくん「そうなの! 草むらに隠れちゃったんだけど、近づいたら『シャーッ』って言って、木に登っていったんだよ!」
キミ「うわぁ、すごい大冒険じゃん! それからどうしたの?」
こうやって話を広げてもらえると、ユウキくんは「この人と話すと、すごく楽しい気持ちになる!」と感じます。これが、クラスで好かれる人のコミュニケーションの秘密です。
「相槌(あいづち)」から「深掘り(ふかぼり)」へステップアップしよう
「それでどうなったの?」という言葉を使いこなすために、もう一歩レベルアップした技をお伝えしましょう。それは、相手の言葉の中から、「気になるキーワード」をオウム返ししてから聞き返すという方法です。
心理学では、相手の言葉をそのまま繰り返すことを「バックトラッキング(追跡)」や「感情のミラーリング」と呼びます。相手が使った言葉をそのまま返すことで、「ちゃんと心がつながっているよ」という安心感をあたえることができます。
- キーワードを拾って返すテクニック
- 友達:「昨日、宿題のドリルを家に忘れちゃって、朝からドギマギしたんだよ」
- キミ:「ドギマギしたんだ!? それでどうなったの?先生に怒られた?」
- うれしかった気持ちに共感して返すテクニック
- 友達:「図工の時間に作った粘土の作品、自分で上手にできて嬉しかったな」
- キミ:「上手にできて嬉しかったんだね! どんな形を作ったの? 見せて見せて!」
このように、相手が言った「キーワード」や「気持ち」を一度受け止めてから、「それでどうなったの?」とつなげると、会話のキャッチボールが何往復も続くようになります。
家のお手伝いでも使ってみよう!
この魔法は、学校だけでなく、お家の中でも大活躍します。たとえば、お母さんやお父さんがお仕事や家事から帰ってきたとき、こんなふうに話しかけてみてください。
お母さん「今日はスーパーで、お目当ての野菜が売り切れててショックだったわぁ」
キミ「えっ、お目当ての野菜が売り切れてたんだ。それでどうしたの? 別のものにしたの?」
子どもからこんなふうに興味を持って聞かれたら、お母さんはびっくりするのと同時に、すごく嬉しい気持ちになるはずです。「この子、よくお母さんの話を聞いてくれているんだなぁ」と、家族みんなが温かい気持ちになります。
お家でこの練習をしていると、学校のお友達と話すときも、自然と優しい聞き方ができるようになっていきます。
明日、学校で試してみよう!
「でも、いざ話しかけられたら、なんて言えばいいか忘れちゃいそう……」
そんな心配はいりません。明日、学校で友達が何かを話し始めたら、心の中でこうつぶやいてみてください。
「まずは、最後まで聞く!」
そして、一番盛り上がるところで、「それでどうなったの?」と聞いてみる!
これだけです。むずかしい言葉をたくさん覚える必要はありせん。相手の冒険や、楽しかったこと、困ったことに、心から「へぇー!」「すごい!」と興味を持つだけでいいのです。
人は、「自分の話を真剣に、ワクワクしながら聞いてくれる人」のことが大好きになります。明日から、あなたの周りには、「もっとあなたとお話ししたい!」というお友達が、自然とたくさん集まってくるはずですよ。